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社畜だった俺のスキルはガチャだけ。気づいたら最強になっていた  作者: 1315
第3章 「響きの森と導きの旋律」
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第1話 水の気配

第1話 水の気配


森の奥は、静かだった。


ただの静けさじゃない。


音が吸われるような――妙な静けさ。


足音だけが、やけに響く。


「……少し、変ですね」


リリアが周囲を見ながら言う。


ユウトは短く答える。


「ああ」


木々は変わらない。


景色も、森そのものは普通だ。


だが――


「……湿ってますね」


リリアが足元を見た。


土が柔らかい。


ほんの少しだけ、湿っている。


「雨、降ってませんよね?」


レオが言う。


ユウトは空を見上げる。


枝に遮られているが、空気は乾いている。


「……降ってないな」


それなのに、地面だけが湿っている。


違和感。


三人とも、それを感じていた。


「……水、ですかね」


リリアが小さく呟く。


その言葉に、ユウトは少しだけ目を細めた。


「……近いのかもな」


レオが顔を上げる。


「水って……川とかですか?」


ユウトは少しだけ考える。


「それもある」


「でも……それだけじゃない気がするな」


言葉にしきれない違和感。


それが、確かにある。


「ぴよ」


ヒヨコが小さく鳴く。


ユウトの肩の上で、じっと前を見ている。


普段より、少しだけ静かだった。


「……どうした」


軽く声をかける。


「ぴよ……」


短い鳴き声。


それ以上は何もない。


だが――


何かを感じているようだった。


ユウトはそれ以上は追わなかった。


ただ前を見る。


「……進むぞ」


リリアがうなずく。


「はい」


レオも一歩踏み出す。


森はさらに深くなる。


光が減る。


代わりに――


空気が、少しずつ変わっていく。


ひんやりとした感覚。


肌にまとわりつくような湿気。


「……やっぱり、水ですね」


リリアが言う。


今度は、はっきりしている。


空気そのものが、湿っている。


遠くから、わずかに音がする。


「……聞こえます?」


レオが耳を澄ます。


ユウトも足を止める。


風じゃない。


葉の音でもない。


一定の――


「……流れてるな」


水の音。


小さい。


だが確かに、聞こえる。


「近いですね」


リリアの声が少しだけ明るくなる。


ユウトは頷いた。


「ああ」


だが、その時。


ピタッ――


ユウトの足が止まる。


「……どうしました?」


リリアが振り向く。


ユウトは前を見たまま言う。


「……静かすぎる」


さっきまであった音。


風も、葉も、虫の気配も。


すべて消えている。


水の音だけが、残っている。


レオも気づく。


「……変ですね……」


その瞬間。


ガサッ。


背後。


同時に、前方。


左右からも。


囲まれている。


ユウトが双剣を抜く。


「……来るぞ」


低く言う。


リリアはすぐに横へ展開。


短剣を構える。


レオは武器を握り直す。


鋭い爪のような形状。


手に装着された鉤爪。


まだ完全には馴染んでいない。


だが――


構えは崩れない。


次の瞬間。


影が飛び出した。


速い。


獣のようで、違う。


体は濡れている。


ぬめるような動き。


「……なんだこれ……!」


レオが声を上げる。


ユウトが踏み込む。


一閃。


斬る。


だが――


「……っ!?」


手応えが違う。


柔らかい。


だが切れている。


魔物が崩れる。


水のように。


地面に染み込む。


「……消えた……?」


レオが息を飲む。


リリアが次の個体へ回り込む。


「後ろ、行きます」


短く告げる。


一撃。


正確。


同じように崩れる。


最後の一体。


逃げようとする。


その瞬間。


レオが踏み出す。


迷いはない。


鉤爪を振るう。


まだ粗い。


だが――


確実に届く。


魔物が裂ける。


そして――


消える。


静寂。


再び戻る。


だが、さっきとは違う。


「……今の……」


レオが呟く。


ユウトは短く言う。


「……普通じゃないな」


リリアも頷く。


「はい……水に近い存在……かもしれません」


その言葉。


全員が同じことを思う。


水。


さっきから続く違和感。


そして、この魔物。


「……近いな」


ユウトが言う。


「水の場所が」


誰も否定しない。


森の奥。


その先にあるもの。


まだ見えていない。


だが――


確実に近づいている。


ユウトは前を見る。


止まらない。


「……行くぞ」


「はい」


「……はい!」


三人の声が重なる。


「ぴよ」


ヒヨコが小さく鳴いた。


その声が、妙に響く。


まるで――


この先に何かがあると、知っているかのように。

第1話を読んでいただき、ありがとうございます。


新章が本格的に動き出し、少しずつですが新しい場所の気配が見えてきました。

これまでとは違う空気や敵の存在を感じていただけていたら嬉しいです。


そして、水の気配――

この先に待つ「水底の都」がどんな場所なのか、物語はさらに広がっていきます。


ユウトたちの旅も、ここから一段と深くなっていきますので、ぜひ引き続き楽しんでいただければと思います。


いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。

感想やコメントもお待ちしております。

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