第13話 帰還と騒然
第13話 帰還と騒然
町の門が見えたとき、俺はようやく息を吐いた。
「……帰ってきた」
長い戦いだった。
森の奥で古代種と戦い、命を落としかけた。
それでも――
なんとか生きて帰ってきた。
隣ではリリアも静かに歩いている。
少し疲れているが、表情は落ち着いていた。
肩の上ではヒヨコが小さく鳴く。
「ぴよ」
門番がこちらを見て、眉を上げた。
「おい……またお前らか」
どうやら顔は覚えられているらしい。
だがすぐに俺たちの服を見て、顔が変わった。
スーツはボロボロ。
リリアの服も血で汚れている。
「……何があった」
低い声だった。
リリアが答える。
「森で魔物と戦闘がありました」
門番はため息をつく。
「その様子だと、普通の魔物じゃないな」
俺は苦笑した。
「まあ……ちょっと強い相手でした」
門番は数秒俺たちを見たあと、町の中を指さす。
「報告するならギルドだ」
「そうします」
俺たちは町へ入った。
夕方の町は賑やかだった。
屋台の匂い。
商人の声。
子どもたちの笑い声。
だが通りすがりの人が、みんなこちらを見る。
「血だらけだぞ」
「森で何があったんだ?」
ひそひそ声が聞こえる。
リリアは苦笑する。
「……目立ってますね」
「だな」
俺は肩をすくめた。
やがて見慣れた建物が見えてくる。
冒険者ギルドだ。
俺たちはすでに何度か来ている。
扉を開ける。
ギルドの中はいつも通り賑やかだった。
酒を飲む冒険者。
依頼書を見る者。
笑い声。
だが――
俺たちが入った瞬間、視線が集まった。
「おい……」
「またあの新人だ」
どうやら少し有名になっているらしい。
俺たちは受付へ向かう。
カウンターの向こうには、いつもの受付嬢がいた。
金色の長い髪。
青い瞳。
ギルドの制服を着た女性だ。
そしてリリアを見ると、すぐに声を上げた。
「リリア!?」
かなり驚いた顔だった。
「どうしたの!?その格好!」
リリアは少し困った顔をする。
「森で戦闘があって……」
受付嬢は慌てて身を乗り出した。
「怪我は!?」
「大丈夫です」
受付嬢はほっと息を吐いた。
「よかった……」
そして俺を見る。
「ユウトさんも無事でよかったです」
俺は軽く手を上げた。
「なんとか」
受付嬢は仕事モードに戻る。
「討伐報告ですか?」
リリアは頷いた。
「はい」
受付嬢は書類を出す。
「魔物の種類は?」
リリアは少しだけ迷った。
そして言う。
「古代種です」
一瞬だった。
ギルドの空気が止まる。
近くの冒険者が振り向いた。
「……は?」
誰かが呟く。
受付嬢も固まった。
「え……?」
リリアは続ける。
「森の奥で遭遇しました」
ざわざわと声が広がる。
「古代種?」
「そんなのいるのか?」
受付嬢が震える声で聞く。
「そ、それで……どうなったんですか」
俺が答える。
「倒しました」
沈黙。
そして――
「はあああ!?」
ギルドが一気に騒然となった。
「嘘だろ!?」
「新人だぞ!?」
「冗談だろ!」
受付嬢も完全に混乱していた。
「ちょ、ちょっと待ってください……」
俺は言った。
「証拠あります」
そして手を前に出す。
ドン!!
床に落ちたのは巨大な牙。
古代種の牙だった。
ギルドが静まり返る。
全員がその牙を見る。
やがて誰かが呟いた。
「……本物だ」
ざわざわと声が広がる。
受付嬢は震える声で言った。
「少し待ってください」
そして奥へ走った。
数秒後――
奥の扉が開く。
大柄な男が出てきた。
鋭い目。
傷だらけの顔。
ギルドマスターだった。
彼は牙を見る。
そして俺たちを見る。
「……誰が討伐した」
俺は答えた。
「俺たちです」
ギルドマスターの目が細くなる。
そして静かに言った。
「……詳しく話を聞こう」
どうやら――
また大事になりそうだった。
第13話を読んでいただき、本当にありがとうございます。
ここまでユウトとリリアの物語を追いかけてくださり、とても嬉しいです。
第13話では、森での激しい戦いを終えた二人が町へ帰還し、冒険者ギルドへ報告に向かいました。
そして古代種討伐という事実が明らかになり、ギルドの空気が大きく変わり始めます。
これまでの冒険とは違い、今回の出来事は町やギルドにも大きな影響を与えていくことになります。
ユウトとリリアの運命も、ここから少しずつ動き出していきます。
まだまだ物語は続きますので、これからの展開も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
これからもユウトたちの冒険を見守っていただけたら嬉しいです。




