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第32話 那岐神影流本山

16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗りくとは、

勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。

自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、

人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。

「何それ?神殿でもらってきたの?石?……じゃないわね……」

 エレーナは颯斗の手にある物体を覗き込み、首を傾げた。

「燻んでいるけど、これでも魔石なの?」

 さらに目を凝らしたエレーナが、ふと気づいたように言う。

「あら?……でもよく見たら、これって貴方の剣そっくりの色をしていない?」

「ああ…… 確かに……そう言えばそうだね……

 既視感あるなと思ってたけどそれでか……

 形が全然違うから気付かなかったよ」

 颯斗は魔石と自分の剣を見比べて言った。

 エレーナは魔石を手に取り、刻まれた文様を見つめた。

「それにしても何だろ……今まで見たことのない物ね……

 それに刻まれているこの文字、ルーン文字って言うやつじゃないかしら?

 ちょっと待ってね」

 そう言うとエレーナは紙と筆を取り出し、

 横に置いた魔石を見ながら書き写そうとする。

「……ほら、横に置いて見ながらでも書き写せない不思議な文字。

 人には認識できない……それがルーン文字よ」

「ん?エレーナ、これが書けないの?うそ……俺、普通に描き写せるけど?」

 スラスラと紙に書き写す颯斗。

「えっ?何で?」

「こっちこそ何で?エレーナは、本当に書き写せないの?

 確かにちょっと複雑な形が多いけど……不思議……」


 その時――。  

 〝コンコン〟

 扉を叩く音が響いた。

「あっ、リクト殿、良かった。お帰りになられていたのですね?

 そろそろ出航しようかと、様子を見に参りました」

「あっ、リチャード船長…… ただいまです。

 海中で息ができる魔道具、すごく助かりました」

「それは何よりです。……ところで、出航の件ですが」

「え? 修理に五日はかかるって……」

「ん?この船を直してくれたのは、リクト殿では?

 まるで新船のようでして……」


 颯斗は船室の窓から船を確認した。

「本当だ……ピッカピカだ……

 でも俺じゃないですよ。そんなことできたら最初からやってます」


 少し考え、続ける。

「多分……海底神殿の守り人が修復してくれたんじゃないですか。

 クラーケンの件、責任を感じている様子でしたし」

「……神殿は実在していたのですね。

 その方に、ぜひ感謝をお伝えしたかった」

「いつか会えるといいですね。綺麗な女性でしたよ」

「へぇ。綺麗な女の人、ね?」

「い、いや、深い意味は――」

「別に? 責めてないけど?」

 にこっと笑うが、声は冷たい。

「ただ……

 “帰りが遅い理由”としては、

 随分と分かりやすいな〜って思っただけ」

「……エレーナほどじゃない」

「………………まあいいけど」

 そっぽを向いたまま、耳だけ赤い。


 やがて船は港へ近づく。


「この度は本当に感謝いたします。

 颯斗殿がいなかったらと思うと……」

「いえ、自分を守っただけですから。そもそも俺が乗っていなかったら、

 クラーケンもパニックを起こさなかったらしいですし……」


 颯斗は遠くの山を指差した。

「ところで船長。

 あの山の上の大きな建物は?」

「あれは、ナギシンカゲリュウ本山の武道館だそうです。

 私は行ったことはありませんが、

 珍しい形ですが、威風堂々としていますよね」

「やっぱりそうか……和風の建物だからそんな気がしたんですよね」

「ワフウ?ですか?それにしても大きいですよね?それもそうか……

 何せ世界中に10万人を超える門下生がいるそうですからね」

「世界中に道場があるんですか?」

「らしいですよ……なんでも創始者の方が1年足らずで世界中に広めたとか……」



 長い坂を登り切り、巨大な門の前に立つ。

「近くに見えたけど……遠かったな……」

「門も大きいわね……あそこの小屋に守衛さんがいるようよ……」


「あの〜〜すみません……こちらの流派のことで少しお聞きしたいことがあるのですが……

 中で、どなたかに、お話を聞かせていただけないでしょうか?」

「はい?え〜と……貴方はどなた様で?お約束はありますか?ん?その顔、どこかで……」


 その時、後方から声が掛かった。

「失礼。那岐神影流に何か御用ですかな?」

 そこには、隙のない立ち姿の初老の男性が居た。

「ん?あっ……貴方様は、ハイメル王国の双剣の姫様。

 世界武道大会でお会いしましたな。

 那岐神影流 総師範、ジェイク・オブライアンです」

「……確かに、お会いしましたね」


 ジェイクの視線が颯斗に向く。

「して……そちらの方は?」 

「私の、主人……あばあば……い、痛い、いとゎい……」

 口を、颯斗に引っ張られ、上手く喋れないエレーナ。

「すみません。まだ結婚はしておりません。一応婚約者ではありますが……」

「一応って何よ……」

「ハハハ……貴方は…… ナギ・リクト様ですね?」

「……何故俺の名を?」

「エレーナ姫の御婚約者と言えば……

 それに、あなたのことは、私ども剣客仲間では有名でして……

 一度会いに行かせて頂こうと思っていたのですが、

 旅に出られたとお聞きし……」

「会いにですか?何故俺に?」

「貴方がここを訪ねてこられたということは……貴方にはその理由がお分かりなのでは?」

「ではやはり、俺と家名が同じ那岐神影流とは、何か関係があるのですね?」

「総師範に代々伝わる言葉がございまして」

「どのようなことなのですか?」

「同姓同名ですし……まさかとは思っていたのですが……

 貴方のお顔を拝見し、確信いたしました……」

「俺の顔?……がどうかしましたか?」

「貴方は、那岐神影流の創始者……那岐颯斗先生」

「顔を見て……とはどういうことですか?それに……創始者とは?」

「ご説明いたします。どうぞ、中へお入り下さい。

 渡したい手紙もございますので……」


 総師範の部屋に案内される颯斗。

「いやはや驚きました……こんな事があり得たのですね……」

「俺が2000年前の那岐神影流の創始者とは、どういうことなんでしょうか?」

「あそこに並ぶ、肖像画をご覧ください。1番左が創始者の那岐颯斗先生です」

「まさか……あの肖像画は俺?ですかね?少し年齢は上のようですが」

「代々、総師範に伝えられる、創始者の言葉と、手紙がございます」

「言葉……ですか?」

「〝二千年後、私と同じ名と顔の青年が訪れる。

 彼にこの手紙を渡してほしい〟

 そう言い残されました」

「……まるで預言だな」

「この文字が読めるのであれば……

 間違いなく、貴方への手紙でしょう」

 颯斗は、静かに手紙を受け取った。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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