第21話 この気配は……
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
「なあ、リック。お前本当にガードナーの姫の騎士になったのか?」
「うそうそ。あいつらが言ってきそうな展開を予想したエレーナが、
そう言う事にしとけって言うから……
俺は、父さんと同じ、冒険者が性に合ってるみたい」
「ほ~、ガードナーの姫さんがね~」
意味ありげな笑みを浮かべて、オスカーは肘で颯斗をつつく。
「リック……随分姫さんと、仲良くなったんだな?
姫さん、美人か?」
「……まあ……可愛いかな……」
「ほ~そうかそうか……会うのが楽しみだな」
オスカーは、からからと笑ったあと、ふっと表情を和らげた。
「それとな、リック。冒険者だろうと騎士だろうと、
お前のやりたいように生きろ。それがお前の人生だ」
「……ありがとう」
「それにしてもだ。レベル250って何だ?冗談だろ?」
「それは本当。ガードナーの迷宮って、とんでもないよ?
S級以上の魔物が、うじゃうじゃ出てくる。
そこを1人で攻略しなきゃなんないんだよ?レベルだって上がるさ」
「1人で、な……」
「それより急ごう……アンナさん達が心配だよ。
ジェブに乗せてもらって行こう」
「えっ?……ドラゴンに乗ってくのか?まじで?」
「早いよ?半日もあれば村まで着くよ。
本当は、転移で行きたいところだけど、
まだスキルのレベルが低くて、一度に100m位しか移動できないんだよね」
「……お前、転移まで使えるのか」
「うん。いっぱい使ってレベル上げないと。
長距離でも自由自在に転移できるようになったら、
絶対めちゃくちゃ便利だよね」
「お父さん!」
「貴方無事だったのね?」
「アンナさん。俺のせいで、父さんまで巻き込んで連行されて……
心配かけてすみませんでした」
「リックのせいじゃないよ?」
そう言って微笑んだあと、少しだけ頬を膨らませる。
「それより、オスカーの事は父さんで、
私はアンナさん?私も母さんって呼んでほしいわね?」
「だってアンナさん若いんだもん……」
「わ……若いだなんて……そ、そう?」
照れながらも、アンナは優しく俺の頭に手を置いた。
「でもね、リック。もうあなたは私たちの家族よ。
だから……あんたは私の息子。母さんって呼んでね」
「分かったよ。ありがとう、アンナ母さん」
「ふふ……いい子……
リック。あんたずいぶん変わったわね?
最初の頃は、頭の固い生真面目な子かと思ったけど、
どっちかって言うと、お砕けキャラだったんだね?」
「元の世界で、厳格に育てられて、窮屈な生き方をしてたからかな?
今の俺が、本当の俺なんじゃないかな」
「オスカー!」
「おう!ヘザー!色々済まなかったな?
忙しいんだろ?ギルドはお前が居なくて大丈夫か?」
「ああ、ギルドは、大丈夫だ。それに来たときにはもう、
ここには兵が1人も居なかったぞ?」
「俺たちが村に戻った事を、通信魔道具で聞いて逃げたか。
まあ、何事もなくて良かった」
「あ……あれっ?」
「リックどうした?難しい顔して」
「父さん。王都の方角、なんか膨大な魔力を感じない?」
「ん?そうか?俺は何にも感じないな?」
「う~ん……俺ちょっとライアン様のところに行って来る」
「ライアン様」
「おお、リックか。おかえり」
視線を向けた瞬間、ライアン様は目を細めた。
「……その魔力量。遠くからでも分かったぞ。
レベルも相当上がったな。短期間で、一体何をした?」
「貴方が行けと言った迷宮で、ですよ。
詳しい話はまた後で……それより」
俺は真剣な表情で告げる。
「王都の方角に、
俺なんか比べ物にならない程の膨大な魔力を感じるのですが?」
「そうか?お前が村に近づいた頃からお前の魔力に当てられて……」
ライアンは目を閉じ、気配を探る。
「むっ?確かに……これは……悪魔族の魔力……いったい王都で何が……」
「あっ、そう言えば、悪魔……俺、一度悪魔と戦った事あるのですが、
同じ様な感じの魔力ですね?」
「リック……お前、悪魔と戦ったことがあるのか?」
「はい、戦闘系のやつじゃなかったですけど……」
ふと、違和感が消える。
「あれ……魔力、消えましたね」
「……何事もなければいいが」
視線が俺の装備へ移る。
「それが、迷宮で得た武器と防具か?」
「はい。ボスを倒して手に入れました。
持ち主に合わせて、最適化された形と性能になるらしいですよ」
「……う~ん……」
「どうかしましたか?」
「リックを呼んでる武器と防具……多分それではないぞ?」
「えっ?これではないのですか?」
「未だに、お前を呼んでいる気がする……
未だ迷宮のどこかにあるのかもしれないな」
「リック!この気配は……」
「昨日のとも違いますね?いや、昨日と、似た魔力も、混じってる?
どうなっているんだ?
これ、ガードナー王国に向かってませんか?」
「悪魔ではないな……これは魔族の魔力だ。リックは、初めてか?」
「はい、魔族とは未だ出会っていません。これが魔族の魔力……
魔族が攻めてくることは無いと思っていたけど……」
「魔族領からの風の流れはハイメルに向かっているんだ。
これは……空に浮きその風に乗っている様だな。
とすると、ガードナーに向かっているのかそれとも……」
「風に乗りハイメルに……
その後、向きを変え……と言うこともあると言う事ですか?」
「何ともそこは分からんな」
「とにかく行ってみます」
「行ってどうする?魔族だけなら良いが、
この気配……もし悪魔が居たなら、今のお前でも太刀打ちできなかろう。
奴らの力は魔王すら遥かに凌ぐ……」
「ですが、人の気配……俺とよく似た魔力も感じます……
まさかとは思いますが……」
「勇者か?」
「はい……もしそうだとすれば……俺の旅の目的は、彼らに会う事なので……」
「そうか……ならば急ぎなさい。あの海の風は想像以上に強くて動きが早い。
あと、半日もすれば、ガードナーにつくはずだ」
「ジェブ。頼めるか?飛行魔法を使うより、
お前に乗ったほうが速そうだ」
「良いぞ。しかしいくら我でも半日でガードナーまでは無理だぞ」
「ああ、分かってる。行けるところまで、全速で頼む」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




