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第50話 今の俺は、あの時の俺じゃない

16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗りくとは、

勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。

自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、

人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。

「あっ!リック!

 あなたどこ行ってたのよ3日も行方不明で!

 どれだけ心配したか……

「ごめんごめん。あの塔でさ……」

「塔?あそこに居たの?

 私達探しに行ったのよ?だけど誰もいなかった……」


「言われてまあ聞いてくれよ。伝説の人に会ったんだ。

 いや……正確には、その人の〝記憶〟?〝記録〟?かな。

 あのさ――」

 言い淀むリックの目は、どこか遠くを見ていた。


「ほ〜、そんな事が……」

 腕を組むジェブ。

「でも、見た目は何も変わっていないな?」

「そんな事ないわよ、ジェブ」

 エレーナがじっとリックを見つめる。


「リックの魔力……前から少し違和感はあったけど、

 今は完全に性質が変わってる……。

 聖魔力に近い……いえ、それ以上かも」

「言われてみれば……これは…… 聖魔力?」

 ジェブが眉をひそめる。

「リック、お前……神にでもなったのか?」

「ははは、まさか。

 何も変わってねーよ。ちょっと威力が増しただけだ」

 軽く指を鳴らす。


「見ろよ――〝ファイヤ〜!〟」

 次の瞬間。


 〝ズガガガガァァァァァァン!!〟

 爆音と共に、遥か彼方の山が炎に呑まれ――

 跡形もなく、消えた。


「あ……あれれ? 山が……」

「あれれじゃないわよ!」

 エレーナが叫ぶ。

「あれがファイヤ!? 何あの威力!? あり得ない!」

「えっと……俺もびっくりなんだけど……

 あの山、里の人いなかったよな……?」

「それは大丈夫だ。こんな時だから皆、里に居る」

「ふ〜……良かった……」

 額に冷や汗を浮かべながらも、リックは拳を見つめる。


「この威力……どこか砂漠にでも行って、

 加減の練習しないとな。

 で、ここの救済は終わったのか?」

「うん、大体ね。いつでも旅立てるわ」

「そっか……いよいよだな」


 ーーーーーーーー


「ここが魔族領との境の街か……」

 城壁の向こうに広がる街並みを見渡す。


「人族と魔族との境なのに、緊張感……全然ないな。

 平和そのものじゃん。

 やっぱ思った通り、魔族と人間、

 この辺りじゃそこまで悪い関係じゃないんだな」

「じゃ、わたしもついていって良い?」

「だ〜め。約束だろ?

 宿を取るから、エレーナはここで待っててくれ」

「どうして? 安全そうじゃない」

「ハイメルに向かってた勇者と魔族……

 様子がおかしかった。

 ドラゴンの時の魔竜と同じ目をしてたんだ。

 何があるかわからない。

 エレーナは予定通りここで待機」

 真剣な目。

 エレーナは、わずかに唇を噛み、頷いた。


 ――――――――


「ようこそ魔族領へ! 身分証見せてくれるかい」

「冒険者カードで良いですか?」

「おお、もちろん――って、こりゃプラチナ!?

 S級か? にいちゃん達すげえな〜!」

「偽物じゃないのかとか言わないんですね?

 人間の街ではよく言われるのに」

「見た目で判断するな、って事だよな〜」

 門番は肩をすくめる。


「魔族はな、ある程度そいつの魔力量とか強さとか、

 オーラみたいなもんを感じ取れるんだ。

 にいちゃん達の凄さはわかるよ。

 悪意も持ってない」

「へぇ……便利ですね。

 見た目で判断しない、か……」

 リックは小さく笑う。


「だから先輩達も……」

「先輩? こっちに知り合いがいるのか?」

「ええ。人族の勇者。

 俺もあの二人と同じ世界から来たんですよ」

「勇者……魔王様の側近の?」

 門番の顔が曇る。

「会いに行くのかい? だったら気をつけろ」

「何かあったんですか?」

「噂だがな……王都、特に王城の様子が妙だって話だ」

「やっぱりか……」

「やっぱり?」

「前に一度見かけたんです。

 声を掛けようとしたけど……様子が変だった。

 しかも悪魔が一緒で」

 門番は周囲を確認し、声を潜める。


「王城が……悪魔に乗っ取られてるんじゃないかって、

 皆心配してる」

「……そうですか。

 ありがとうございます。慎重に動きます」

「それがいい。気をつけろよ」


 ――――――――


「ジェブ。悪い予感、当たってそうだな」

「どうする? 王都で聞き込みか?」

「いや。姿と気配を消して王城に直接入る」

「悪魔がいるかもしれんぞ?

 あの時、圧倒されて動けなかったんだろ?」

 リックは口元を吊り上げた。


「今の俺は、あの時の俺じゃない」

 その言葉に、迷いは無い。

「分かった。姫さんを長く一人にしとけないしな」

「王都は北西二百キロか。

 転移で一気に行く」

「ん?見た事ない場所には飛べないんじゃ?」

「前はな。

 今は心眼で視える場所ならどこでも行ける」

「そんな事まで……」

「ああ。それが古代魔法だ」


 ――――――――


「……城の中、妙に普通じゃないか?」

「しっ。念話で」

(王城が変だって話だったが……

 皆普通に仕事してるぞ?)

(いや……何かおかしい)

(何が?)

(普通ならあるだろ。

 『今日は暑いな〜』とか、

 『帰りに一杯どうだ?』とかさ。

 そういう日常会話が一切ない。

 仕事の会話だけだ。感情が無い)

(……確かに)


 廊下を行き交う者達。

 足音は整然。

 視線は虚ろ。

(気配も妙だな……)

(ああ。個性がない。

 強さも全部同じくらいだ。

 憑依されてるのかもしれない)

(どうする?)

(最上階から順に調べるしか――)

 その時。


(あれ……ワゴンの食事……)

(何だあの質素な……)

(……おにぎりだ)

(は?)

(味噌汁……刺身……

 この世界、魚を生で食わないだろ?)

 リックの目が鋭くなる。


(見つけた。

 あのメイドの後を追うぞ。

 先輩達は、きっとあそこにいる)


 王城の静寂が、重くのしかかる。


 ――嵐の前の、異様な静けさだった。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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