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第4話 颯斗の過去

16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗りくとは、

勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。

自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、

人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。

「颯斗……おまえ、どうしても出場するというのか?」

 道場の中央。

 夕陽が差し込む畳の上で、父は静かに言った。

「全国選手権ですか?予選通過しましたし、出ますよ?」

 迷いのない声。

「なぜ出てはいけないのですか?」

「まだ早いと言っている」

 低く、重い声。

「今のお前の剣では、那岐神影流の名を汚しかねん」

「そうでしょうか?」

 颯斗はまっすぐ父を見る。

「このところ、道場で誰にも負けていませんが?」

「うぬぼれるな」 空気が張り詰める。

「お前の剣技などまだまだ」

「そういう貴方は、俺と剣すら交えようとしない。

 俺は自分の実力を知りたいのです。

 今の自分の力量を測るには、

 大会に出るしかないでしょう?

 貴方は20年連続の日本一。

 大会に出れば、どこかで必ず当たる」」

「どうしてもと言うのなら、お前は破門。

 家からも出て行くがいい」

 颯斗の胸が、わずかに痛んだ。

 だが、表情は崩さない。

「……そうですか……分かりました。

 家から出るということは、

 もう親でもない子でもないと言うことですよね?」

「……そうなるな……」

「今まで育てていただきありがとうございました」

 一礼。

「大会でお会いしましょう……」

 背を向ける颯斗。

 父は、何も言わなかった。



 ーーーー


「これで良かったのですか?総師範……」

「……ああ……仕方ない」

「ですが、いくら颯斗君……若が強いとは言え、

 総師範の域にはまだありませんよ?」

 父は目を閉じる。

「知っているだろ?私は颯斗に打ち込めんのだ」

「若があまりに亡くなった奥様……

 アステリア様に似ておられるので、

 どうしても打ち込めないのでしょうか?」

「それもある……しかし……」

 拳を握る。

「一度、怪我をさせたことがある。

 あれが……今でも離れん」

 静かな震え。

「トラウマですか?」

「だがそれ以上に――」

 視線が遠くを見つめる。

「颯斗から放たれる〝何か〟がある」

「何か……?」

「オーラ、とでも言うべきか……」

 息を吐く。

「アステリアのそれも強かった。

 だが、颯斗は……彼女をも遥かに上回る。

 畏怖の念を抱くほどのそれが見えると、

 なぜだか手を上げることすら出来んのだ……」

「しかしアステリア様……奥様は……

 それに総師範……貴方とて、

 およそ人とは思えない領域……

 私から見たら……

 貴方は、もはや神の領域にすら思えます……」


 ーーーーーーーーー


「で……結局、

 決勝戦まで俺たち親子は残ったのですが、

 父は決勝を棄権……

 世間からは、俺が優勝を譲られたと言われました」

「家から追い出されて、どうやって生活していたんだ?」

「学校に通っていたのですが……

 学校は、特待生で入学していたので、

 学費も寮費も免除でしたし、

 大会の優勝賞金もあったので……

 学校には、卒業まで、居られるはずでした」


「ふ~ん……そんな事が……

 俺は、事情が分からんから、何も言えないな……」

「……ですよね……」

「よし、その話はもう終わり。

 そうだな……お前はまずは、

 その剣の重さと大きさに慣れる必要がありそうだな?

 この村の周りの魔物は、そう強いものは居ない。

 今のお前でも十分に戦えるはずだから、

 その剣に慣れるまで、ひたすら倒してこい。

 夕方からは俺と稽古だ。

 暗くなる前には帰ってこい。

 暫くはその繰り返しだ」

「……了解です。早速行ってきます」

「待て待て」

 肩を掴む。

「まずは飯だ。それと――」

 剣を差し出す。

「その剣は訓練用で、刃が潰れている。

 この剣をお前にやるから、それで戦え」

「これ本当に頂いて良いんですか?

 使っていない剣とは言ってましたが、

 なんか綺麗な模様が入って、

 凄く高そうな剣ですが?」

「ああ構わない。俺にはこのS級冒険者になった時、

 ギルドから記念に貰った剣があるからな」

 さらに小袋を投げる。

魔法袋マジックバッグだ。

 これもやるから持っていけ。

 見た目は小さな布袋だが、

 魔法が施されていて、

 中には家1軒くらいのものが入る」

「……は?」

「魔物の貴重部位と魔石は必ず回収しろ。金になる」

 にやりと笑う。

「詳しい部位などは飯を食いながら教える。

 まあ、この近辺の魔物は、

 大した金にはならんがな……」



 その日から、ひたすら魔物退治と、

 オスカーとの訓練に明け暮れ、

 筋力は目に見えて付き、

 やがて重い剣も違和感なく振り回せるようになる。

 驚くべきことに、

 半年で50までステータスのレベルは上がるのだった。


「すごい子よね?リックは。

 才能のある人でもレベル50を超えるのには、

 血の滲む努力の上、

 数十年掛かると言われているんでしょ?

 30半ばでレベル七十の貴方ですら異例なのに……

 それを、遥かに凌ぐなんて……

  いったいあの子はどうなってるのかしら?」

 オスカーは腕を組む。

「勇者でないとしても、

 召喚された者のスキルなのかもな?

 あいつはスキルをいくつも持っている様だ。

 普通、神様から授かるスキルは、

 貰えたとしても1つなんだが、

 勇者はいくつものスキルを持つと言うからな……

 本人は偶然巻き込まれたと言っているが……」

「魔力量も、相当な量なんでしょ?」

「だと思うぞ。

 戦うと、体力とは別の何かが抜ける感覚があるらしい。

 無意識に身体強化してるんだろう」

「光るのよね?」

「ああ」

 目を細める。

「薄く銀に輝く」

「それが魔力?」

「だが、この村には魔法を使える者はいないから、

 魔法は教えられない……残念だがな」

「魔法が使えると、旅をするのにも便利なんだけどね。

 ライアン様に……それは……無理かしらね」


 その頃、森の奥では、

 いつものように銀色の光が、静かに瞬いていた。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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