第12話 古代種の証
第12話 古代種の証
ドォォォン!!
古代種の巨体が地面に崩れ落ちた。
森が大きく揺れる。
衝撃で落ち葉が舞い上がり、木々がざわめいた。
そして――
静寂が訪れる。
さっきまで響いていた咆哮も、地面を砕く足音も、すべて消えていた。
聞こえるのは風の音だけ。
リリアはその場に立ったまま動かなかった。
肩が激しく上下している。
呼吸が荒い。
手に握っていた短剣から、ぽたりと血が落ちた。
赤い雫が地面に染み込んでいく。
「……終わった」
小さな声だった。
だがその言葉を言った瞬間、
全身の力が抜けた。
リリアはその場に膝をついた。
「はぁ……はぁ……」
呼吸が止まらない。
体が震えている。
それでも彼女はゆっくりと顔を上げた。
目の前には、倒れた古代種。
巨大な体。
森の王のような存在。
その怪物が、今は動かない。
完全に沈黙していた。
ヒヨコが空から戻ってくる。
「ぴよ」
リリアの肩に止まった。
まるで戦いの終わりを確認するかのように。
俺は少し離れた場所で倒れていた。
体中が痛い。
胸が重い。
腕も足もまともに動かない。
それでもゆっくり体を起こす。
「……勝ったのか」
自分でも信じられなかった。
目の前の光景を見ても、まだ実感がない。
あんな怪物を、本当に倒したのか。
リリアがこちらを見る。
疲れた顔で、小さく笑った。
「やりましたね、ユウトさん」
俺は苦笑する。
「いや……」
頭をかきながら言う。
「ほとんどリリアが倒しただろ」
リリアは首を横に振った。
「ユウトさんがいなかったら、最初の時点で終わってました」
その言葉に、俺は少し黙った。
ヒヨコが鳴く。
「ぴよ」
その声に、二人とも少し笑った。
しばらくその場で休む。
戦いの緊張が、少しずつ体から抜けていく。
やがて俺は立ち上がった。
そして古代種の死体を見る。
近くで見ると、さらに巨大だった。
人間の何倍もある体。
分厚い皮膚。
鋭い牙。
まさに怪物だ。
「……これ、どうする?」
俺が聞く。
リリアも死体を見る。
「古代種です」
真剣な顔で言った。
「素材はかなり貴重だと思います」
「やっぱりか」
これだけの魔物だ。
価値がないわけがない。
牙、爪、皮、骨。
全部高く売れそうだ。
だが問題がある。
「……持って帰れないよな」
この大きさだ。
普通なら何十人も必要だろう。
その時、俺は思い出した。
「……あ」
無限収納バッグ。
俺は古代種の体に近づく。
リリアが不思議そうに見る。
「ユウトさん?」
俺は古代種の体に手を置いた。
そして心の中で念じる。
次の瞬間。
巨大な死体が――
消えた。
森が静まり返る。
リリアが固まった。
「……え?」
完全に理解が追いついていない顔だった。
「どうした?」
俺が聞く。
「い、今……」
リリアが指を指す。
「古代種、消えましたよね」
「ああ」
俺は普通に答える。
「収納した」
リリアはしばらく動かなかった。
そして――
「えええ!?」
大きな声を出した。
森に響く。
俺はびっくりする。
「そんな驚く?」
「驚きますよ!」
リリアが言う。
「古代種ですよ!?」
「うん」
「普通そんな簡単に持ち帰れません!」
まあ、そうだろうな。
俺は苦笑する。
「ちょっと特殊なんだ」
リリアはまだ驚いた顔をしていたが、やがて小さく笑った。
「ユウトさん、本当に不思議な人です」
「自分でもそう思う」
ヒヨコが鳴く。
「ぴよ」
森を見渡す。
もう魔物の気配はない。
さっきまでの戦いが嘘みたいだった。
「……町に戻ろう」
俺が言う。
リリアも頷いた。
「はい」
二人は森の出口へ歩き出す。
夕方の光が木々の間から差し込んでいる。
オレンジ色の光が森を照らしていた。
長い戦いだった。
命の危険もあった。
それでも、乗り越えた。
森を抜ける。
遠くに町の門が見えてきた。
門番がこちらを見る。
そして目を見開いた。
「おい……!」
門番が叫ぶ。
「その血……何があった!?」
俺とリリアは顔を見合わせる。
そして少し笑う。
俺は肩をすくめて言った。
「ちょっと森で戦ってきただけですよ」
その言葉が、
この町を大騒ぎにすることになるとは、
この時の俺たちはまだ知らなかった。
第12話を読んでいただき、本当にありがとうございます。
ここまでユウトとリリアの物語を追いかけてくださり、とても嬉しいです。
今回の第12話では、ついに古代種との戦いが決着しました。
命がけの戦いの末、二人が協力して強敵を倒すことができました。
そして物語は、森での戦いから次の舞台へ進んでいきます。
町へ帰還したことで、ユウトたちの行動は周囲にも知られていくことになります。
この先、ギルドや町の人々、そして新しい出来事が待っています。
物語はまだまだ続いていきますので、これからの展開も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
もしよければ、これからもユウトたちの冒険を見守っていただけると嬉しいです。




