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第54話 落ちたんじゃなくって、飛ばされたの

16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗りくとは、

勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。

自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、

人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。

「母さん、赤ちゃんの時、地上に落ちたの?」

「落ちたんじゃなくて、飛ばされたのよ?」

「……あれ? その話――

 ガードナー王国のカステルークの街で、

 エレーナから聞いたかも。

 落ちてきた赤ちゃんの女神を、

 ある夫婦が一月だけ育てたって……

 な? エレーナ」

「ええ、伝説になっていますね……実話だったとは……」

「だから……落ちたんじゃなくって、飛ばされたの。

 あなた前に、

 〝ドジな女神様だね〟とか言ってたでしょ?

 聞いてたんだから」

「そここだわるね。

 でも伝説ではそう言われてるみたいだよ?」

「落ちたんじゃなくて飛ばされたのよ……」

 母は、妙にそこだけ譲らなかった。


「それで、母さんは地球に……で、父さんと出会って……」

「そ、偶然ね……必然だったのかしら?」

 どこか遠くを見るような瞳。


「神と人との間にも、子供ができたんだね……

 母さんが女神で、俺はその子供……

 俺って半神って事?」

「海斗さんもただの人って訳じゃないんだけど……」

「どゆこと?」

「そのうち……ね。」

 意味深に微笑む。


「まあ颯斗はまだ完全な神ではないから、

 半神と言ってもいいのかしら。

 半分人であるあなたが、

 あまりにも強い潜在能力を持っていたから――

 他の神々が面白がって、

 次々と加護をつけていったのよ。

 今ではその辺の神より、よほど強い力を持っているわ」

「そこまでじゃないけど……」

「「そこまでよ」」

 母とエレーナの声がぴたりと重なる。


「……出会った人たちのおかげだよ。

 じゃなきゃ、今の俺はいない」

 それは本心だった。


 ーーーー


「母さんさ。

 なんで夢の中でしか会いに来てくれなかったの?

 こうやって普通に来くれればよかったのに」


「それは無理なの、こうして出てこれるのも、

 こうして出てこられるのも、この城が特別だから」

 母の背後に、淡く光る神像が浮かぶ。


「ハイメル王国にあった神殿……そこから移した、

 サイモンが造った私の像があるの。

 私はそれを媒介にして顕現できるのよ」


「……そっか」

 少しだけ、胸の奥が軽くなる。


「俺、勝手にこの世界に連れてこられて、

 腹の立ったこともあったけどさ。

 でも色んな出会いがあって、母さんにも会えた。

 あのバカ王家に、そこだけは、ちょっと感謝かな」

「……え?」

 空気が止まる。


「先輩たちは?」

「あの子達を呼んだのはハイメル王家。

 でもあなたを呼んだのは、私」

「俺だけ? なんで? 会いたかったから?」

「もちろん会いたかったわ。

 でもそれだけじゃない。

 あなたの使命を知っていたから……

 あの人達の召喚魔法を利用させてもらったの」

「使命?」

 母は微笑む。


「この世界で体験してきたことで、

 もう大体分かっているのでしょう?」

「……まあ、おおよそは」

「未来に影響するから、

 詳しく言えないことも理解してるでしょ?」

「……うん」


「でもなぜ俺だけ3年後に飛ばしたの?」

「それは私じゃないのよ。

 あなたがやったことよ?」

「は?」

「あなた、召喚の渦に一瞬遅れて飲み込まれたでしょう?

 あの瞬間、私は魔法陣を少し変えたの」

「どうしようとしたの?」

「場所をずらそうとしたの。

 あなたを王城に転移させたくなかったのよ」

「……」

「でもあなた、

 自分だけ他に飛ばされるのを嫌がったでしょう?

 抗って、その瞬間、無意識に魔力を使った。

 場所だけでなく、時間までずれたのよ」

「……俺が?」

 鳥肌が立つ。


「ふーん……でも結果オーライかもね。

 場所だけズレてたら、

 すぐ先輩たちに会いに行ってた。

 そしたらオスカー父さんにも、

 ライアン様にも出会えなかった」

「あなたが消えた時は、少し慌てたけどね?」

 母は苦笑する。


「ところで、母さんがここに現れたと言う事は……

 何か用事があったんじゃないの?」

「あら、話が早くて助かるわ。

 同郷の方とも募るお話があると思うし、

 私もう少しお話をしていたいのだけど……

 取り急ぎ、やって欲しいことがあるの」

「良いよ?何でも言って。何をしたら良い?」

「助けて欲しい子達がいるの。

 サインツにはわかるわよね?」

「聖女ですね?」

「聖女?」

「世界中にいる、私が加護を与えた聖女達。

 悪魔に狙われているの。気づいたのは最近よ」

「俺達も、その片棒担がされてた」

「聖女の聖魔力を集めてるんだ」

「集めてどうするの?」

「分からない。ただ操られていただけだから……」

「最近復活した悪魔の王か……」

「その聖女達は?」

 母の声が静かに沈む。


「……魔力が枯渇して、亡くなったわ」

 沈黙。

「……酷すぎるだろ」

「申し訳ありません……神よ……」

「サインツ達は悪くないよ。

 それとさ、俺のことは、

 〝神〟じゃなくて、〝リック〟って呼んで」

 空気を切り替えるように、颯斗は言った。


 ⸻


「で、残ってる聖女は?」

「千人ほど」

「……世界規模か」

「集められないの?」

「難しいわ。集めるには、

 魔力を出してもらわないと……

 でもそうしたら悪魔にも感知されるわ」

 颯斗は顎に手を当てる。


「……教会にいたんだよね?

 そこに行けば、

 何処に隠れているか分かるんじゃない?」

「ええ……たぶん……」

「なら何とかなる」

 全員が彼を見る。


「那岐神影流の支部が世界中にあってさ、

 悪魔と対峙する時は力を貸すって、

 約束してくれてる」

「具体的には?」

「手分けして教会から保護。

 各支部へ移送。

 そこから――海底神殿へ集結」

「海底神殿? 遠いわよ?

 道中狙われないかと心配ね。

 それに時間もかかる……」

「問題ないよ。

 各支部に俺が2000年前に造った転移装置があるんだ。

 一つだけ、印はあるのに作動しない場所がある」

「……それが?」

「海底神殿だと思う。

 10年後の俺が造ったんだ……たぶんこれを見越して」

 場が静まり返る。


「2000年前に一年も滞在した理由が、

 それなら説明がつく。

 俺は早く戻りたかったはずだ。

 でも戻らなかった。

 ――未来のためだ」

「……」

「とにかく本山に行ってくるよ。

 通信魔道具で各支部幹部を招集する。

 時間はかからない」

 颯斗は振り向く。


「エレーナ達は待っててくれ。

 ――世界を守るぞ」


 その瞳は、もう迷っていなかった。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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