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第30話 クラーケン

16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗りくとは、

勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。

自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、

人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。

「とってもいい部屋ね。大きなバルコニー付きで、景色も最高だわ。

 ほとんど揺れないし……ここが船の中だなんて、信じられないくらい快適ね」

「王家所有の船と同じくらい大きくて、立派な船だよね」

「さすが豪華客船って言うだけのことはあるわ。

 でも、わざわざ船に乗ってまでスーリアへ行く理由は何?

 遠回りよね……護衛を撒くため?」

「スーリアに、那岐神影流という、剣の道場の本山があるんだ。

 そこを訪ねてみたくてね」

「あ……貴方のファミリーネームの“ナギ”、

 どこかで聞いたことがある気がしてたけど……それね。

 那岐神影流。貴方と、どういう関係なの?」

「分かんない。だから調べに行くんだよ。

 理由はないけど……どうしても行かなきゃいけない気がするんだ」

「偶然でつく名前じゃないものね」



「食事も美味しいわね?

 王都の一流レストランにも引けを取らないレベルかも?」

「ビュッフェスタイルって言うんだろ?

 好きなもの好きなだけ食べられるし、最高だよね」

「久しぶりに、のんびり出来そうだよな?

 せっかくだから、しっかり身体を休ませないとな」


 〝ドガシャ~ン!〟

 突如、船全体を揺るがす衝撃。

 テーブルが派手な音を立ててひっくり返った。

「何事かしら?」

「〝のんびり出来そう〟って、言ったそばからこれか……」

 〝ドガシャン!〟〝ドシャ~ン!〟

「うわ……またか?何が起きてる?」

「リック!窓の外を見て……何あれ?吸盤のついた足……

 蛸かイカかしら?それにしてはあまりにも大きすぎるけど?」

「でかいな……太さも3m以上ありそうだ」



 デッキに出る、颯斗とエレーナ。

「あれって、クラーケンってやつじゃないか?」

「超巨大なイカ?蛸かしら……とんでもない魔物ね?」

「魔物? ギルマスのヘザーさんは、

 水の精霊の上位種で海底神殿を守ってる……とか言ってたけど……

 どう見てもあれは、災害級の魔物にしか見えないよな」

「私も精霊には見えないかな……上を船が通っただけで襲ってくるなんて……」

「そこの貴方達、危ないわよ?なに呑気にお話ししているの?

 すぐに逃げなさい」

「確か火に弱いんだっけ?そんじゃあ、焼きイカにしてやろうかな?」

「火は駄目よ。足が船に巻き付いているから、燃え移ったら沈没するわよ?」

「……どうして?貴方達あれが怖くないの?

 もう知らないわよ……私は逃げるわよ!」


「あのおばさん、どこに逃げるのかしら?」

「さあ?海の上だし逃げるとこなんてないよな……」

「お客さん!お客さん!危険ですから、部屋に避難していて下さい」

「部屋?そんなとこに逃げてもな……って誰?」

「船長のリチャードです。なんとかしますからお逃げ下さい」

「何とかするって……どうやって?

 船体が、足で締められてギシギシいってますよ?

 このままじゃ、破壊されて沈没しますよ?」

「戦う装備でもあれば……」

「ハハハ……豪華客船にそんなものないよな。

 俺が、やってみますよ」

「「どうやって」」

「そうだな……まずは電気ショックを与えて、

 船から離れたところを、弱点と言われている火で攻撃……

 最後は……」

「「最後は?」」

「醤油をかけて食べてみるかな?船長、醤油あります?」

「何です?醤油って?って、ふざけてる場合では……」

「あ、この人多分本気です。S級冒険者のリクトって聞いたことありません?」

「こ……この方が?もちろん存じております。

 この国で知らない者は……この国……あ……貴方様は……

 エ、エレーナ王女様ですか?」



 〝雷撃(サンダーボルト)

「アガガガガ……ギャ~痺れる~!自分まで痺れちゃった……失敗……

 みんな大丈夫だったかな?何でだ~

 あ、このデッキ、床が濡れてるから……それでか?船内は平気だな……多分。

 げっ……こいつ離れてない……もっと強いのを……俺は……空中に浮いて……」

 〝雷嵐(サンダーストーム)

 〝アンギャ~~ス……〟

 電撃に痺れ、船体から足を離すクラーケン。

「よっしゃ~今だ!」

 〝業火(ヘルフレイム)~!〟

 イカが焼けた香ばしい匂いがしてきた。

「エレーナ!醤油!」

「だからそんなのないって……」

「で・す・よ・ね~ 仕方ない……海水の塩で……」

 〝バクッ!〟

「あっ、あの人まじで噛みついた……」

 〝ペッペッペッ……〟

「まずっ……食えたもんじゃね~良い香りだったのに……

 魔石だけもらっとくか……」



 〝ザンッ!〟

 頭を両断すると大きな魔石が転がり 出てきた。

「でかっ!しかもめちゃくちゃ綺麗~じゃね~か?」

 〝〝〝〝ワァァァァァ~~!!〟〟〟〟

 客室のあちこちから歓声が上がった。


「リクト殿」

「あっ、船長。船の損傷はどうですか?」

「沈んでないのが不思議なくらいです……

 このままでは、先に進めないでしょう……

 それより何より、大変助かりました。ありがとうございます」

 船長リチャードは深々と頭を下げた。

 その背後では、乗組員たちが慌ただしく船体の被害状況を確認している。

「海上で、修繕出来るのですか?」

「錨も沈んでしまって……このままでは潮に流されてしまいます。

 修理するしかないのですが、材料も道具もありませんので、

 伝書バードを飛ばして、修繕船を呼ぶしかありません」

「何日ほど掛かるのですか?」

「海上では簡易な修繕しか出来ませんが、

 それでも少なくとも5日は掛かるかと……」



「エレーナ。クラーケンは、水の精霊の上位種だって伝説があって、

 海の海底神殿の守りだと言われているんだよな?」

「それ、貴方が言ったんじゃない?

 海底神殿……ああ、潜りたいってことね?」

「……何故分かった?特殊能力か……」

「貴方単純だもの。迷宮があるかもしれなくて、

 ここからしばらく動けないのなら、そう言うに決まっているわ。

 でも私は行かないわよ?」

「へ~珍しい……絶対一緒に行くって言うと思ったけど?」

「私泳げないもの……」

「そうだったのか……

 どうやって止めようか考えていたんだけど……」

「でも、海中なんでしょ?息出来ないわよ?どうするつもりなの?」

「海底神殿の中は、水がないらしいよ」

「何情報よ?」

「噂……」

「もう……本当かどうかも分からないじゃない……

 そもそも、深さもわからないし、どうやってそこまで行くのよ?」

「この辺の水深は300m位だって、船長が言ってた」

「それって、下まで行ったら水圧凄いんじゃない?大丈夫なの?」

「これだけ鍛えてるんだから、平気だよ。

 それにいざとなったら、転移で戻れるから…

 後これ、〝ジャジャ~ン!〟水中で息をするためのマスク型魔道具。

 水中で作業するために開発されたものらしい。

 1時間位なら息が出来るんだって。船長が、貸してくれた」

「水の中なんて、経験ないんだから、やめといた方がいいよ……

 って言っても、貴方が聞くわけないか?」

「ああ、海底神殿には、行く必要がある気がする」

「どうして?」

「夢かなんかわからないけど、

 女神様らしい人が海底神殿に行けって言ってたんだよね」

「ところで、リック……神殿の守りを倒しちゃったけど……

 それ、大丈夫なの?」

「それな?………………襲われたんで、仕方なかったと言う事で……」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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