第9話 神様みたい
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「我はまだ思うように動けんのだ。実体も取り戻せていない……」
「あいつ悪魔なんですよね?俺に何とか出来ますか?無理でしょ?」
「我には分かる。お前はとても強かろ?人の限界を超えている……
それにお前は……もしや神の……いや、滅多なことは言うまい……」
「神の?……何ですそれ?
あっ、言っときますけど俺、勇者じゃありませんよ?」
「いやそうではない……忘れてくれ……
奴は、悪魔とは言え、研究者の様なものだと思うぞ……
我を暴走させる魔道具の実験……とか言っておった。
それ程、戦闘に長けてはおらん筈だ」
「研究者か……分かりました。結界は壊したけど、
あいつをこのままにしては同じ事の繰り返しになるかもしれませんからね」
「やってくれるか?ならば、お前に我の力を与えよう。役に立つはずだ。
悪魔相手に厳しい戦いになるとは思うが……頼むぞ」
龍神が光る。それに反応して颯斗の身体も光り出す。
〝龍神の加護を得ました。スキル飛行を得ました。スキル神眼を得ました〟
(……なんか聞こえた……龍神の加護?……
女神の加護の後に、今度は龍神の加護か……
いったいどんな加護をもらったんだろ?)
「それと少年……」
「颯斗です。リックとでも呼んで下さい」
「ではリック。お前のその剣をこちらに向けるのだ」
「これで魔道具を壊したら、こんなになってしまいました……
ぼろぼろですよ?この剣……」
「よいからこちらに向けるのだ」
首を傾げながら龍神に剣を向けると、剣に光が宿り、みるみる刃が再生されていく。
「お~!凄い……助かります。これなら戦えるかも」
「再生しただけではないぞ。我の神聖力を込めた。
これで、一度だけなら、悪魔を斬り裂く事が出来る筈……
今はこれくらいしか出来んが、いつかお前に、相応しい剣を授けよう」
「いや……剣は……ま、いっか……」
「え~い!忌々しい。あいつは何者なのだ?何故死の魔道具を破壊出来る?
人が触れば、立ち所に死が訪れる……これはそういう魔道具だぞ?」
「うわ~だから破壊しようとしたら、あんなに痺れたのか?
それに、色も形も、おどろおどろしかったしな?」
気付くと、悪魔の後ろに颯斗が居た。
「き、貴様、いつの間に……」
「何であんなことしたんだ?目的は実験?
それとも、村をどうかしようと?」
「人の村など……いや、貴様如きに答える必要はないな……死ぬがいい」
悪魔の持つ杖から無数の線が絡まったような攻撃が飛んできた。
しかし颯斗は、それを難なく避ける。
「な……何故これが人間如きに避けられる!?」
目をまん丸に見開く悪魔。
「いきなり攻撃してくるなんて……問答無用か?だったら俺も……〝那岐流抜刀術〟……」
「バカめ!そんな剣でこの私……悪魔が切れると……」
最後まで言う前に腰から肩にかけて颯斗の剣が走った。
〝ズルズルズル……ドサッ!〟
切られた部分がずれていき、身体の半分が地面に落ち、
再生する事もなく悪魔は消えた。
「ふう……任務完了です。龍神様……」
「なあソニア。こんなこと聞くとあれかもだけど……ご両親はどうしたの?」
「……3年前に、田畑の収穫物を街に卸しに行った帰り、
山賊に襲われて……」
「そうか……辛いこと聞いて済まない。
それからは、どうやって暮らしていたんだ?」
「妹と一緒に田畑を……村のみんなにも助けて貰って……
でも、1年前に妹が農作物を狙った野犬に襲われて……」
「不幸続きだったんだな……ソニア……よく頑張ったな。
そうだ……ちょっと、サリナの足、見せてくれ。
う~ん……これか……俺に治せるかな……
ダメもと……やるだけやってみるか?」
〝ハイヒール〟
「んん……ハイヒールじゃダメか……
俺未だ治癒魔法は、これくらいしか出来ないから……ごめんな」
「ううん、痛みが無くなったよ。未だ立てないけど、とっても楽になった」
「だったら良かったけど……」
「ありがと、リック……痛みが無くなっただけでも……本当助かるわ」
「ソニア、学校は?もう卒業する歳だよな?」
首を横に振るソニア。
「サリナの面倒をみなきゃならないし……お金も無いし……
行けるわけない……休学しているの。でももう諦めたわ。退学しようと思ってるの」
「俺はここに止まって、お前達を助けることはできないから……
これを……えっと……金貨じゃない方がいいな……銀貨と銅貨……
あんまり現金は、持ってないけど……」
「何を言ってるのリック?貰えないわ……そんな大金。
本当ならこちらが助けてもらったお礼をしなきゃならない側なのに……」
「えっ?たかが銀貨と銅貨だぞ?これが大金?」
「それ全部合わせたら金貨3枚分位よ?300万ギル……大金じゃない……」
「そう?でも俺こう見えても、ギルドの預金、1億ギルあるんだぞ?
妹、サリナのためだと思って、取っておいてくれ」
「リック……貴方、今日会ったばかりの私たちに、何故こんなに親切に?……」
「可愛いオッパイを見せて貰ったから」
「えっ?」
「ウソウソ冗談。困ってる人助けるのに、理由が必要か?」
「リック……」
この2ヶ月後、更に20年くらい暮らしていけそうな大金がソニアに届いた。
『学校行けよ。それと、サラを医者か、治癒師に見せてみろ。-リック-』
簡単な手紙が添えられていた。ソニアは涙が止まらなかった。
「リックって、神様みたい……」
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