第26話 伝説の神剣
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「……エレーナ……リック君のあの剣……どう思う?」
「失われた神剣……伝説のエゼルソード…… あの挿絵と、ほとんど同じでした……」
「やはりエレーナもそう思ったか……」
「ですが……あの状態は……」
「うむ…… 本来は、精霊の泉に納められていたと言われている。
そこに安置し、2万年ものあいだ、マナに満たされて……」
「ですね…… 使命を果たした神剣は、あの姿になる……
復活に2万年……伝説では、そう語られていますね……」
「あれが本来の姿であったなら、斬れぬものはない。
悪魔であろうと、完全に修復不能――
リック君にとって、最高の剣になり得るのだが……」
「ん?ここは……ふわふわのベッド……気持ちいい~。久しぶりだな……」
微睡みの中で手を動かした瞬間、違和感に気づく。
「……ん? これは……ぷにぷにの……何だ?
……エレーナ? うわっ!? なんで裸!?」
「「あ……リック……目、覚めたのね……ふわぁ……」
一瞬だけ瞼を開けたエレーナは、すぐにまた目を閉じてしまう。
「起きて! エレーナ! お前……裸……!
って、えっ!? 俺も?」
「ん……まだ眠いんだけど……うぅん……あれっ……私……服……」
数秒の沈黙。
「キャ!どうしよう……あの……貴方、極度の疲労からか、
体温が下がっていて……温めようと……キャ!」
説明する間もなく、裸のまま颯斗に抱きしめられた。
「俺、お前嫌い……」
「えっ?」
「懐かしくない?そんなことを言ってた時もあったなって……」
そう言って、彼は静かに息を吐く。
「エレーナに出会えて良かった……1年も離れて、心配かけてごめんな。
あったかくて……柔らかくって……」
「あっ……そこは……ん……」
〝ぐぅぅ~~〟
「えっ?」
「ごめん……3日の間、何も食べずに駆け上がったから……」
「1日寝ていたので、合わせたら4日も食べてないのね?」
エレーナは悪戯っぽく微笑む。
「どうする?食事にする?私にする?」
「……なあ?エレーナ……ドアの外に誰かいるよな?」
「普段は居ないけど、こんな時だから今日は護衛の者が2人いると思うわ……」
「……飯にしようか……」
「うん。それが良いかも……」
「ごちそうさま。いや~美味かった。
まともな料理なんて1年ぶりだよ」
「そんなに……?」
「いつも、塩、胡椒して焼くだけの肉とか、野菜と煮込んだりさ……
アイテムボックスって腐らないから、料理して持ってけば良かったよ……
ってそりゃ無理か……そんなに大量の料理……
作るのにいったい何日かかることやら……」
「ん?なるほど……そうか……だったら次からは、城の料理人に言って調理させよう。
彼らは2000人分の料理を毎日作っているのだからね。
それくらいはどうってことないだろ……その時は、遠慮なく言ってくれ」
「えっ?まじですか陛下?いや~助かる~。今から楽しみです」
「やめてよ……帰ってきたばかりなのに……」
「いや……例えばだよ?例えば……もしまた行くようなことがあればってことだよ。
ところで、リック君。昨日の剣を、もう一度よく見せてくれんか?」
「これですか?構いませんけど……はい、どうぞ……」
「う~む……やはりこれは……」
「この剣の事、何かご存じなのですか?」
「ねえ、リック……この剣もしかして、神剣エゼルソードじゃないかしら?」
「神剣エーゼルソード?」
「違う、神剣エゼルソード」
「神剣エゼルソード?まさか……そんなたいそうなもんじゃないよ?」
「リック君。この本を見てみなさい」
「随分古い本ですね?」
「リック、そこの挿絵を見て」
「ん?エレーナもこの剣の事知ってるの?……お?この絵……似た剣が……」
「でしょ?神剣エゼルソードの絵よ?」
「ん?確かに……似てるちゃ~似てる……あれっ?まんまこれか?
陛下。この本には何が書かれているんですか?」
「はるか昔の伝説だよ……おとぎ話だと思っていたが……
勇者エリシオンが、悪魔の王と戦い、かろうじて悪魔を退ける話……
使命を果たした、神剣エゼルソードは、
悪魔の邪気を吸い、沸騰したかの様にボコボコした形に変形し、
黒ずんでしまったそうだ……」
「その時、勇者は、剣の声を聞いたと言われているの……」
〝我の使命は終わった……これから深い深い眠りにつく……〟
〝眠りにつく?ちょっと待ってくれ……
また悪魔が復活したら、お前無しで、どうすれば良いんだ?〟
〝精霊の泉に納めてくれ。いつか目覚めて復活するであろう〟
〝精霊のマナか……それで元の美しい剣に戻るのか?〟
〝うむ……2万年程マナに満たされればな〟
〝に、2万年?眩暈がするほどの長さだな〟
〝なに、星の歴史からしたら、ほんのひと時……〟
〝その間に悪魔がまた現れたら?
悪魔はそんなに長い年月待ってはくれないんじゃないか?〟
〝その時は……〟
「でも、次の瞬間、剣は忽然と消えてしまったそうよ?」
「その時一瞬、勇者エリシオンは、悪魔の気配を感じたとも…………」
「悪魔の王が、最後の力を振り絞って、
神剣をどこかへ飛ばしたのではないか……
この本にはそう書いてあるの」
「その伝説の剣が、マナに浸されることなく、長い間あの迷宮に眠ってた?」
「どうかしらね?」
「復活するのに2万年か……流石に長すぎだろ……
俺にはこの剣を、どうする事も出来ないじゃないか……」
「だが、リック君。それは手放さぬ方がいい……」
「ええ、分かってます。斬れませんが丈夫ですからね。
意外と使いようはあるんですよ」
そう言って、彼は剣を見つめる。
「それに、この剣が俺を呼んでいたというのなら、
それには何か意味があるのかもしれませんから……」
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