第43話 神剣エゼルソード……それがこの剣だ
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「次はルセル公国ね。
そこを抜けるといよいよ魔族領……
どうしたのリック?難しい顔をして」
リックは立ち止まり、ゆっくり目を閉じる。
「なんか変だ……エレーナには聞こえないか?
多くの魂の叫びが」
「私は貴方とは違うもの……
貴方に聞こえても私には――」
その瞬間。
エレーナの胸が、きゅっと締めつけられた。
「……っ、なにこれ……」
風が止まる。
遠くから、かすかな泣き声。
「悲しげな感情……私にも、感じる……」
胸元の聖印が淡く光る。
リックが静かに頷く。
「やっぱりな。
エレーナは予言の大聖女なんだと思う。
だからあんな広範囲魔法が使えるし、
今も魂の叫びを拾えてる」
「ちょっとピンとこないと言うか、実感ないわ。
他人事のような……」
「聖女って、清い身体じゃなきゃダメとかないよな?」
「そこ!?」
思わず肩を叩く。
「伝説の大聖女にだって子孫が居るって言ってたでしょ?」
「あ、言ってた」
「……それより。
この魂の叫び、放っておけない」
さっきまで戸惑っていた瞳が、強くなる。
リックは少しだけ驚いたように彼女を見る。
「西に50km位だな……行ってみよう」
「ええ。
もし魂が囚われているなら――解放してあげたい」
その声に、迷いはなかった。
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「おい、早くしろ!」
「大丈夫ですよ。予定してたより、
ずっと少ないですから……
夜迄には終わりますよ」
荒野の窪地。
そこには――
黒い瞳を持つ8体の存在。
足元には、薄く青白く光る球体が無数に浮いている。
「もしかして……あの黒い目…… あれ、悪魔よね?」
「ああ、あの魔力の気配は……間違いなく悪魔だな……」
「それに……何あれ?あいつら一体何を集めているの?」
「……あそこから叫びが聞こえる……集めているのは……
あの薄く光っている球は魂なんじゃないか?」
空気が震えている。
悲鳴のような、か細い叫び。
「こんな数の魂って……もしかして、
今回の流行病で、亡くなった人達?」
「アンディー王子は約2万人と言っていた。
数は一致するな……」
「魂を集めてどうするつもりかしら?」
「分からない。だけど――
魂は本来、行くべき場所へ還るはずだ。
今は、それが出来ずに泣いている」
エレーナの拳が震える。
「……あのコレラ。
ただの菌じゃなかったのかもしれない。
魂を拘束する何かを混ぜた……とか」
リックは小さく頷く。
「あり得るな」
エレーナは一歩踏み出す。
「魂は行くべき場所へ帰るべきよ。
こんな風に閉じ込められるなんて……」
その瞳には、
怒りよりも強い“慈しみ〟が宿っていた。
リックが前に出る。
「ちょっと行って倒してくる」
ふっと微笑む。
「待って。悪魔が8人よ?大丈夫?凄く高レベルなんでしょ?」
「見過ごせない」
振り返らないまま、告げる。
リックは小さく息を吐いた。
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「お前達、それは人の魂なんだろ?
集めてどうするんだ?」
「い、いつの間に……誰なんだ貴様は?」
「質問してるのは、俺だ」
空気が、凍る。
「答えろ」
「ふざけるな!人間如きが!」
「答える気はないか……だったら……仕方ない……
魂をお前達に渡すわけにはいかない」
〝ザンッ!ザンッ!ザンッ!ズシャッ!ズシャッ……〟
閃光のような斬撃。
悪魔の身体が裂け――消えていく。
再生はしない。
「お……お前、何者だ?」
「またそれか?」
リックは剣を構える。
「俺の質問に答えもしないで」
「そのスピード……人間のものではない……
我らの身体は、実態がある様で実態がない……
いくら斬られても再生する……
いや、斬られた様に見えても、
実際は斬られていないから、
元の見かけに戻ると言った方が良いか?
なのに何故戻らずに消えていく?
何なのだ、お前とそれを可能にするその剣は?」
「一つ位答えてやろうか?
遥か昔、勇者エリシオンが、お前達悪魔と戦い、
悪魔を退けた神剣エゼルソード……それがこの剣だ」
銀の刃が、微かに震えた。
「エゼルソード……聞いた事がある……
だが何故そんな剣が…………
それは、我ら悪魔によって、封印されたはず……」
「封印? それは知らないな」
悪魔は舌打ちする。
「お前も少し位答えたらどうだ?」
「この魂をどうするか……か?
そもそも、魂は、我々悪魔の糧となる。
魂を吸収して力を付けるのだ……
他に何があると思うのだ?」
「コレラは、お前達の仕業か?
普通はこんな風に、
魂を一度に大量に集める事は出来ないだろ?」
「そうか?俺にはよく分からんな?」
「そうか……まあ良いや……
お前達が異空間にしまった魂を、
そこに出して帰るなら、見逃してやる」
「………………」
沈黙。
「力ずくでも良いんだが?
力の差は、理解しているんじゃないか?」
「そこまでだ」
エレーナの首に黒い腕が絡む。
「この女がどうなっても良いのか?」
「……ごめんなさい、リック……」
悪魔が笑う。
「クックック……形勢逆転――」
〝ザンッ〟
音より早く。
悪魔の身体が両断される。
エレーナを拘束していた2体も、瞬時に消滅する。
静寂がおとずれた。
風だけが吹いている。
エレーナが目を見開く。
「……一瞬で……
リック、前より速くない?」
「世界樹の実のおかげかもな」
剣を収めながら答える。
「細胞が再生してから、日に日に馴染んでる。
多分――」
少しだけ笑う。
「今まで本来の力の2割も出せてなかった」
エレーナは息を呑む。
「……2割?」
遠くで、魂の光が揺れている。
「残りは……魂の解放だな」
リックは、静かに空を見上げた。
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