第31話 海底神殿
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
〝ボコッ……ボコッ……ボコボコボコッ……〟
(本当だ……普通に呼吸ができる…… すげぇなこの魔道具……)
視界の先に、巨大な建造物が姿を現す。
あそこが海底神殿?……地上の神殿にそっくりだけど、
海の中で、魚の群れがいて……何とも幻想的だな……竜宮城って感じ?
エレーナにも見せたかったな……)
神殿の庭に降りようとした、その時……ふと、違和感を覚えた。
(ん?神殿の周りだけ魚がいないな?
噂どおり、もしかして神殿の周りだけ空気がある?)
とりあえずそこへ入ろうとすると、目に見えない何かに阻まれた。
(何か海水を遮断する結界みたいなものがあるのかも?
下手に、壊したら、神殿が大惨事になりそうだな……
さて、どうしたもんか……)
視線の先、神殿の正面に凱旋門のような建築物が見える。
(あれ……入口っぽくないか?
もしかして、あそこから入れるとか?)
高さはおよそ 20m。神々の像を中心に天使の像……威厳すら感じる建築物だ。
海水と空気の境目に、恐る恐る手を差し込んでみる。
手が、すうーと入り込む。
(お~入れるじゃん)
「中はやっぱり空気があるな……ふぅ~なんか安心する……」
巨大なドーム状の結界の向こう側は、紛れもなく海の中。
内側から眺める魚たちは、まるで空を泳いでいるようだった。
「すごいな……。
規模は全然違うけど、日本にこんな水族館あったよな……」
その時……
「ようこそお越しくださいました。颯斗様」
「えっ?何で俺の名を?」
「貴方が来られることは、既定路線でしたから……」
白いドレスをまとった、若く美しい女性が二人、静かに頭を下げていた。
「こちらへ。この神殿の守り人のもとへご案内いたします」
「お待ち申し上げておりました我が主人、颯斗様」
「我が主人?俺が?ここ神殿でしょ?俺は神じゃないし……
どうなってるの?」
「まずはこちらへ、お掛けください」
案内されたのは1000人は入れそうな玉座の間。
王様専用としか思えないような椅子を前に、思わず足が止まる。
「……なんか、落ち着いて話せそうにないな」
「でしたら、こちらの応接の間へ」
「で……この神殿って何? それに、貴方たちは?」
「ここは、古の大賢者サイモンが、女神様のために作った神殿。
それを貴方様のために、女神様が大改修した、
颯斗様専用の城のようなものです」
「俺のために?何故女神様が?それにサイモンて誰?
「申し訳ございません。今はまだ詳しいことは、お話しできません」
「どうして?それじゃあ、何も分からないんだけど……」
「未来に影響を及ぼす恐れがあるためです。
私どもは、颯斗様に仕えるため、ここにおります」
女性は丁寧に一礼した。
「私の名はサディア。
こちらがレベッカ、そしてナンシーです」
「……なんか、海底神殿に来るよう言われた気がして来たけど……
正直、何が何だか……」
ふと思い出す。
「あ、そうだ。
神殿の守り……クラーケン、倒しちゃったんだけど」
「お気になさらずに。謝るべきは、こちらです」
サディアは申し訳なさそうに続けた。
「颯斗様の気配を海上で感じ、
神殿の存在に気付いていただくため、クラーケンに船を止めるよう命じました。
しかし、颯斗様の魔力量が想定を超えており……」
颯斗様のあまりの魔力量にクラーケンが混乱してしまい、あのようなことに……
申し訳ありませんでした……
クラーケンは、復活しますので、ご心配なく。
ただそのために、クラーケンの魔石をお返しいただければ……」
「復活に魔石がいるの?うん、どうぞ……で、もう一度聞くけど……
詳しい話は聞けない……だったら何で、女神様に、ここに行くように言われたんだろ?
それも言えない?」
「女神様が颯斗様を導かれた理由は……
この二つの石をお渡しすること。
そして、ホールに施された巨大転移魔法陣に、
颯斗様の魔力を記憶させていただくためです」
「何なの?この黒ずんだ石は?」
「特殊な魔石とだけしか……魔法袋に入れて、
いつもお持ち歩いていただけませんか?」
「何のために?って聞いても教えてもらえないんでしょ?」
「申し訳ございませんが……」
「じゃあ、巨大魔法陣は?」
「ホール足元の魔法陣は、颯斗様の魔力を記憶することで、
いつでも、何人でも転移させられることができるようになります。
もっとも、ホールの収容人数は千人ほどですが」
「《《しか》》って……十分多いんだけど……
そんなに大勢の人を転移させてどうしろと?」
「いつか颯斗様に必要になるかと……それしか……
また、神殿の後ろには、1万人くらい収容できる居住区がございます。
颯斗様には、いつでも使っていただければと……」
「1万人もの収容施設……俺にそんなものが必要になるんだろうか……
そうだとしても、海の中だと何かと不便じゃないかな」
「海の中だと、攻撃されにくいですよ。
それに、必要とあればいつでも海の上に浮き上がらせることもできますので」
「最後に一つ聞いてもいい?ここの魔法陣……
それに、この石にも見たことない文字が刻まれてるね?」
「やはり颯斗様には、この文字が認識できるのですね……
これは……今は使える者どころか、
認識できる者がいない古代文字が使われております。
失われた古代魔法が施されております」
〝グゥゥ~~〟
「あっ失礼……お腹すいちゃった」
「ごちそうさま。美味しい食事、ありがとうね。だけど……
魚介が泳ぎまくる中で、魚介を食べるのは……ちょっと罪悪感あるな……」
「申し訳ございません。ここでは、お肉も野菜も取れませんので……
この次に颯斗様がお越しになるまでには、ご用意しておきますので」
「ハハハ……冗談だよ?気にしないで。それじゃあまたいつか……」
「颯斗様が着てらした、服はもう乾いております。お着替えください」
「ありがとう。じゃあ上に転移するよ」
「私たちは、いつでもここで、お待ちしております」
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