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社畜だった俺のスキルはガチャだけ。気づいたら最強になっていた  作者: 1315
第3章 「響きの森と導きの旋律」
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第10話 届かない感覚

第10話 届かない感覚


朝の森は静かだった。


風が葉を揺らし、遠くで鳥の声が響く。


その中で――


リリアは目を閉じて立っていた。


何も持たず、ただ呼吸に意識を向ける。


「……」


ゆっくり吸って、吐く。


それを繰り返す。


けれど――


何も起きない。


「……難しいですね」


小さく呟く。


何かがあるのは分かる。


確かに、自分の中に“違う感覚”がある。


だが、それに触れられない。


「まだ出そうとしてる」


後ろから声。


エルナだった。


リリアは振り向く。


「……分かりますか?」


エルナは軽く頷く。


「分かる」


「全部顔に出てる」


リリアは少しだけ苦笑する。


「そんなにですか……」


エルナは肩をすくめる。


「うん」


そして一歩近づく。


「でも、それじゃ出ない」


はっきりと言う。


リリアは少し黙る。


「……じゃあ、どうすればいいんですか」


エルナは少しだけ考える。


「考えすぎないこと」


短い答え。


「出そうとするな」


「感じるだけでいい」


リリアは目を伏せる。


感じる。


それができないから、困っている。


「……やってみます」


小さく言う。


もう一度、目を閉じる。


呼吸に集中する。


外の音を消す。


自分の内側へ意識を向ける。


「……」


何もない。


ただ静かだ。


そのまま、しばらく続ける。


だが――


やはり、何も起きない。


リリアはゆっくりと目を開ける。


「……ダメですね」


今度は、はっきりと言った。


エルナは少しだけ笑う。


「そうだね」


あっさり認める。


「今は出ない」


リリアは少し驚く。


「……今は?」


エルナは頷く。


「無理にやっても出ない」


「そういう段階じゃない」


その言葉に、リリアは少し息を吐く。


焦っていたことに気づく。


ユウトが近づいてくる。


「どうだ」


いつも通りの声。


リリアは苦笑する。


「……全然です」


ユウトは軽く頷く。


「まあ、そんな簡単にできたら苦労しないだろ」


少しだけ口元を緩める。


「焦るな」


短い言葉。


それだけ。


リリアの肩の力が少し抜ける。


レオも近づく。


「でも、リリアならできそうな気がします」


素直な言葉。


リリアは少し照れる。


「……ありがとうございます」


エルナが横から言う。


「才能はあるよ」


「でも今は出ない」


はっきりと区切る。


「だから、今はそれでいい」


リリアはゆっくり頷く。


できないことを、受け入れる。


それも一つの前進だった。


その時。


「ぴよ」


小さな声。


ヒヨコが、少し離れた場所からこちらを見ている。


静かに。


じっと。


リリアはその視線に気づく。


「……?」


一瞬だけ違和感。


だが――


それ以上は分からない。


ユウトも視線を向ける。


だが何も言わない。


ただ――


ほんの一瞬だけ、目を細めた。


森は変わらず静かだ。


何も起きていない。


それでも――


何かが、確実に進んでいる。


まだ形はない。


まだ力にはならない。


それでも。


確かに、そこにある。


届かないままの感覚が――


少しずつ、近づいていた。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回はリリアの修行回でしたが、あえて「できない」状態を描いてみました。

すぐに力を使えるようになるのではなく、届きそうで届かない距離感を大事にしています。


うまくいかない時間も、ちゃんと意味があると思って書いています。

この積み重ねが、後の変化に繋がっていくはずです。


そして少しずつですが、違和感や伏線も増えてきました。

気づいた方はぜひコメントで教えてもらえると嬉しいです。


いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。

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