第2話 巻き込まれたのかも
学校から帰宅途中の渡り廊下で、美男美女で有名な、
生徒会長と副会長の3年生、佐伯先輩と近藤先輩とすれ違う。
「帰りか?那岐。気を付けてな。」
この2人、学力も運動神経もずば抜けている。
かく言う、颯斗も、学力はさておき運動神経では2人を遥かに凌ぐ。
江戸時代から続く、那岐神影流の継承者で、
16歳にして、最高峰の大会で剣道日本一になった天才の中の天才だ。
お互いどちらも学園の有名人で、顔見知りであった。
「ああ、先輩。さよなら。また明日」
そう言って2~3歩歩いた時だ。
周りに幾重にも重なる細い雷のようなものが出現し、
まとわりついてきた。
「な、何だこれ?」
次第に颯斗の目前に、渦が出来、中心に大きな穴が開く。
佐伯と近藤が、呑み込まれる。
「せ、先輩!あ、やば!俺も吸い込まれる!」
周りの空気が、渦に吸い込まれ、立っていられないほどの風が吹き荒れていた。
抵抗虚しく、渦の中に吸い込まれる颯斗。
吸い込まれた後は、空気の濁流に捕まり逃げ出せない。
夜空の中に放り出されたかの様な周りの景色は、
流れが早く、星々が流星の様に流れて目が回りそうだ。
しばらくすると次第に流れが緩くなり、夜空に浮かんでいる様な感覚になる。
ふと下を見ると、先に呑み込まれた生徒会長達2人の姿が見えた。
周りは、古代ヨーロッパの様な、
荘厳な雰囲気の白い石造りの建築物の中だった。
美しい彫刻が刻まれた巨大な柱が並び立っている。
「陛下。成功です!勇者召喚に成功しました!」
「良くやった!魔法師団長。
して、そなた達が勇者殿か?よう参られた。
喜ぶが良い。これからは、この世界で何不自由のない暮らしを保証しようぞ」
キョロキョロしている先輩達が見えた。
「お~い!せんぱ……」
言いかけたところで、また流れが急になる。
「ちょ……待ってくれ!お、俺だけどこに……」
足掻きながら全力で飛び降りようとするも意識が途絶える。
気がつくと森の中で倒れていた。
「気力・体力・知力、全てにおいて優秀な先輩達が、勇者に選ばれ、
召喚されたんじゃないかな?
すぐそばに居た俺が、それに巻き込まれたのかも……」
「お前今、サエキ先輩とコンドウ先輩って言ったか?
3年前に召喚された勇者も、サエキ、コンドウ……確かそんな名前だったぞ?」
「さっきも3年前って言いましたよね?俺、本当に3年も気を失って……
いやいや、そんなわけないよな……
だとすると……召喚された場所と時間にズレが?」
「俺にはよく分からないな?
でも、お前はやっぱりこの世界の人間ではなさそうだな。
これもさっきも言ったが、着てる服も見た事ない物だしな。お前、名は何と言う?」
「那岐颯斗16歳です」
「ナギ・リクト?言いにくいな……リックで良いか?」
「はい、言いやすいならなんとでも。で、貴方は?」
「ん?そういえば名乗ってなかったな。
俺はこの先のアリオス村の村長をしている、オスカー・ジェームスと言う者だ」
「ずいぶん若い村長さんですね。
オスカーさん、先輩達が召喚された場所、
白い石造りの建物で、彫刻が彫られた巨大な柱が並び立っていたんだけど、
それって、どこか分かりますか?」
「う~ん……それは多分、王城の玉座の間じゃないか?
俺も冒険者だった頃、何度か呼ばれて行った事あるが、
お前が今言った場所と同じ感じの建物だから、
多分そこだと思うぞ」
「王城の玉座か……王城は、ここから遠いですか?」
「王都か?歩いたら2~3週間はかかるな」
「そうですか……遠いな……でもそこに、先輩達が暮らしているのかもしれない……
だとしたら、その王城に行ってみるしかないですよね……」
「いや、彼らはもう、そこには居ないぞ?」
「えっ?オスカーさんは、先輩達の居場所を知っているんですか?」
「いや……知ってると言うか……聞いた話では多分……
彼らは……魔王城なんじゃないかな……」
「えっ?魔王城?何で魔王城に?囚われているとか?
と言うか、魔王って本当に居るのですか?」
「そりゃな。そもそも勇者召喚は、魔王討伐の為だからな。
でも彼らは、囚われている訳じゃなく、
自分の意思で、望んで滞在しているんだと思うぞ」
「魔王討伐の為に召喚されたのに、自らの意思で魔王城に住んでるんですか?
……何が何だかさっぱり分からない……
でもその話が本当なら、2人に会う為には、俺も魔王城に行くしかないのか……」
「魔族領は、王都より遥かに遠いぞ?いくつかの国を通らなければいけない。
それに今のお前の力じゃ魔王城に行くのは無理だな……
お前の今のレベルはせいぜい10かそこらくらいじゃないのか?
それだと到底、魔族領にすら辿り着けないぞ。道中は魔物が多いからな」
「レベルですか?この世界では、ゲームの様にレベルが存在するのですか?」
「ゲーム?何だそれ?もちろんレベルはあるぞ?
そんなの常識じゃないか……って、異世界から来たお前が知らなくて当然か?」
「オスカーさん、俺のレベルが分かるのですか?」
「いや、お前のレベルステータスを見られるわけじゃないが、
さっきの戦いを見てれば大体な」
「レベルのステータスとかが有るのか……」
そう言いかけると、〝レベルステータス〟という颯斗の言葉に反応して、
目の前に、パソコンの画面の様なものが現れた。
「うわっ!すげ~!」
「ん?どうかしたか?」
「目の前にレベルステータスが見えます。
ああ、確かにレベル11となってますね……」
確かに画面ではレベルは11となっている。
通常11/100と表示されるはずなのだが、
颯斗のステータスには11/♾️となっている。
しかし颯斗はそれに気が付かなかった。
「お前自分のレベルステータスが見えるのか?
普通、教会に行って、見てもらうしかないのだが……
レベル11か……まあ、この世界に来たばかりにしては高いんじゃないか?
言葉が通じるのもだが、ステータスが自分で見られるのも召喚者のスキルなのかもな?」
「………………」
「お前さえ良かったら、俺の家に暫く滞在しないか?」
「それは凄く助かります……なにせ、着の身着の儘……
ワイバーンみたいな怪物が居るこの世界で、
右も左もわからない……途方に暮れていますので……
しかし、俺は、貴方にとって身も知らずの異世界人……
お世話になって本当に良いのですか?」
「ああ、お前、悪いやつには見えんからな。
それにイケメンだしな?俺の嫁も娘も歓迎するだろうよ」
「何言ってるんですか?オスカーさんの方が、
よっぽど男らしいイケメンじゃないですか」|
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




