第4話 颯斗の過去
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「颯斗……おまえ、どうしても出場するというのか?」
「全国選手権ですか?予選通過しましたし、出ますよ?
なぜ出てはいけないのですか?」
「まだ早いと言っている。
今のお前の剣では、那岐神影流の名を汚しかねん」
「そうでしょうか?このところ、うちの道場で手合わせして、
誰にも負けたことがありませんが?」
「うぬぼれるな。お前の剣技などまだまだ」
「そういう貴方は、俺と剣すら交えようとしない。
俺は自分の実力を知りたいのです。
今の自分の力量を測るには、大会に出るしかないでしょう。
貴方は20年連続の日本一。
大会に出れば、どこかの段階で、貴方とも戦えるでしょう」
「どうしてもと言うのなら、お前は破門。家からも出て行くが良い」
「……そうですか……分かりました。
家から出るということは、もう親でもない子でもないと言うことですよね?」
「……そうなるな……」
「今まで育てていただきありがとうございました。大会でお会いしましょう……」
「これで良かったのですか?総師範……」
「……ああ……仕方ない」
「ですが、いくら颯斗君……若が強いとは言え、
総師範の域にはまだありませんよ?」
「知っているだろ?私は颯斗に打ち込めんのだよ」
「若があまりに亡くなった奥様……アステリア様に似ておられるので、
どうしても打ち込めないのでしょうか?」
「一度、颯斗に怪我をさせてしまった事も有り、
私のトラウマになっているのもそうなのだが……
颯斗のオーラみたいなものが見えると、
なぜだか手を上げることすら出来んのだ……」
「そういえば、以前その様なものが見えるとおっしゃっていましたね」
「アステリアのオーラも驚くほど強かったが、
颯斗のそれは、彼女をも上回るものだった……
畏怖の念を抱くほどな……」
「しかしアステリア様……奥様は……それに総師範……
貴方とて、およそ人とは思えない領域……
私から見たら……貴方は、もはや神の領域にすら思えます……」
「で……結局、決勝戦まで、俺たち親子は残ったのですが、父は決勝を棄権……
世間からは、俺が優勝を譲られたと言われました」
「家から追い出されて、どうやって生活していたんだ?」
「学校に通っていたのですが……学校は、特待生で入学していたので、
学費も寮費も免除でしたし、大会の優勝賞金もあったので……
何とか学校には、卒業まで、居られるはずでした」
「ふ~ん……そんな事が……
俺は、事情が分からんから、何も言えないな……」
「……ですよね……」
「よし、その話はもう終わり。そうだな……お前はまずは、
その剣の重さと大きさに慣れる必要がありそうだな?
この村の周りの魔物は、そう強いものは居ない。
今のお前でも十分に戦えるはずだから、
その剣に慣れるまで、ひたすら倒してこい。
夕方からは俺と稽古だ。暗くなる前には帰ってこい。
暫くはその繰り返しだ」
「……了解です。早速行ってきます」
「おいおい、そう急ぐなよ。まずは飯を食ってからにしろ。
それと、その剣は訓練用で、刃が潰れている。
家に戻ったら別の剣をお前にやるから、それで戦え」
「これ本当に頂いて良いんですか?使っていない剣とは言ってましたが、
なんか綺麗な模様が入って凄く高そうな剣ですが?」
「ああ構わない。俺にはこのS級冒険者になった時、
ギルドから記念に貰った剣があるからな。
それと、これもやるから持っていけ。魔法袋……魔道具だ。
見た目は小さな布袋だが、魔法が施されていて、中には家1軒くらいのものが入るぞ。
魔物を倒すと、金に換えられる貴重な部位が取れる。
詳しい部位などは飯を食いながら教える。
それと魔物は、身体の中に必ず魔石を持っているから、
忘れずにそれも魔法袋マジックバックに収納するんだ。
魔石も金に換えられるぞ?
まあ、この近辺の魔物は大した金にはならんがな……」
その日から、ひたすら魔物退治とオスカーとの訓練に明け暮れ、
筋力も付き、次第に重い剣にも慣れた。
驚く事に、半年で50までステータスのレベルは上がるのだった。
「すごい子よね?リックは。才能のある人でもレベル50を超えるのには、
血の滲む努力の上、数十年掛かると言われているんでしょ?
30半ばの貴方が、その歳でレベル70って言うのが、異例だと言われていたけど、
それを遥かに凌ぐ……いったいあの子はどうなってるのかしら?」
「勇者でないとしても、召喚された者のスキルなのかもな?
あいつはスキルをいくつも持っている様だ。
普通、神様から授かるスキルは貰えたとしても1つなんだが、
勇者はいくつものスキルを持つと言うからな……
本人は偶然巻き込まれたと言っているが……」
「魔力量も、相当な量なんでしょ?」
「だと思うぞ。戦うと体力とは違う感覚のものが身体から抜ける感じがするらしいから、
魔力を使って身体強化とか自然にしてる様だな。
リックが戦ってる時、薄っすら光を放ち、髪と目が薄ら銀色に輝きやがる。
だが、この村には魔法を使える者はいないから、
魔法は教えられない……残念だがな」
「魔法が使えると、旅をするのにも便利なんだけどね。
ライアン様に……それは……無理かしらね」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




