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第44話 天へ昇る魂の灯籠

16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗りくとは、

勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。

自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、

人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。

「……動かないわね?

 これだけ大量の魂……どうしたらいいのかしら?」

 夜風に揺られながら、無数の魂が空を漂っている。

 淡く、頼りなく、まるで行き場を失った灯火のように。


「普通なら、天に帰るはずだよね?」

 颯斗は空を見上げたまま呟く。

 気付けば、空は茜色から群青へと移り変わっていた。

 魂を見守っているうちに、

 いつの間にか日が沈み、夜になっていたのだ。



「何故だろ、

 どうしたら天に帰ってくれるのかしら……」

 エレーナの声は、どこか震えていた。

「やっぱり、何か呪いの様なものに、

 拘束されているみたいだ……」

 颯斗の表情が険しくなる。

「どうしよ……救ってあげたいけど……」

「救ってあげなよ?」

 颯斗は、静かにエレーナを見つめた。

 大聖女の出番じゃないか?

「きっとコレラの時と同じだよ……そんな気がする。

 魂が救われます様にって祈ってみれば?」

「出来るかな?」

 不安そうに、それでも決意を宿した瞳。

「分かった……私やってみるね?

 神様……どうか……この魂をお救いください……」


 組んだ両手から、淡い光が零れ落ちる。

 最初は小さな灯りだった。

 だが――

 光は脈打つように強まり、膨れ上がり、

 ――次の瞬間。

 爆発した様に飛び散り、辺りを埋め尽くした。


 白銀の光が夜空へと解き放たれ、

 森を、空を、世界を包み込む。

 風が止まり、音が消える。

 そして――

 ゆっくりと、光が収束していった。


 ぼんやりと輝く、無数の魂。

 気付けば――2万。

 2万の魂が一斉に夜空へ浮かび上がる。


 ゆらり、ゆらり。

 まるで天へ昇る灯籠の群れ。

 幻想的な光景に、

 森全体が神域のような空気に包まれる。


「……綺麗……」

 魂から伝わるのは……

 安堵……

 感謝……

 解放……


 忙しなく駆け抜けてきた颯斗とエレーナの時間が、

 今だけは優しく、穏やかに流れていた。


 光に包まれたエレーナは、

 まるで降臨した女神のようだった。

「エレーナ……聖女スキル、一気に10になってるぞ?」

「え……?」


 ーーーーーーーー


「皆んな天に帰れた様だね……」

 颯斗は息を吐く。

「さて、俺達はどうしよ?

 野宿するにも、暗くて野営の準備大変だよ?

 どこかに、転移で戻る?」

「……世界樹のところがいい」

 迷いのない答え。

「世界樹の精霊、アンジェさんにお礼を言いたい」

「そう?じゃあそうするか」


 ーーーーーーーー



 世界樹の前。

「ああ、気のせいじゃ無かったのね?

 リック……と……エレーナ……?」

 精霊アンジェが目を細める。


「そう……

 聖女スキルに目覚めたのね……でも何?

 レベル……高すぎない?」

「壮絶な開花だったからね。

 最初から範囲魔法使えたし」

 颯斗は肩を竦める。


「その上、悪魔に拘束されてた魂を、

 2万も解放したら……一気にカンストだ」

「……2万?」

 アンジェの表情が固まる。


「“壮絶な開花〟……もしかして、

 特殊マナの結晶を?」

「ああ。使った。

 あれが無かったらエレーナは危なかった」

 エレーナが深く頭を下げる。

「アンジェさん。本当にありがとうございました。

 おかげで今、こうして生きています」

 アンジェは柔らかく微笑んだ。


「……貴方たち、前とは別物ね。特にリック」

「世界樹の実で再生された身体が、

 ようやく完全に馴染んできたみたいだ」

「オーラが違うわ。圧倒されそうよ?」

「俺も驚いてるよ。レベルは変わってないのに……

 全部の能力が跳ね上がってる感覚なんだ」


 ーーーーーーーー


「世界樹の中で休みなさい」

 アンジェの声は優しい。

「世界樹の中で休んで良いの?」

「貴方達、

 自分では分からないかもしれないけど、

 心身共に、限界よ?

 かなり疲れているようね。

 ここのマナに、満たされて、

 ゆっくりと休んだ方が良いわ」

「うん、ありがとう……」

 エレーナがふっと力を抜く。


 ーーーーーーーー


 夜。

 静寂に包まれる世界樹の内。


(リック……リック……)

「……ん?ジェブ?」

 颯斗は目を開ける。

「……ん?どうした?お前……気配が弱ってるぞ?

 何かあったか?」

(気配?そんなことまで分かるのか?

 ……すまん……リック……

 俺の仲間を助けてくれんか?)

「……何が有ったんだ?

 話を聞くからとにかく一度俺の異空間に戻れよ?」

(いや、今ここを離れる訳にはいかないんだ……)

「一瞬で済む……弱った体を治し、

 すぐ戻ればいいじゃないか。

 とにかく人形になって待ってくれ」

 颯斗は手を掲げる。

「サモン、ジェブ」



「……すまん……リック……」

 光が弾け、ボロボロのジェブが現れる。

「お前、何だその姿……何があったんだ?

 いや、まずは身体を治すのが先だな……

 エレーナ、頼めるか?」

「ええ、もちろん」

「リック、お前が治してくれるんじゃないのか?」

「エレーナは、聖女のスキルが目覚めたんだ。

 俺より、聖魔法はエレーナの方が効果が高いぞ」


 神聖な光がジェブを包む。 

 ジェブの傷が再生されていく。


「……で、急ぎたいのは分かるけど、

 少し落ち着けよ?

 状況が分からないと、助けろって言ったって、

 無策でそこにいって何になる?」

「……確かにそうだな……少し焦っていた……」

 ジェブは小さく息を吐いた。


「リック……お前、なんだそのオーラー。

 まるで別人じゃないか?」

 ジェブが目を見開く。

「ああ、さっきも世界樹の精霊にそういわれたよ。

 でも、その話は後だ……」


 世界樹の奥で、新たな戦いの気配が動き始めていた。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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