表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/61

第33話 10年後のお前だ

16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗りくとは、

勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。

自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、

人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。

 ―那岐颯斗殿―

 俺の名前は、那岐颯斗。……10年後のお前だ。

 ん?2000年前じゃないのかって?まあそう思うよな?

 俺は、お前がこれを読む10年後に、

 2000年ほど過去にタイムトラベルしたんだ。

 タイムトラベル? どうやって?

 本当に10年後の俺かって? 10年前の俺もそう思ったよ。

 そうだな……証明になるか分からないが……

 お前、エレーナの匂いが大好きだろ。どうだ?

 ……信じたか?

 本当は、この先のことを色々と教えてやりたい。

 だが、それはできない。


 未来を知ることで、お前の行動が変わり、

 結果として、未来そのものを変えてしまう恐れがあるからだ。

 ただ一つだけ。

 どうしても伝えておかなくてはならないことがある。

 俺はそのことをこの手紙で知り、行動し、その結果として、今ここにいる。

 颯斗。女神様に言われていると思うが、

 魔族領を目指す前に、まず世界樹を探せ。そして、そこへ行け。

 世界樹の場所を知っているのは、ライアン様だけ。

 しかも、認識阻害の結界で守られている。

 どうやって探す?そう思うよな。

 だが、お前ならできる。一つだけ、ヒントをやろう。

 今すぐ、この建物の屋上へ行って索敵してみろ。

 そのあとは、お前の思うままに……健闘を祈る。

 ―10年後の那岐颯斗―



「……何て書いてあるの? この文字。さっぱり読めないわ」

 手紙を覗き込んで、エレーナが首を傾げる。

「俺の元いた世界の言葉だよ。日本語って言うんだけどね」

「にほん……?」

「簡単に言うと――

 那岐神影流の創始者は、10年後の俺らしい」

「……え?」

「それと、魔族領へ行く前に、まず世界樹を探して、そこへ行けってさ」

「世界樹……ね。で、その場所は?」

「書いてない。

 知りすぎると、行動が変わって未来が変わるから……だって」

 正直、胡散臭い。

 でも――妙に納得できる部分もあった。


「ジェイクさん。ここの屋上、行ってもいいですか?」

「構いませんが……そこで、何を?」

「世界樹を索敵しろって。

 “お前ならできる”って……」


「……どうですか?」

 ジェイクさんの問いに、俺は無言で首を横に振った。

「索敵しろって言われたけど、何も引っかかりませんね……

 世界樹ですよ?相当デカいはずなんですけど」

 肉眼で見渡しても、見えるのは澄み切った青空だけ。


「……次は、神眼か」

 切り替えてみたが――結果は同じ。

「神眼でも何も見えないな……

 めちゃくちゃいい天気で、雲一つ……」

 そこで、ふと気付く。

「あ……いや……あの辺だけ、うっすら雲がある?」

「え? 雲なんて、どこにもないわよ?」

「あそこだよ。あの山の向こう――

 ……あれ? 神眼を切ると、完全に青空だな。

 ジェイクさん。あの山脈には何が?」

「あそこは……地磁気が乱れていて、“迷いの森”と呼ばれています。

 入ると方向感覚を失い、

 いつの間にか元の場所へ戻ってしまう、と……」


 もう一度、神眼を使う。

「だんだん、見えてきました。

 雲を突き抜けるくらい……いや、雲に見せかけてるだけか。

 とんでもなく高い木が……ぼんやりですけど」

「私には何も……あそこに、世界樹が?」

「多分」

 問題は――そこへ辿り着く方法だ。

「……しかし、どうやったら迷いの森を抜け、辿り着けるのでしょう……」

「分かりません。でも――」

 俺は、空の向こうを見つめる。

「10年後の俺は、行けた。

 だったら、今の俺も……行けるはずです」



「リクト殿。もう出立なさるのですか?」

「ええ。まずは、世界樹を目指せとのことなので」

「でしたら――少しだけ、お時間を。

 せっかくの機会です。ぜひ、一手お願いできませんか?

 伝説の創始者と立ち合える機会など、そうそうありませんから……」


「そうですか? 構いませんが……

 同じ那岐神影流相手に手合わせするのは、3年以上ぶりですね。

 この世界の那岐神影流は見たことありませんが、

 俺が元の世界の那岐神影流を、

 この世界に合わせて使っている今の俺の剣が、

 貴方方の那岐神影流によく似ていると言われたことがあります」

 正直、興味はあった。

「せっかくです。ぜひ、お願いします」


「あの若者が、創始者……?」

「肖像画に似ているのは確かだが……」

「ハイメル王国の姫の婚約者らしいぞ」

「人の限界を超えている、って噂の……?」

 ざわつく空気。

「……信じられるか?」



「あの……ジェイクさんだけでは?」

「申し訳ありません。この者たちは、この者たちは、ここの指導者でして。

 どうしても、と…… 」

「まあ……そうでしょうね……

 こんな若造が、創始者だと言われれば、あまりいい気はしませんよね……」

「いえ、そういう意味では……

 そもそも貴方のことを疑っている者は一人もおりません。

 立ち姿だけで、実力が伝わりますから」

「分かりました……では、あの方々全員と……

 そこまで急ぐこともありませんし……

 何せ向こうで、エレーナが、

 皆さんと手合わせいただき……嬉々としていますから……

 あれだと、当分出発できそうにありませんから……」

「姫様の剣凄まじいですね。うちの練習生では、姫様に太刀打ちできません。

 素晴らしい剣技とスピードです」

「彼女は、双剣のスキルがあると言われていますが、

 総師範から見て、どう思いますか?」

「そうですね……確かに双剣のスキルをお持ちなのでしょう。

 ただ何か……完全には噛み合っていないような……

 姫様に“最適”とは言い切れない……」

「……やっぱり、そう見えますか」

 颯斗も、同じ違和感を感じていた。


「それでは、私から手合わせをお願い致します」

 那岐神影流No.2の実力と言われているアレックスが、一歩前に出る。


「いきなり、去年の世界大会優勝者のアレックス師範か?

 創始者だっていうけど、あの若さで、

 アレックス師範の相手になるんだろうか?」

「でも、先生方の顔を見てみろよ。みんな、目を輝かせているぞ」

「確かに……それにしても……う〜ん? 創始者って……

 2000年前だぞ? 那岐新陰流が立ち上がったのは……

 一体、どういうことなんだ?

 俺には、何が何だか、さっぱり分からない……」

 誰もが混乱する中――

 颯斗は、静かに剣を構えた。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ