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社畜だった俺のスキルはガチャだけ。気づいたら最強になっていた  作者: 1315
第3章 「響きの森と導きの旋律」
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第12話 近づく気配

第12話 近づく気配


森の奥へ進むほど、空気が重くなる。


湿り気が濃くなり、足元がわずかに沈む。


踏み込むたびに、じっとりとした音が響いた。


「……だいぶ近いですね」


リリアが周囲を見ながら言う。


ユウトは前を見たまま、小さく息を吐く。


「……必ず倒すぞ。」


その一言だけ。


迷いはない。


レオも静かに頷く。


「……はい」


三人の視線が、同じ方向を向く。


その時――


――すぅ……


耳の奥に、かすかな音が流れ込む。


風じゃない。


水でもない。


引き寄せるような、音。


「……来ます」


リリアが低く言う。


ユウトが双剣を抜く。


「来い」


次の瞬間。


地面が歪む。


水のような影が浮かび上がる。


人の形をした、不安定な存在。


揺れている。


だが――


ユウトは確信する。


「……やつだ」


ユウトが一歩前に出る。


「下がってろ」


レオはすぐに後退。


鉤爪はまだ装備していない。


リリアは横へ回る。


影が揺れる。


音に反応している。


ユウトが踏み込む。


一閃。


確かな手応え。


だが――


影は崩れない。


むしろ広がる。


「……浅いな」


その瞬間。


影が歪み、音を放つ。


耳の奥に響く不快な波。


「……っ!」


レオが顔をしかめる。


リリアも一瞬だけ動きが止まる。


ユウトは歯を食いしばる。


「……やっぱりこれか」


その時。


「待って」


エルナが前に出る。


笛を構える。


そして――


音を鳴らす。


澄んだ音が、森に広がる。


その瞬間。


ユウトの体が軽くなる。


視界が冴える。


「……っ」


リリアが息を呑む。


「これ……!」


レオも驚く。


「体が……動きやすい……!」


エルナはそのまま音を重ねる。


波のように、押し出すように。


ユウトは理解する。


「……強化か」


そのまま踏み込む。


速い。


さっきとは違う。


距離を一気に詰める。


斬る。


二撃、三撃。


影が大きく歪む。


リリアが横から動く。


短剣を滑り込ませる。


影がさらに崩れる。


だが――


消えない。


「まだ残るか」


ユウトが低く言う。


エルナの音が重なる。


影の音を押し返す。


空間がぶつかる。


その一瞬。


ユウトが踏み込む。


「今だ」


双剣が交差する。


深く斬り裂く。


影が弾ける。


崩れ、散る。


静寂が戻る。


しばらくして――


完全に消えた。


レオが息を吐く。


「……倒した……?」


ユウトは首を振る。


「いや」


短く言う。


「本体じゃない」


エルナが笛を下ろす。


「うん」


「今のは一部」


リリアが前を見る。


「……やっぱり奥ですね」


エルナは頷く。


「水の近く」


そして言う。


「セイレーン」


ユウトがその言葉を受ける。


「……それが名前か」


初めて知る。


だが、違和感はない。


「音で引き寄せるやつだな」


エルナが頷く。


レオが少し表情を引き締める。


「さっきのであれなら……本体、かなり強いですね」


エルナは軽く笑う。


「まあね」


否定はしない。


ユウトは前を見る。


「……行くぞ」


それだけ言う。


リリアが頷く。


「はい」


レオも続く。


「行きましょう」


その時。


「ぴよ」


ヒヨコが鳴く。


ユウトの肩の上。


その小さな存在。


だが――


その鳴き声に、ほんの一瞬だけ空気が揺れる。


エルナが目を細める。


「……やっぱり」


小さく呟く。


だが、何も言わない。


ユウトたちは歩き出す。


森の奥へ。


水の気配が、さらに濃くなる方へ。


敵は、逃げない。


だから――


こちらから踏み込む。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回は再び“あの敵”との接触でした。

ただ倒すだけでは終わらず、まだ先に本体がいるという流れになっています。


そしてエルナの力も少しずつ見えてきました。

戦い方そのものが変わる存在になりそうです。


ユウトたちは、止まらず前へ進んでいきます。

この先で待っているものが何なのか、ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。


よろしければ感想やコメントもお待ちしています。

いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。

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