第22話 静けさの中で
第22話 静けさの中で
戦いの音が消えていた。
さっきまで響いていた衝撃も、叫びも、すべてが遠のき、残っていたのは壊れた街と重く静かな空気だけだった。
崩れた建物、焦げた匂い、倒れたまま動かない魔物。
その中で、ユウトはゆっくりと息を吐いた。
「……終わったな」
短い言葉だった。だが、その声に油断はない。まだ何かが潜んでいるかもしれない、そんな警戒がわずかに残っている。
レオはその場に立ったままだった。
体が思うように動かない。戦っていた実感が、少しずつ現実として押し寄せてくる。
「……俺……」
言葉が続かない。ただ、自分の手を見る。
震えている。
それでも――
「……倒せた……んだよな」
誰に向けるでもなく、そっと呟いた。
「……ああ」
ユウトが隣に立つ。
「ちゃんと、やった」
それだけだった。余計な言葉はない。だが、その一言はまっすぐに届いた。
レオは少しだけ顔を上げ、振り返る。
そこには、父の姿があった。
地面に座り込んでいる。傷は深い。それでも、生きている。
「……っ」
レオは駆け寄る。膝をつき、顔を覗き込む。
「……父さん……大丈夫……?」
ゆっくりと目が開く。
「……レオ……か」
かすれた声。それでも確かに返事だった。
「……よかった……」
レオの声はほっとしたように震えていた。
「無事で……本当に、よかった……」
「……まだ、なんとかな……」
わずかに口元が緩む。
「……強く、なったな……」
その言葉に、レオは少し目を伏せる。
「……そんなこと、ないよ」
静かに首を振る。
「まだ……全然だし……」
それでも、その言葉をどこかで受け止めている。
ユウトは少し離れた場所で、その様子を見ていた。何も言わず、ただ静かに見守る。
周囲では、獣人たちが動き始めていた。怪我人を運ぶ者、瓦礫をどける者、火を消す者。少しずつ、街が戻ろうとしている。
「……手伝おうか」
ユウトがぽつりと言う。
レオは父を支えながら立ち上がる。
「……うん」
優しくうなずく。
「できること、やろう」
それからしばらく、二人は言葉を交わさずに動いた。瓦礫をどけ、人を運び、火を消す。
戦いとは違う疲労が、じわじわと体に積み重なっていく。それでも、誰も止まらなかった。
やがて、空の色が変わる。
夕焼けが、壊れた街を赤く染めていく。
ユウトは手を止め、空を見上げた。
「……まだ、終わりじゃないな」
レオもその隣に立つ。
「……うん」
静かに答える。
視線の先には、まだ傷だらけの街。守れたものもある。だが、失ったものも確かにある。
「……でも」
レオが小さく言う。
「……これから、戻していけるよ」
ユウトは少しだけ目を細める。何も言わない。だが、その言葉を否定はしなかった。
静けさの中、二人は同じ方向を見ていた。
ここから先へ進むために。
第22話を読んでいただき、ありがとうございます。
戦いの後の静けさや、それぞれの気持ちの整理を描いた回でした。レオの優しさや、ユウトとの関係の変化も少しずつ見えてきたと思います。
ここからは物語がまた動き出します。失ったものと向き合いながら、次に進んでいく展開になりますので、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。
いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。よろしければ感想やコメントもお待ちしております。




