第4話 森影の訪問者
第4話 森影の訪問者
森の奥は昼の光をほとんど遮り、深い緑の影が枝や蔦の間に揺れていた。
苔むした倒木や絡み合う蔦が足元を妨げ、湿った土の匂いが鼻をくすぐる。
森の静けさの中で、微かな風や葉の揺れる音が、二人の神経を研ぎ澄ませる。
ユウトは双剣を背に構え、周囲を見渡しながら歩いた。
「……なんか、気配があるな」
微かな枝の揺れや葉のざわめきに、背筋がぴんと張る。
だが、何の気配かはわからず、ただ森の不自然さだけが彼の胸をざわつかせた。
リリアは小さな生き物を胸元に抱え、羽の微かな震えを確かめる。
「……静かにしててね。びっくりさせちゃだめだから」
ヒヨコは丸くなったまま、リリアの胸元で微かに羽を震わせるだけだった。
ふと、苔の上に鋭い爪の跡のような足跡を見つけた。
ユウトは眉をひそめる。
「……これ、人間じゃないよな?」
リリアは足跡に目を落とし、軽く首をかしげた。
「そうですね……人間とは違う感じですけど、あんまり怖がらなくて大丈夫です。ユウトさん。森には、こういう獣っぽい生き物も住んでたりしますから」
「獣……?」
「ええ、まぁ獣人って呼んでもいいかもしれませんね。木の中で暮らしてたり、人を警戒して隠れてることも多いんですけど……あんまり近づくと、ちょっと危ないかもです」
リリアは短剣を軽く握り直し、森を見回す。
「でも、こうして足跡や気配を見ながら進めば、慌てずに済みますよ」
ユウトは少し考え込みながらも頷く。
「……なるほど、気を抜けないってことか」
森の奥から、葉がわずかに揺れる音が低く響く。
何かが視線を送っているかのように、二人の周囲で静かなざわめきが続く。
「……あれ、今、影が動きました?」
ユウトが目を細める。
リリアは小さく息をつき、ヒヨコを軽く抱き直す。
「うーん……気のせいかもしれませんけど、森の奥にはこういうちょっと変わった動きもありますから、油断は禁物です」
二人は慎重に足を進める。
倒木をまたぎ、苔むした岩の陰を越え、絡み合う蔦をかき分けるたび、森の空気がさらに重くなる。
揺れる光や影が、昼間なのに不思議な静寂を生んでいた。
やがて小さな空間に差し込む光が揺れる。
ユウトは立ち止まり、息を整えた。
「……この森、普通じゃないな」
リリアは短く頷き、胸元のヒヨコに目をやる。
「ええ、でも大丈夫です。ユウトさん。ちょっと緊張しますけど、慌てなければ怖くないですから」
茂みの向こうで、わずかに影が揺れた。
ユウトの目にはまだ形は見えない。
リリアは短く呼吸を整え、二人はさらに森の奥へと歩を進める。
静かな森影の中、倒木や苔、揺れる葉の間で、影と気配が交錯する。
ヒヨコは胸元で眠ったまま。
ユウトにはまだ正体が分からない“何か”が、森の奥で静かに二人を見守っていた
第4話をお読みいただき、誠にありがとうございます。
今回はユウトとリリアが森の奥へ進み、静かで不思議な気配に包まれる様子を描きました。
ユウトにはまだ正体が分からない“何か”の存在が、森の奥で静かに息づいています。
リリアの説明で少しだけその世界を垣間見ていただけたかと思いますが、森の秘密はまだまだ深く、次回への期待を残しております。
コメントやご感想もいただけますと、大変励みになります。
次回もどうぞ、二人の森の冒険と、影に潜む存在をお楽しみくださいませ。




