第3話 那岐神影流
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「あの丘を越えれば俺の村だ」
深緑に染まる丘を指差しながら、オスカーが言う。
それにしてもお前の戦い方……威力はまだまだだが、
剣筋とスピードはなかなかなものだったぞ?」
オスカーは顎に手を当て、颯斗を見つめた。
「前に剣の大会で見た、那岐神影流とかいう流派に似てたな?
お前の剣には、返しがないから少し違うがな。お前さっき……」
「ええ、俺の普段使う刀という剣は片刃なんで、
返しはないんで……って、今なんて言いました?」
「ん?那岐神影流か?」
風が止まったように感じた。
「それ、俺のご先祖さまが始めた、
実家の流派ですよ?なんでこの世界に?」
「それだよそれ。お前さっきナギって名乗ったろ?
だがあの流派はもう2000年の歴史があるはずだぞ?偶然の……
いや偶然のわけないわな?
ナギってのはこの世界では聞かない名前だからな……」
低く唸る。
「不思議だな……」
オスカーは、、遠くを見るように目を細めた。
「この世界の那岐神影流と、俺の剣筋は似ているのですか?」
「ああ、そう見えたな。お前、ちょっとこの剣を振ってみろ」
「これですか?さっきも言いましたが、
俺の居た世界にも刀という、
薄く切れ味の鋭い剣はありますが、
これとはずいぶん違います。
この様な幅が広い両刃剣は振った事がありません。
これは重そうですね?」
「ああ、〝カタナ〟って言ったっけ?
そういった薄く軽い剣では駄目だ」
「駄目なんですか?……何故?」
「対人戦ではそれで良いのかもしれんが、
ここでの相手と言えば、ほぼ魔物だ。
切り裂くというより、叩き切る感じだな」
オスカーは自分の剣を軽く叩き、続ける。
「軽い剣では魔物相手には、分が悪い。
刃が通らないどころか折れてしまう可能性が高い。
家に帰ったら、使っていない剣を一振りやろう。
それで早速、明日からレベルアップだ。
両刃剣の、返しを使う振り方も教えてやらなきゃな」
「オスカーさんは、あのワイバーンを一刀両断したほどの凄腕……
有難いです。ぜひ、教えを受けさせてください」
颯斗は深く頭を下げた。
「ああ、そのくらい何でもない。
出来れば魔王城に、ついて行ってやりたいが、
ここも最近やたらと魔物の数が増えていて動けないんだよ。
自分の力で魔族領に行ける様になるまで、
しばらく俺のところでステータスを上げるといい」
「というわけで、
しばらくこいつをうちに置いてやってくれないか?」
「うわ!めちゃくちゃ綺麗じゃないですか?奥さん……
あっ、いけない。俺、那岐颯斗と言います。
よろしくお願いします」
「やだこの子ったら……綺麗だなんて……
こんなイケメンの少年に言われると照れるわね……」
「なっ……いいだろう?アンナ?
エイミーもこのお兄ちゃんと一緒に暮らしても良いよな?」
後ろから、ちょこんと現れる小さな影。
「うん、いいよ。エイミー、
このお兄ちゃん優しそうだし、カッコいいから好き」
「何ですか、このめちゃくちゃ可愛いモフ耳の女の子は?」
モフモフのしっぽに耳……破壊力抜群。
「オスカーさんの娘さんですか?」
「おお、そうだ。娘のエイミー5歳。
こっちは嫁のアンナ30ーー」
〝パコ~ン!〟
「……私もいいわよ。賑やかになって楽しそうだし、
魔物も倒してくれるって言うなら、
こっちからお願いしたいくらいよ」
(な?上手くいったろ?)
(いや、ほんとに綺麗な奥さんじゃないですか)
「何コソコソ話してるのよ?」
「何、こいつがお前が綺麗で驚いたってさ?」
「はい、オスカーさんが羨ましいです」
「だったら、エイミーが、
お兄ちゃんのお嫁さんになってあげる」
「あ~~……それは嬉しいけど、
後ろでお父さんが怖い顔してるから、
遠慮しとこうかな……」
「ねえ、貴方。ライアン様には、許可を得たの?」
オスカーの耳元でアンナが囁く。
「もちろんだ。ライアン様も、
透明化して一部始終見ておられた。
目で合図したら頷いてくれたから、
滞在させてもOKという事だろ?」
「貴方の早とちりじゃないと良いけど……
大丈夫?何だか不安ね……」
翌日から、早速稽古が始まった。
「いきます!」
〝カンカンカン!キンキンキン!〟
「ハアハアハア……」
「リック、お前戦ってる時、
薄っすら光を放ち、髪と目が銀色に輝くんだが?
何故だ?と言ってもお前にも分かるわけないか……」
「光るのですか?俺にはわかりません」
「……だよな……それにしても……う~ん……やっぱり、
お前の剣筋は、悪くない……いや、
多分レイピアの様な軽い剣を持たせたら、
相当な腕なのかもしれないな。
お前、誰に剣を習ったんだ?」
「父です……」
「那岐神影流か……」
剣を下ろす。
「お前の父親がそこの家元なんだっけ?
この世界に召喚され、家族と離され、辛いだろうな?」
颯斗は空を見上げる。
「いえ、母は俺が3歳の時からいなくて、
父とは、師弟関係で、
幼いとき以外、
まともに親子らしい会話をした記憶がありませんね。
兄弟もいません。最近は、家を追われて、寮暮らしでした」
「家を追われた?何か、やらかしたのか?
母親は?……そうか……亡くなっていたんだっけ?」
「そう言われていましたが、
本当に亡くなっていたのかどうか……
幼かったんでよくは覚えていないのですが……
死に目にも合わせてもらえず……」
視線が揺れる。
「亡くなったと言われても、本当のところは……
俺が家を追われたのは……」
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