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第25話 旅立ちの決意

第25話 旅立ちの決意


夜が明ける頃。


街には、まだ戦いの痕跡が残っていた。


崩れた建物、焦げた匂い。

人々は動き出しているが、どこか張り詰めた空気は消えていない。


その中を、ユウトとリリアは並んで歩いていた。


「……ユウトさん」


リリアが静かに声をかける。


「昨日、何かあったんですよね」


ユウトは少しだけ視線を落とす。


「……あいつが来た」


短く答える。


リリアの表情が引き締まる。


「あの……ローブの者ですか」


「ああ」


ユウトはうなずく。


「アリスを連れていったやつだ」


少しの沈黙。


「……そうですか」


リリアは息を整えながら続ける。


「それで、どうなりましたか」


「戦ってない」


ユウトは前を見たまま言う。


「向こうは様子見だった。“まだその段階じゃない”って言って消えた」


リリアは小さく眉を寄せる。


「……不気味ですね」


「ああ」


短く返す。


そして、はっきりと言った。


「場所は分からない」


その言葉は重かった。


「どこにいるのかも、どこへ向かったのかも分からない」


リリアは静かにうなずく。


「……はい」


ユウトは続ける。


「でも、動くしかない」


リリアも同じようにうなずく。


「……はい」



二人は長老の元へ向かった。


扉を叩く。


「入れ」


中に入ると、長老はすでに起きていた。


椅子に座り、こちらを見ている。


「……来ると思っていた」


ユウトは前に立つ。


「話がある」


長老はうなずく。


「聞こう」


ユウトは、昨日の出来事をすべて話した。


ローブの男。

アリス。

そして、アランたちのこと。


「……全員、連れていかれた」


静かな沈黙が落ちる。


長老は目を閉じ、しばらく考え込む。


やがて、ゆっくりと口を開いた。


「……そうか」


低い声。


「行き先は分からぬか」


「分からない」


ユウトが答える。


長老はゆっくりとうなずく。


「ならば、情報を得るしかない」


「ここから南に行ったところに魚人族の街がある」


リリアが反応する。


「……魚人族」


長老は続ける。


「外の流れに敏い種族だ」


「何か掴める可能性がある」


ユウトはうなずく。


「……そこに行く」


長老は二人を見据える。


「生きて戻れ」


短い言葉。


だが、重かった。



外に出る。


朝日が差し込んでいた。


ユウトは歩き出す。


リリアも隣に並ぶ。


「……まずは魚人族の街ですね」


「ああ」


ユウトは短く答える。


「そこから探す」


リリアが静かに言う。


「……必ず、見つけましょう」


ユウトはわずかに目を細める。


「ああ」


そして、静かに続けた。


「今度は、手放さない」


その言葉には、迷いがなかった。


二人は歩き出す。


まだ見えない場所へ。


手がかりもないまま。


それでも――


止まる理由は、どこにもなかった。



「……あの」


背後から、声がした。


二人が足を止める。


振り向く。


そこに立っていたのは、レオだった。


まだ戦いの傷は残っている。


それでも、その目はまっすぐだった。


「少し、いいですか」


控えめな声。


ユウトは何も言わず、続きを待つ。


レオはゆっくりと言葉を選ぶ。


「自分、全部は分かっていません」


正直に言う。


「でも……このままじゃ、嫌で」


少しだけ視線を落とす。


そして、顔を上げる。


「強くなりたいんです」


まっすぐな言葉だった。


「だから、その……」


少しだけ間を置く。


「一緒に行っても、いいですか」


リリアが静かに息を呑む。


ユウトはしばらく黙っていた。


レオの目を見る。


揺れていない。


本気だ。


「……止めても、来るか?」


レオは少しだけ困ったように笑う。


「……たぶん、行ってしまいます」


その言い方は柔らかい。


だが、意志は強い。


ユウトはわずかに息を吐く。


「……分かった」


短く言う。


「来い」


それだけだった。


レオは深く頭を下げる。


「……ありがとうございます」


リリアも優しく言う。


「よろしくお願いします」


三人は並ぶ。


進む方向は同じだった。


それぞれの理由を抱えながら。


そして、新たな旅が始まる。


第25話を読んでいただき、ありがとうございます。


今回は、次の目的地と進むべき道が定まり、物語が新たな段階へ入る回になりました。情報がない中での旅立ちということで、これからの展開も少しずつ広がっていきます。


そして最後にレオが加わり、パーティとしての形も変わってきました。それぞれの想いを抱えたまま進む三人の旅がどうなっていくのか、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。


いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。感想やコメントもお待ちしております。

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