第22話 で、何があった?
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「おい、リック……この気配……もしかして……
向きを変えてこっちに向かってるのではないか?」
「……だな。ガードナーは素通りか?」
「だが……先程何か、向こうで衝撃を感じなかったか?……」
「ジェブもか?俺も嫌な感じがした……
エレーナの城が無事だったら良いが……」
「少し気になるな……」
「もう1時間もすれば、あの気配とすれ違いそうだな……
この向きだったら……アリオス村は大丈夫そうだな。
もう暫らく飛んだら、降りてくれ。隠れて様子を見たほうが良さそうだ。
気付かれないよう、なるべく魔力を抑えて飛んでくれるか」
「来たな?」
岩陰からそっと空を見上げる颯斗。
「100人ほどの集団……ジェブ、あれは、魔族か?」
「う~ん……見た目では判断が難しいな……
いや、待て……うん、あれはやはり魔族だな。数人羽持ちがいる……
先祖帰りって言うんだろ?
魔族は昔、みんな羽があったと聞く。
それを根拠に、魔族は神の末裔だと信じてる奴も多いらしいな?
そういう、言い伝えがあるとかないとか……」
「あれ?あれは、佐伯先輩?その横は近藤先輩……
やっぱりそうだ!すっかり、成長して大人の顔つき……でもなんだあの目?
赤黒い……まるで悪魔……
佐伯せんぱ~い!近藤せん……」
叫びかけた瞬間。
目の前に、突如として“何者か”が立ち塞がった。
「困りますね?進行の邪魔をされると」
柔らかな口調。だが、背筋が凍る。
「急いでおりますので、彼等を呼び止めないで頂けますか?
よろしいですね?では……」
颯斗は、一歩も動けなかった。
「……ば、化け物……レベル250なんて、可愛く見える……」
「大丈夫か?凄い汗だぞ?」
「ああ……一歩も動けなかった……」
「あれは、悪魔だな……」
「悪魔とは一度対峙したけど……そいつとは比べものにならない……
まだ冷や汗が止まらない……」
「戦闘系の上位悪魔なんだろ……どうする?リック」
「あんなの、今の俺じゃどうにもできないよ。
万が一アリオス村に向かう様なら行くしかないけど……
そうじゃなさそうだ。ここでしばらく様子を見よう。
龍神様に貰った神眼のスキルを使ってみるよ」
「そのスキルで遠くが見れるのか?」
「まだ、スキルのレベルは低いから、はっきりとは見えないな。
特に遠いとね」
「どうだ?」
「そろそろハイメルの王都だな……王城に向かっているのかな?
あっ……そこで気配が消えたよ。
その後、また何か衝撃波みたいなのが広がったけど……
その衝撃波を受け付けないところがいくつかある……
アリオス村もその一つみたいだ……」
「アリオス村が無事なら、ここでこうしていても仕方あるまい。
我らはガードナーに向かうべきではないか?
一時間前の衝撃が気になる……姫が心配ではないか?」
「……だね」
「こ……これは……王城が半壊している……エレーナは無事か?……」
「なんだ、やっぱり一番に姫が気になるのか?」
「あの姫さんは、悪い子じゃないんだよ」
「誰の台詞だよ?」
「この辺りには人の気配は感じないな?」
「リック!見ろ。人が死んでる……20~30人か?
この様子だと、まだ瓦礫の下に埋まっている者もいそうだ……」
「あの衣装、亡くなっているのは魔法騎士団か?
他には……生きている人の姿が見えないな……
ここ、城勤めの人間が 2000人は居るんじゃなかったか?」
「2000人か……この数じゃ、辻褄が合わないな。
地下に避難しているのか……かすかに気配を感じる」
「瓦礫の隙間のあの辺りから、地下に行けそうじゃないか?」
「この状態で人が表に出てきてないところを見ると、
入り口が瓦礫で埋まって、身動きが取れないんじゃないか?
リック、重力魔法が使えると言ってただろ?
瓦礫を何とかできないか?」
「下手にどかすと、瓦礫が崩れて、誰か挟まったりしないかな?」
「生きてる者の反応は、外には無いから大丈夫だろ?」
「そうだな。それより、地下の様子が気になるよな。
怪我人とかいるんじゃないか」
〝重力操作〟
〝グラグラ…… グラグラ……ガッシャ~ン……〟
瓦礫が少しずつ浮き上がる。浮かしたまま横に瓦礫を追いやると、
地下への階段が露出して見えてきた。
ジェブラが曲がってしまったドアを力ずくでこじ開けると、
ひどい土埃で中を見ることが出来なかったが、
咳き込む声があちこちでする。
〝風生成〟
風魔法で中の空気を入れ替えると、
瓦礫の影から誰かが走って来て抱きついた。
「リックさん!」
珍しくドレス姿のエレーナだった。顔は土埃で真っ白だ。
「エレーナ。良かった……無事だったか……何があった?」
「リックさん……生き埋め状態で……
だんだん息苦しくなってきて……もうだめかと……
でも、何故かきっと貴方が助けに来てくれるんじゃないかと……」
「うんうん、怖かったね?で、何があった?」
「ドアが瓦礫で開かなくなって、こじ開けようにも、道具がなくて……」
「うんうん、怖かったね?で、何があった?」
「土埃がすごくて、具合の悪くなる人が増えて……」
「……俺こいつ嫌い……」
「えっ?」
「うそうそ、でも、あそこのおじさんが睨んでるから、もう離れようか?」
「おじさん?ああ、お父様ね ……大丈夫よ?
この際だから、リックさんを射止めろって言われているくらいなんだから……」
「アーネスト・ガードナー王が?
はぁ? 何言ってんの、あのおっさん……
ガードナーみたいな大国の姫さんに、俺なんかが……バカじゃないの?」
「ううん……それは違うわ……どこの国もあなたを欲しがる……
ハイメルが、貴方を呼び戻したのもその為なんでしょう?」
「〝真の勇者として、ハイメルに迎えよう〟とか何とか言ってたな……」
「……やっぱり……で……貴方は、なんて答えたの?」
「剣で、髭半分剃り落としてやった」
「ハイメルの王の?」
「そ、そ……」
「私の騎士になったって言った?」
「うん、凄く怒ってた。〝我が国が召喚したのに〟って……
エレーナ……そろそろ落ち着いたかな?」
「あ……はい……」
「じゃあまず、顔と身体を綺麗にしようか?」
〝浄化〟
「うん、可愛くなった。で、何があった?」
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