第2話 囚われの剣士たち
第2話 囚われの剣士たち
重い。
体が、鉛のように重かった。
「……っ」
アランは、ゆっくりと目を開ける。
ぼやけた視界。
薄暗い石の天井。
そして、冷たい床。
「……ここ……」
起き上がろうとする。
だが、うまく力が入らない。
「……くそ」
歯を食いしばる。
腕に違和感。
視線を落とす。
鎖。
手首と足首に巻きついている。
ただの拘束じゃない。
力を込めようとすると、逆に抜けていく。
「……魔力も……」
感じられない。
封じられている。
その時。
「……アラン……?」
弱い声。
アランは顔を上げる。
「レオン……!」
少し離れた場所。
同じように鎖に繋がれたレオンがいた。
さらに――
「……っ……」
壁にもたれるように座る、ピリム。
意識はあるが、まだ完全ではない。
「……みんな、生きてるな」
アランは小さく息を吐く。
レオンが苦しそうに笑う。
「……なんとか、な」
ピリムもゆっくりと目を開ける。
「……ここ……どこ……」
震える声。
アランは周囲を見渡す。
石の部屋。
窓はない。
扉は一つ。
逃げ場はない。
「……牢屋だな」
短く言う。
レオンが歯を食いしばる。
「……あのローブのやつか」
アランはうなずく。
「間違いない」
少しの沈黙。
ピリムが小さく言う。
「……アリスちゃん……」
その名前で、空気が変わる。
アランの目が鋭くなる。
「……連れていかれた」
低く言う。
「俺たちとは別だ」
レオンが拳を握る。
だが力が入らない。
「……助けねぇと」
「当たり前だ」
アランが即答する。
その声には迷いがない。
ピリムは少しだけ安心したように息をつく。
「……よかった……」
その時だった。
カツン。
足音。
三人の体が強張る。
扉の向こうから。
ゆっくりと近づいてくる。
「……来るぞ」
アランが小さく言う。
扉が開く。
光が差し込む。
そして――
黒いローブ。
同じだ。
あの時の。
レオンが低く唸る。
「……お前……!」
ローブの男は反応しない。
ただ、三人を順に見る。
観察するように。
「人間か」
淡々とした声。
「数は……三」
ピリムが身を縮める。
アランは睨みつける。
「何が目的だ」
ローブの男は答えない。
一歩、踏み出す。
「……竜族は別にしてある」
その言葉に、空気が凍る。
「……!」
アランの目が見開かれる。
レオンが叫ぶ。
「アリスはどこだ!」
ローブの男はわずかに首を傾ける。
「……重要な個体だ」
それだけ言う。
それ以上は語らない。
アランの中で、何かが切れかける。
「……ふざけるな」
低い声。
怒りが滲む。
だが――
体が動かない。
鎖が、すべてを抑え込む。
ローブの男は興味を失ったように背を向ける。
「お前たちは、しばらくここだ」
「使い道があれば、使う」
足音が遠ざかる。
扉が閉まる。
再び静寂。
レオンが壁を殴ろうとする。
だが力が入らず、拳が落ちる。
「……くそっ……!」
悔しさが滲む。
ピリムは小さく震えている。
「……こわい……」
アランはゆっくり息を吐く。
そして言った。
「……大丈夫だ」
静かな声。
「ユウトがいる」
その言葉には、確信があった。
レオンが顔を上げる。
「……来る、よな」
「ああ」
迷いなく答える。
「絶対に来る」
ピリムも小さくうなずく。
「……うん……」
希望は、まだ消えていない。
たとえここがどれだけ暗くても。
その時。
遠くのどこかで。
わずかな音がした。
気のせいかもしれない。
だが――
確かに、何かが動き始めていた。
第2話「囚われの剣士たち」を読んでいただき、ありがとうございます。
今回はアランたちの視点から、捕らわれた側の状況を描きました。
アリスとは別に隔離されていることや、ローブの人物の不気味さなど、少しずつ全体像が見え始めてきたと思います。
それぞれが動けない状況の中でも、わずかな希望が残っているのが今回のポイントです。
ここからユウトたちの動きとどう繋がっていくのか、物語はさらに加速していきます。
いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。感想やコメントもお待ちしております。




