第24話 再び現れた影
第24話 再び現れた影
夜はすでに深くなっていた。
街の明かりはまばらで、崩れた建物の影が長く伸びている。復旧の手は止まり、ほとんどの者が休息に入っていた。
それでも、どこか落ち着かない空気が街を包んでいた。
ユウトは一人、外に出ていた。
冷たい風が頬を撫でる。
だが、それよりも――
妙に気配が気になった。
何かがいる。
見えていないだけで、確かに“いる”。
ユウトは足を止めずに、ゆっくりと周囲へ意識を広げる。
崩れた壁の影。
瓦礫の隙間。
闇の奥。
どこにも姿はない。
それでも。
確実に視線を感じる。
「……隠れてるつもりか」
低く、言い捨てる。
その瞬間。
「気配を感じているのか」
背後から、声がした。
ユウトは振り向く。
驚きはない。
ただ、すぐに構える。
そこに立っていたのは――
黒いローブの男だった。
顔は見えない。
だが、その圧。
その存在感。
空気の重さ。
間違えるはずがない。
ユウトの目が、静かに細くなる。
「……やっぱり、お前か」
一歩、踏み出す。
「アリスを連れていったやつ」
男はわずかに動きを止めた。
否定はしない。
それだけで、十分だった。
ユウトの中で、あの戦いがはっきりと蘇る。
押し潰されるような圧。
何度振っても届かない刃。
それでも、止まれなかった。
それでも――届かなかった。
「……ふざけるな」
低く、押し殺すように吐き出す。
双剣を抜く。
「どこにやった」
一歩、近づく。
「アリスはどこだって聞いてる」
男は答えない。
ただ、じっとユウトを見る。
その視線は、まるで値を測るようだった。
「……やはり」
小さく呟く。
「古代種を討った者」
空気が変わる。
ユウトは止まらない。
さらに一歩踏み込む。
「それがどうした」
「関係ないだろ」
男の口元が、わずかに歪む。
「面白い」
その瞬間、気配が膨れ上がる。
圧。
以前と同じ。
いや、それ以上に濃い。
それでもユウトは引かない。
「……今度は逃がさない」
地面を踏み込む。
一気に距離を詰める。
だが。
男は動かない。
ただ、見ている。
「まだ、その段階ではない」
静かな声。
「お前は“鍵”だ」
「壊すには惜しい」
ユウトの表情が歪む。
「……は?」
一瞬、動きが止まる。
次の瞬間。
「勝手なことを言うな!」
怒りが弾ける。
「人を物みたいに扱うな!!」
さらに踏み込む。
斬る――その直前。
男の姿が揺れる。
「今日は、確認だけだ」
次の瞬間。
消えた。
「……っ!」
剣が空を切る。
気配も、完全に消えている。
残ったのは、静寂だけだった。
ユウトはその場に立ったまま、しばらく動かなかった。
荒い呼吸を整える。
握りしめた双剣が、わずかに震えている。
「……逃げるな」
低く、吐き捨てる。
悔しさと怒り。
そして――
届かなかった現実。
だが。
ゆっくりと息を吐き、顔を上げる。
目は、もう揺れていなかった。
「……今度は」
静かに、言葉を落とす。
「手放さない」
その言葉だけが、夜の中に残る。
確かな意志として。
物語は、さらに深く動き出していた。
第24話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、これまでの出来事が繋がり、ユウトと敵との距離が一気に近づいた回になりました。感情がぶつかる場面も多く、いつもより少し荒いユウトが見えたと思います。
ここから先は、対峙だけでなく「どう動くか」が大きく関わってきます。物語もさらに加速していきますので、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。
いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。感想やコメントもお待ちしております。




