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第5話 世界樹の精霊

16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗りくとは、

勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。

自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、

人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。

「レベルが50あればもう最上級クラス。

 今、この国の剣士の最高は俺の70……

 十分魔王城迄行けるレベルだな」

「レベル50ってそんな?」

「ああ、そう言えば召喚された勇者達も、

 レベルは俺に近い位まで上がったと言われていたな。

 お前がこの世界に来る1年前の事だ。

 今じゃ俺をも超えているかもしれないな……」

「そうなんだ……先輩達が寝返ったって話は聞いたけど、本当の事かな?

 でも、何であの2人は魔王の下についたんだろ?」

「気持ちは分からなくもないさ……」

「えっ?何で?」

「お前もだけど、彼らも、自分の意思とは関係なく勝手に召喚され、

 見知らぬ世界に、連れてこられた訳だ……

 にも拘わらず、特別良い暮らしをさせて貰ってる訳でもなく、

 命懸けで戦わされ、〝よくやった〟の一言位で、心からの感謝もされず……」

「そうなの?」

「大きな声じゃ言えないが、王族、貴族ってのは自分本位で、勝手な奴らだよ。

 俺だって、レベルが上がり、もてはやされて……気付けば良い様に使われた。

 だから、勇者達の気持ちが分からなくもないのさ。

 それで嫌気がさした俺も、大怪我をした事にして冒険者を引退したんだからな」



「なあ、リック。そろそろ旅立っても良い時期だ。

 旅をするにあたって、冒険者登録をするといい。

 身分証にもなるし、色々助けになるはずだ。

 ここから南に行くとサンタリアという小さな街がある。

 まずはそこで、冒険者登録をしよう。

 街までは俺がついて行って、お前の身分を証明してやる。

 登録が済んだらギルドで魔法袋(マジックバック)に入っている魔石を売るんだ。

 相当な金額になるはずだ。路銀には困るまい。

「俺はまだ行かないよ。ここの魔物をもう少し殲滅してからにするよ。

 だってさ、俺が相当数倒したのに、まだまだ魔物が多いじゃない?

 こんなんじゃエイミー達子供が心配だよ……

 だから、もう少し魔物を減らしてからにするよ」

「リック……いいのかそれで?

 お前がここに留まったのは、魔王城に行く為の力を付ける為なんだぞ?」

「構わないよ?俺はここが大好きになったし、

 ここで家族や仲間が出来た。それを守らなきゃ強くなった意味がない……」



「お前は、心根の優しい、そして義理堅い子だな……」

 どこからか声が聞こえて来た。

「ライアン様。人前に出てこられて宜しいんですか?」

「あの耳の長い人は誰なの?」

「この方は、ハイエルフのライアン様だ。

 ライアン様はエルフの村の長でもあり、この地の妖精の長でもある」

「エルフ族?」

「ライアン様、話しても?」

「ああ、その子になら問題ないだろう」

「お前にはまだ話してなかったが、この村の北の奥には、

 認識阻害で隠されたエルフの里があるんだ。

 その奥には高さ100m程の世界樹の幼木ようぼくがある」

「100m?そんなに高い木なのに幼木?」

「成木した世界樹は、天に達する高さだと言われているぞ?

 俺達の村の獣人は此処の、世界樹の幼木とエルフの里を守っているんだよ」


「リクトと言ったか?」

「はい那岐颯斗と言います。村の皆からはリックと呼ばれています」

「では私もリックと呼ばせてもらおう。

 お前はとてつもない魔力量を秘めている。

 何かの拍子に魔力暴走をしないとも限らない。

 私がお前に正しい魔法の使い方を教えよう」


 それから瞬く間に2年近くが経ち、颯斗は18歳になっていた。

 驚く事に、たったの2年で、上位の魔法まで使えるようになっていた。 

 エルフ族でさえ、そのレベルに至るには100年はかかるという。



「リック……世界樹に、会ってみたいか?」

「会う?世界樹を見てみたいか?じゃなく?」

「世界樹には、意思があるからな」

「そうなんですか?それはぜひ会ってみたいです」

「良かろう。お前には会う資格がある……

 いや、会うべき使命があると言った方がいいかもしれない。

 世界樹も、リックに会いたがってるからな……」



「で……でかい……これが世界樹……」

「ハハハ……まだまだ子供だよ」

「酷いじゃない?子供とか……

 私はライアンよりもずっと長く生きているんだから……」

 世界樹の影から10歳位の女の子が顔を出した。


「貴方が、リクト?」

「そう……だけど……君は?」

「この子が世界樹だよ……正確には世界樹の精霊……」

「世界樹の魂って事?」

「まあ、そうだな……」

「貴方が……女神様の……」

「えっ?俺が女神様の?何?」

「…………女神様の、加護を持ってるんでしょ?」

 世界樹の精霊は、言って良いこと悪いこと……慎重に言葉を選んでいるようだ。

「確かに、ステータスにはそう書いてあるけど……何なんですかそれ?」

「女神様が貴方に加護を与えた……そういう事……そのままよ?」

「俺は女神様から、力をもらって、守られているの?

 君……世界樹の精霊は、俺に会いたいって言ってるって聞いたけど、何で?」

「ええ、あなたに会ってみたいというのもあるのだけれど……

 実は貴方にお願いが、2つあるのよ」

「お願い?」

「ええ、1つは……私に名前を付けてほしいの」

「君、名前が無かったの?」

「リック。世界樹は、1000年経たないうちは名付けしてはいけないそうだ」

「えっ、何んで?」

「元々強い力を持って生まれる世界樹……

 幼いうちに更なる強きものに名付けされると、

 力の暴走を起こしてしまう事があるんだそうだ……

 この子はちょうど今1000歳になるそうで、

 お前が来るのを、待っていたんだ」

「待っていた?何で?ライアン様に、名付けてもらった方が良いんじゃない?」

「私より、この子の方が遥かに力が強い。私では、役不足なんだよ」

「だったら、なおさら俺なんかじゃ?」

「レベルだけの話じゃないのよ?貴方の秘めた神聖な力……

 貴方がこの村に来た時から感じていたの」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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