第20話 黒き巨影
第20話 黒き巨影
煙の奥から現れたそれは――
“異質”だった。
人型。
だが、明らかに違う。
筋肉の付き方、動き、そして何より――
その存在感。
一歩、踏み出す。
それだけで地面が沈む。
空気が、重くなる。
レオの喉が鳴る。
「……でかい」
無意識にこぼれた声だった。
ユウトは何も言わない。
ただ、前に出る。
一歩だけ。
レオの少し前に立つ。
守るでもなく、隠すでもなく。
ただ自然に、前に立つ。
それだけで分かる。
――強い。
ユウトの空気が、わずかに変わる。
張り詰める。
「……来る」
静かな声。
次の瞬間。
巨影が消えた。
「――っ!?」
気づいた時には、目の前。
腕が振り下ろされる。
ユウトが動く。
最小限の動きで避ける。
だが――
ズドンッ!!
地面が砕けた。
衝撃が広がる。
レオの体が浮く。
「……速い」
見えなかった。
ユウトは一歩引き、間合いを取る。
視線は外さない。
再び来る。
横からの一撃。
拳が迫る。
ユウトは受け流す。
だが、完全には流せない。
体がわずかに滑る。
「……重いな」
止まらない連撃。
圧倒的な力。
ユウトは避ける。
受け流す。
だが――
反撃の隙がない。
レオが歯を食いしばる。
「……俺も」
踏み出す。
恐怖はある。
それでも行く。
側面へ回る。
タイミングを測る。
ユウトの動きに合わせる。
一瞬の隙。
そこへ――
踏み込む。
爪を振るう。
――ギンッ!!
弾かれる。
「……硬い!」
刃が通らない。
異常な硬さ。
次の瞬間。
横薙ぎの一撃。
レオへ直撃――
その前に。
ユウトが割り込む。
腕で受ける。
鈍い音。
衝撃。
それでも――止めた。
ユウトは振り返る。
「……大丈夫か?」
落ち着いた声。
レオは一瞬だけ息を詰め、うなずく。
「……はい」
ユウトは軽くうなずく。
「無理に前に出なくていい」
少し間を置いて、続ける。
「タイミングを合わせれば、ちゃんと通る」
責める言い方ではない。
導くような声。
レオは前を見る。
呼吸を整える。
観る。
敵の動き。
ユウトの動き。
その時。
ユウトが踏み込む。
今までより、わずかに深い。
敵の攻撃を誘う。
振り下ろされる腕。
その内側へ。
滑り込む。
「……そこだな」
拳を叩き込む。
ドンッ!!
初めて、効いた。
レオの目が変わる。
「……そこ」
同じ動き。
同じタイミング。
踏み込む。
爪を振るう。
――ザンッ!!
通る。
浅いが、確実に。
敵が止まる。
一瞬。
ユウトが動く。
逃さない。
連撃。
重い音が響く。
敵が後ろへずれる。
だが――
倒れない。
「……しぶといな」
敵が体勢を戻す。
その視線が、レオを捉える。
一直線に来る。
「……来る!」
レオが構える。
だが間に合わない。
その瞬間。
ユウトが前に出る。
レオの前に立つ。
拳を合わせる。
衝突。
空気が震える。
足が沈む。
それでも――止める。
完全に。
押し返す。
ユウトが静かに言う。
「……少し下がってもいい」
レオは首を振る。
「……いや」
一歩、前へ。
「一緒にやります」
ユウトは一瞬だけ目を細める。
そして、ほんの少しだけ笑った。
「……じゃあ、合わせよう」
二人が並ぶ。
同じ方向を見る。
敵が構える。
空気が張り詰める。
次で決まる。
そんな予感。
ユウトが低く言う。
「タイミング、今と同じでいい」
レオがうなずく。
そして――
二人同時に、踏み込んだ。
第20話を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は戦闘を中心に、ユウトとレオの距離感や関係の変化を描きました。一人で戦うのではなく、「合わせる」という形が少しずつ見えてきた回になっています。
まだ決着には至っていませんが、次はいよいよ大きく動く場面になります。ここからどうなるのか、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。
いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。感想やコメントもお待ちしています。




