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社畜だった俺のスキルはガチャだけ。気づいたら最強になっていた  作者: 1315
第3章 「響きの森と導きの旋律」
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第9話 音に触れる者

第9話 音に触れる者


小屋の中に、静かな空気が流れていた。


さっきの音。


あれ一つで、空気が変わったのは誰でも分かる。


ユウトは手の中の笛を見ながら、小さく息を吐いた。


「……同じもんとは思えないな」


ぽつりと呟く。


リリアは指先を少し握り、何かを確かめるようにしている。


レオは両手を見つめていた。


今はもう、鉤爪は外している。


戦うための空気じゃないと、自然に判断していた。


沈黙が続く。


その空気を軽く壊したのは――


女性だった。


「……まあさ」


気楽な調子で言う。


「一回置いとこ、今の話」


軽く肩をすくめる。


「自己紹介しよっか」


レオがすぐに反応した。


「あ、はい!」


少し慌てて背筋を伸ばす。


「俺はレオです!鉤爪で戦ってます」


女性は耳を澄ませるように、少しだけ首を傾ける。


「……うん」


「分かるよ」


「動きと音で」


レオが目を丸くする。


「え、見てないのに……?」


女性は軽く笑うだけだった。


次にリリア。


一歩前に出る。


「リリアです。短剣を使っています」


「よろしくお願いします」


女性はその声を聞いて、わずかに目を細めた。


「リリア……ね」


「やっぱり」


小さく呟く。


その言葉に、少しだけ違和感が残る。


そして――


ユウト。


少しだけ間を置いてから口を開く。


「ユウトです」


それから続ける。


「双剣使って戦ってます」


軽く肩をすくめる。


「まあ……こんな感じでやってます」


少しラフな言い方。


女性はふっと笑う。


「いいね、ちゃんとしてる」


ユウトは苦笑する。


「一応な」


女性は一歩引く。


「私はエルナ」


「吟遊詩人」


それだけ言って、本題に戻る。


「で、さっきの音」


ユウトがすぐに乗る。


「……あれ、完全に別物だよな」


エルナが頷く。


「うん」


「まだ“音”になってない」


ユウトは笛を軽く回す。


「吹いてるだけ、って感じか」


「そうそう」


「出てるのは風だけ」


レオが頭をかく。


「じゃあ俺たち、全然ダメですね……」


エルナはあっさり言う。


「うん、ゼロ」


一瞬、空気が止まる。


だがすぐに続ける。


「でも普通」


ユウトが聞く。


「じゃあ、どうすればいい?」


自然な聞き方。


押しつけない。


エルナは答える。


「出せる人は限られてる」


ユウトが軽く眉を上げる。


「……誰が?」


エルナは少し笑う。


「私」


そして、リリアを見る。


「あと、この子」


リリアが驚く。


「……私ですか?」


「まだ出てないけどね」


「でも触れてる」


ユウトはリリアを見る。


少しだけ考えて――


「……じゃあやってみるか」


リリアは小さく頷く。


笛を持つ。


目を閉じる。


息を整える。


そして――吹く。


音は出ない。


けれど。


一瞬。


空気が揺れる。


ほんのわずか。


エルナが笑う。


「……今の」


リリアが目を開ける。


「……え……?」


「触れたよ」


短い言葉。


ユウトも頷く。


「……ああ、今の違ったな」


レオは首をかしげる。


「え、マジですか?全然分かんなかった……」


ユウトは少し笑う。


「俺もさっきまでは分かってなかった」


軽く肩をすくめる。


「そのうち分かるだろ」


レオは少し安心したように笑う。


小屋の中に、少しだけ空気が変わる。


何も解決していない。


でも――


確実に、一歩進んでいた。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


今回は少し戦闘から離れて、新しい出会いと「音」という新しい要素に触れる回になりました。

今までとは違う力の気配や、リリアの小さな変化に気づいていただけたら嬉しいです。


そしてユウトたちも、また一歩だけ前に進みました。

大きな成長ではないけど、こういう積み重ねが後々効いてくると思っています。


次は少しずつ、この“音”が形になっていくかもしれません。


よければ感想やコメントもお待ちしています。

いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。

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