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第8話 狼の視線

第8話 狼の視線


獣人の街の通りを、ユウトたちはゆっくり歩いていた。


森の奥にあるとは思えないほど、しっかりとした街だった。

石畳の道の両側には木と石で作られた建物が並び、店や屋台も見える。


ただ一つ、人間の街と違うところがある。


そこを行き交うのが 獣人たち だということだった。


リリアは周囲を見回しながら言う。


「思っていたより……普通の街ですね」


レオは少し嬉しそうに笑った。


「そうですか?」


ユウトも頷く。


「ああ。もっと森の集落みたいなのを想像してた」


レオは少し考えるように言った。


「昔はそうだったらしいです。でも少しずつ発展して、今の形になったって聞きました」


ユウトは屋台の方をちらっと見る。


「食べ物の匂いもするしな」


レオは笑う。


「この街の料理はおいしいですよ」


そんな会話をしていると、通りを歩く獣人たちがちらちらとこちらを見ていることにリリアが気づいた。


「……見られてますね」


レオは少し申し訳なさそうに言う。


「すみません。人間はあまり来ないので」


ユウトは肩をすくめた。


「まあ珍しいだろうな」


歩きながらユウトはレオに聞く。


「レオはずっとこの街で育ったのか?」


「はい」


レオは頷いた。


「生まれた時からずっとここです」


「森にはよく行くのか?」


レオは苦笑する。


「よく怒られますけど」


「誰に?」


ユウトが聞くと、レオは少し照れたように言った。


「父さんに」


リリアが少し首を傾げる。


「レオさんのお父さんって厳しい方なんですか?」


レオは少し考えてから答えた。


「……厳しいというより」


少し笑う。


「強いんです」


ユウトは興味を持つ。


「強い?」


「この街でもかなり強い方だと思います」


ユウトは小さく頷いた。


レオは続ける。


「父さんは森の見回りもしてるんです。魔物が出ることもあるので」


「なるほどな」


ユウトは納得した。


森の奥には確かに魔物がいた。

この街を守る戦士がいても不思議ではない。


しばらく歩くと、前方に少し開けた場所が見えてきた。


広場だった。


その向こうから、一人の獣人が歩いてくる。


大きな体。


堂々とした歩き方。


狼の耳と尾を持つ 狼の獣人。


ユウトは自然と目を細めた。


ただ歩いているだけなのに、普通の獣人とは違う雰囲気がある。


レオの足が止まった。


「あ……」


ユウトが横を見る。


「知り合いか?」


レオは小さく答えた。


「……父さんです」


その言葉と同時に、男は三人の前で止まった。


「レオ」


低い声だった。


レオは少し背筋を伸ばす。


「……父さん」


そして男の目が、ゆっくりとユウトたちへ向く。


数秒の沈黙。


そのあと、男は静かに言った。


「……人間か」


低い声だった。


その言葉だけで、周囲の空気が少し重くなる。


ユウトはその視線を正面から受け止めた。


鋭い目だ。

まるでこちらの中身まで見ているような感覚だった。


レオが少し慌てた様子で口を開く。


「父さん、この人たち――」


だが男は軽く手を上げ、レオの言葉を止めた。


「分かっている」


短く言う。


そしてユウトとリリアを見たまま続けた。


「森から来たな」


ユウトは頷く。


「ああ」


男はしばらく二人を見ていたが、やがて静かに言った。


「この街に人間が来るのは珍しい」


その声には警戒も、敵意も、どちらも混じっているようだった。


少し間を置いてから、男は言う。


「事情は長老に聞いてもらう」


レオが少し驚いたように言う。


「長老に?」


男は頷いた。


「そうだ」


そして三人に背を向ける。


「ついて来い」


それだけ言って歩き出した。


レオは小さく息を吐く。


「……長老に会うことになるとは」


リリアが小さな声で聞く。


「長老って……この街の?」


「はい」


レオは頷いた。


「この街で一番偉い人です」


ユウトは少し肩を回す。


「ずいぶん大事になってきたな」


そう言いながらも、ユウトは男の背中を見る。


堂々とした背中だった。


三人はその後を追い、街の奥へと歩き出した。


向かう先は――


獣人の街を治める長老のもとだ

第8話を読んでいただき、ありがとうございます。


今回はレオの父が登場し、ユウトたちが長老のもとへ向かう流れとなりました。少しずつですが、獣人の街やその中の関係も見えてきたのではないかと思います。


これから長老との対面で、物語も少し動いていきます。どんな話が聞けるのか、ぜひ次の話も読んでいただけたら嬉しいです。


よろしければ感想やコメントもいただけると、とても励みになります。いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。

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