第39話 コロリ
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「皆様、大変申し訳ありませんが……
キャペル王国に入港出来なくなりました。
このまま引き返す事になります」
〝ガヤガヤガヤ……〟
「何か、あったのですか?」
「5 日前から流行病が発生したそうです。死者も多数出ており、
現在、入国は非常に危険だとの判断が下されました」
「たった5日で、死者が多数?
そんな恐ろしい病気……あり得るのかしら?」
「それにしても困ったわね……どうする?」
「一旦戻るしかないんじゃないかな。
俺の魔法も流行病には効かないし……
この場所は覚えたから、次は転移魔法で来れるから……」
「……ちょっと見て、あんな小さな子が苦しんでる……」
港のすぐ横の桟橋で、一組の親子が倒れていた。
腹を押さえ、苦悶の表情を浮かべながら、必死に呼吸を続けている。
だが……ほんの数分で、親子は動かなくなった。
「酷い……あちこちで、人が倒れているわ……」
「………………」
「どうしたの?リック?」
「あの人達のステータスを見たけど、
〝流行病〟としかわからないな……」
「助ける方法はないのかしら?」
「分からないな。アンジェからもらった、何にでも効く薬はあるけど……」
「だったら、あの小さい子を……!」
「あの親子のステータスは、すでに〝死亡〟となっている……
手遅れだよ……」
視線を巡らせる。
子供も、大人も、老人も――至る所で倒れている。
「……どうなっているんだ……?」
「あっあそこの子供達……! まだ息があるみたい!
助けてあげて!」
「……この薬は……一つしかないんだ……助ける子供を選べないよ……
それにこれは、今は使えない」
「どうして?」
「これは……エレーナ用だから……」
「私病気になんてかかっていないわよ?なんで私用?
もし、流行病に掛かったとしても、その薬で自分1人だけ助かるなんて……」
「別に、エレーナが病気になったときの保険だから、
薬を使えない訳じゃないんだ……」
「だったら何故……」
「ちょっと待って……その事は後でちゃんと話すから……
今は少し、他の病人のステータスを調べさせて……」
「何かわかった?」
「みんな、下痢と嘔吐で、脱水症状の様だ……
俺の元いた世界の病気に似てる気がする」
「それは?」
「俺も……医学の専門知識があるわけじゃない。
テレビドラマとかで見ただけだから、
詳しくはないんだけど……」
「〝テレビドラマ〟?」
「あ~……元いた世界の娯楽みたいなもの。
簡単には説明できないな……
ただ、〝コロリ〟……じゃなかった……〝コレラ〟
って言う病気に似てるなって思う」
「〝コロリ〟?それは?どんな病気なの?貴方に治せる?」
「〝コロリ〟……じゃなくて……〝コレラ〟な。
昔は数日でコロリって死んじゃうからそう呼ばれていたらしい。
ある薬で治せるはずだけど……この世界には存在しないんだろうな……
今の俺じゃ助けることはできない。
でも、流行病の広がりを抑える事は出来るかもしれない」
「どうすれば良いの?」
「個人では無理があるな……国が動かなきゃダメかも?
それにコレラかどうかも確証はない」
「とにかく、このままじゃどうにもならないから、
この国の重鎮に、貴方の考えを話してみてくれない?」
「それは良いけど……重鎮って……どうやって会うんだ?」
「私、ここの国王陛下に、何度か会ったことあるから、
謁見を求めてみるわ」
「国王陛下ね……流石、超大国のガードナー王国だな……」
「だから~!私は、ガードナー王国第一王女エレーナ・ガードナーなの!
ヘンリー王に取り次いでって言ってるの!」
遥か遠くに見えた王城まで転移魔法で移動した2人。
「この忙しい時に、これ以上邪魔をすると、ただではすまんぞ?」
「わからない人ね~」
「エレーナ。強行突破するか?」
「貴方、やりすぎるからだめよ?」
「いや、城内まで転移魔法で行っちゃえばよくね?」
その時、城門から入ろうとしていた馬車の窓から声がかかった。
「あの……もしや、エレーナ姫ですか?」
「えっ?どなた?あ、貴方は、アンディー王子!」
「はいそうです。やはり貴方はエレーナ姫ですよね?
如何されました?キャンベルへは、いつ?
今この辺りを歩くのは危険ですよ」
「港に着いたのは先程です。
まさかキャペル王国がこの様な状況になっているとは知らず……」
「こちらは?あっ!もしや……那岐先生ではありませんか?」
「なんで俺の事を?」
「私の部屋には先生の肖像画があります。
私も、那岐神影流の門下生なのです。
スーリア本山の話は、直ぐに伝わってまいりました」
「アンディー王子。流行病の件でお話が……
ヘンリー王に取り次ぎ頂けませんか?」
「流行病の件ですか?何かご存じなのですか?」
「彼に心当たりがある様で……
一度聞いて頂ければと思うのですが?」
「……分かりました。こちらへどうぞ」
「これはこれは、エレーナ姫。ようこそおいでくださいました……
と言いたいところですが、この様な状況ですので……
何もおもてなしも出来ませんが……」
「はい、それどころではない事は承知しております。
流行病の件でこの人からお話が……」
「この方は?」
「私の主人…… いだだだだ!?い、痛い!痛いってば!」
今度はほっぺたをつねられ、情けない声を上げるエレーナ。
「父上、こちらの方は、那岐神影流の創始者、那岐颯斗先生です」
「……ほう。
先日、お前が興奮して話していた人物というのは、この方か?」
「そうです。そうです。先生にかかったら、
ここの護衛兵100人が3秒で全滅します」
「……それは、さすがに話が盛りすぎではないか?」
「大げさではありません!実力No1と言われるアレックス師範を、
一歩も動かず、剣をその身に掠らせもしなかったとの事です」
「アレックス師範と言えば、一騎当千と言われてる剣士では?」
「その通りです!
これで、那岐先生の凄さがお分かりいただけましたか?」
「……なるほど。
すると、その……エレーナ姫の?」
「私の、将来の主人です」
「婚約されて?」
「はい、そうです」
「そうですか……で、流行病の件とは?」
「父上、今城に居る主だった者をお集め下さい。
歩きながら少し話を聞きましたが……
非常に重要な内容だと思われます」
「そうか……分かった。宰相、皆を集めよ」
「承知いたしました。
皆、現在対応に追われておりますゆえ、
1時間ほどお時間をいただきたく存じます。
1時間後、会議室にて……」
「陛下。今城内に患者は居りますか?」
「ああ、居るが?」
「神に与えられた神眼で、少し診させていただきたいのですが」
「……那岐先生。
実は、私の三歳になる息子が……」
「えっ!?ジェイミーが!?」
「そう言えば、エレーナ姫は、ジェイミーにあった事がありましたね。
あの子はエレーナ姫にとても懐いていました」
「会わせていただいても?」
「もちろんです。こちらへ……」
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