第36話 世界樹の精霊アンジェ
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「貴方が、ライアンの弟子……今のライアンのことはわかりませんが、
ここに居た頃のライアンよりも、貴方の方が遥かに魔力量が多い……
流石に、女神様の……」
「ん?女神様の?」
「……女神様の加護をお持ちなのでしょう?」
「よく分かりませんが、ステータスには、その様に……」
「自己紹介が遅れましたが、私はここ、エルフの里の長。
ライアンの兄、ジュリアスと申します」
「如月颯斗です。こちらは……」
「ガードナー王国第一王女エレーナ様ですね?」
「……エレーナ・ガードナーと申します。
ジュリアス様は、なぜ私達の事を?」
「迷いの森に誰かが入るとすぐに分かるようになっております。
お2人のことはその時から神眼で見ておりました。
同胞が失礼いたしました」
「あなたも神眼をお持ちなんですね」
「颯斗殿の、神眼には遠く及びませんが、
私も、女神様の加護で、神眼が使えるのです」
「俺のは、龍神様に貰ったスキルですけどね」
「颯斗殿は……」
「良かったら、ライアン様と同じ様に、リックとお呼びください。
それと、俺みたいな若造に敬語も不要ですよ……」
「ライアンも、その様に?」
「もちろんです」
「だったら、リック……
君のその目は、元々女神様の神眼を宿していたはずだよ。
そこに龍神の力が重なった。
鍛えれば見えぬものは、なくなる……はず……」
「じ~~……」
「どこ見てるのよ!」
「残念ながら、今は未だ、見えないものが有るようで……」
〝パッコ~ン!〟
「いとゎ~い……
俺はエレーナの健康状態を確認しようとしただけなのに……」
「ウソ……そのたれ下がった目が、ウソだと言ってる……」
「まさか……エレーナにも、神眼が?」
「言ってろ……」
「さて……早速、世界樹の元へ……と、思っているだろうが……」
ジュリアスは、遠くそびえる大樹を見上げる。
「世界樹があまりにも大きすぎて、近くに見えると思うが……
実はまだここから20km程もあるんだ。
残念だろうが、もう直ぐ日が暮れる時間だから、
今日は、エルフの里で、体を休めるといい」
「まだそんなに距離があるのですか?
今日中には、着けると思ってたんですが……
わかりました。エレーナもいますし、お言葉に甘えさせていただきます」
「あ~美味しい……リック、この料理、美味しいだけじゃなく、
身体の疲れが抜けていくみたいじゃない?」
「良くお分かりですね?さすが、ガードナー王国第一王女であらせられる。
私共エルフは、肉を食べませんので、こんな物しかお出し出来ませんが……
質素ではありますが体を癒すには最適な食事です。ご勘弁ください」
「とんでもない、本当に美味しいですよ?それに懐かしい味です。
俺が居た世界の日本という国は、昔やはり肉はあまり食べられず、
この様な食事をしていて、長寿の人も多く居ました。
こういう食事は身体にはいいのでしょうね?」
「お姉ちゃん、今日は私の部屋で一緒に寝よ?」
「だめよ。私と寝るの!」
「「「「私と私と」」」」
「は~い!はい!俺も俺も~!」
「お兄ちゃんは、男だからダメよ!」
「な、なんですと~~!」
「す……凄い涙の量……」
「ハハハ……リック。エレーナ様取られちゃったな」
「ハハハ、まあいいです。一緒に寝ると寝不足になるので」
「ん?朝までか?さすが若いな……いや、旅の途中だものな……
おめでたってのも困るから、もしやお預けか……」
「生殺しってやつです……」
「ハハハ、そいつは、辛いかもな?ご愁傷様……」
「うわ~~。何だこれ?幹の周り一周、3kmくらいあるんじゃないですか?」
「正解。大体その位だな。高さは私にも見当がつかない。
上は、大概雲の上だからな……」
「世界樹の幼木を見て大きくて驚いたけど、
ここの世界樹とは、比べ物にならない。
やっぱり、ここの世界樹は別格だな」
「あの子は、元気なのかしら?」
陰から美しい女性が出てきた。
「貴方は、世界樹の精霊ですね?」
「あら?一目でよくわかったわね?私の名はアンジェ。よろしくね」
「ピンク寄りの薄紫の髪……彼女と貴方は雰囲気そっくりですよ?
貴方は大人の姿ですけど……
そうそう……彼女……ライラは元気ですよ」
「ライラ?貴方が名付けてくれたのね。
私の名付け親は女神のソフィア様……
あの子、ライラ?……が元気なら何よりよ」
「今のところは……ですけど」
「今のところ?……ああ、あなた……あそこの王家が、
禁術とされている魔道具まで使い、
躍起になってあの子を探していたことを心配してるのね?
でも……あの国……召喚してはいけないものを召喚して……」
「えっ?俺の事ですか?」
「いやだ貴方じゃないわよ?そもそも、
貴方を召喚したのは、彼らじゃないもの……」
「えっ?奴らじゃないのですか?初耳なんですけど……」
「あら?知らなかった?言っちゃだめだったかしら……忘れてくれる?」
「なんかすごく大事な……」
「そのうちわかると思うから……ねっ」
「……まあいいか……召喚したのが誰でも……
こっちに来ていいこと、楽しいこといっぱいだから、
むしろ感謝しても良いくらいだしな……
でもなんで貴方がそんなこと知ってるんです?」
「ある方から聞いたんだけどそれは秘密……」
「じゃあ、召喚してはいけないものって……まさか先輩達勇者?」
「それも違うわよ?」
「違う?じゃあ誰?あの時、他に召喚された人はいないと思うんだけど。
召喚出来るのは100年に一度なんですよね?」
「異世界召喚はね」
「?」
「彼らが召喚したのは、この世界のものよ。
それによって、王都は壊滅状態よ」
「壊滅?あの時の事でしょうか?
悪魔に憑依された魔族が向かっていた時?」
「ああ、多分その時ね」
「ですが、心眼で見ていましたが、一瞬の事で、
すぐに魔族の気配が消えたのですが?」
「その時は、まだ神眼を使いこなせていなかったんじゃない?
あの、一瞬で王都は破壊されたのよ?今はまるで焼け野原」
「そうなんだ……すぐに魔族の気配が消えたので、
安心してその後はよく見てなかったですね。
一体何を召喚して王都を破壊されたのですか?」
「悪魔よ。それもとんでもない上位の悪魔……
詳しくは私にも分からないけど」
「悪魔か……何でまたそんなものを?」
「大方、勇者に逃げられ、貴方に振られ……
魔族に対抗するために大きな力を手に入れようとしたんじゃないかしらね。
そんなもの、人が制御出来るわけないのに……
「そうか……自らが召喚した悪魔に、王都を破壊されたのか……」
「制御不能の力に頼った報いよ。
巻き添えになった国民が気の毒よ……
でも少なくとも、アリオス村やエルフの里を
心配する必要は、もうなくなったわ」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




