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聖女マノンは、全能感の絶頂にいた。
女神の奇跡である欠損部位の完全再生魔法を用い、四肢を失った冒険者や、災害で重傷を負った国民を、無償で治療するボランティア活動。
それは、彼女にとって自尊心と虚栄心を満たす生きがいの一つだった。
この日も、魔獣に襲われた街から運ばれてきた負傷者たちが、彼女の館の前庭に長蛇の列を作っていた。
聖女が、悦びに満ちた声で次の負傷者を呼び入れる。
「あらあら、なんて痛々しい姿なの! でも安心して。この私が、今すぐ慈悲の力で元通りにしてあげますからね」
招き入れられたのは、左腕と右足を根元から失い、辛うじて一本の松葉杖に縋る女性だった。
髪は焼け縮れ、顔面は魔獣に食い荒らされたのか、原型を留めぬ無惨な肉の塊と化している。
そのあまりに惨めな「素材」を前に、マノンはうっとりと目を細め、まばゆい女神の光を解き放った。
「さあ、治りなさい。元の通り、完全に!」
光の中で、失われた四肢が瑞々しく芽吹く。
ズタズタの顔面に、新しい血管、筋肉、皮膚が急速に編み上げられていく。
そして、瞬く間に復元されたのは――マノンもよく見覚えのある、あの顔だった。
「しまっ……」
そうつぶやいたのも束の間。
「――大爆裂」
ゼロ距離で放たれた、最大火力の爆裂魔法。
轟音とともに、「聖女マノンだったもの」は、数千の肉片へと成り果て、白磁の石畳にぶちまけられた。
「……ああ、肉が焼け焦げる。なんていい匂いなのかしら♪」




