第12話 ガードナー王国の王女
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗は、
勇者召喚に巻き込まれて、異世界に転移する。
自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、
人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。
〝ワァァァ~!〟〝ウォォォォォ!〟
〝下がって下さい!〟〝カンカンカン!ギャ~~〟
「ん?何の音?いや……人の声が混じってないか?誰かいるのかな?
この迷宮は俺1人しか入れないんじゃなかったのかよ?」
〝ゴンッ!〟
確認しようと、音のする方へ進んでみると、
何も無いはずなのに何かにぶつかって頭を打つ。
「いって~~!何だこれ?透明な壁?まさか強化ガラス?……
そんな物、この世界にあるわけないか?結界か?」
通路が透明な何かで塞がれていて、先に進めない。
〝ギャ~~!〟〝ワァァァ~!〟
「やっぱり叫び声だな……何だろ?向こうで何が起きてるんだ?
この切羽詰った叫び声……やばくないか……
あっ、岩場の陰の向こうに少しだけ人影が見える……やっぱり誰か居るな……
戦ってる……まずいな、一方的にやられてる感じだよな?」
〝キャ~~!〟
「女の子の声?クソッ、切って壊せないかこの透明な壁……〝那岐流居合術!〟」
〝カキ~~ン!〟
「だめか……切り裂くには、この剣だと重くて剣速が足りない……
あっ、そうだ、スライムのドロップ品に、
刀みたいなサイズ……あれがレイピアなのか?そんなのあったな」
「これだな……もう一度……〝那岐流居合術!〟」
〝ザシュッ!〟
〝ガッシャ~ン!〟
「よしゃ~!切れた~!」
「何なんだここ?聞いてた以上の難迷宮じゃないか……」
「だから付いてこなくていいって言ったでしょ?
ねえ隊長、このままじゃ全滅よ?戻る事はできない?」
この少女は、ガードナー王国の王女エレーナだ。
南国の海の様なネオンブルーの瞳が綺麗な美少女だ。
「これはやっと開発に成功した、1人しか入れないというこの迷宮に、
多人数で入る為の魔道具です。
今は未だ、入る事だけしかできていない魔道具です。帰る事は出来ません」
「何でそんなリスクのある道具を使ってついてきたのよ?
戻れないなんて私聞いてないわよ」
「申し訳ありません。しかし……いきなりS級の大蛇に襲われるなんて……
ここ本当に1層なんですか?」
「だから不落の迷宮って呼ばれてるのよ?
私だって何度も入ったけど、今まで1層……
しかも15mも進んだ事ないって言ったじゃない」
「姫!危ない!」
〝キャ~!〟
大蛇が牙を剥いてエレーナに襲いかかってきた。
〝ザンッ!〟
危機一髪、横からリックが大蛇の太い首を両断した。
〝ドッサ~ン!〟大きな音を立てて頭が落ちる。
「大丈夫?」
「あ……貴方は?」
「お、お前……何者?」
「姫!そいつから離れてください!魔物かもしれません!
この大蛇を一振りで倒す人間なんているわけがありません」
「魔物?勘弁してくれ……どっから見ても人だろ!
助けてもらっておいて、魔物扱いかよ……」
「30mの大蛇を一振りで倒す人間なんていてたまるか!
先手必勝!やれ!魔道士共!」
「「「はっ!」」」
颯斗の足元に魔法陣が浮き上がる。
「何これ?」
〝ドガシャ~ン!〟
「ウワァァァァァ~~!」
足元が崩れ、真下に落ちる颯斗。
(……真っ暗で方向が掴めない……このまま落ちたらやばいな)
上下も分からず、龍神に貰った飛行のスキルも使えない。
〝バブル結界!〟
〝ボヨヨ~~ン!〟柔らかく跳ねながら何とか無事着地に成功した。
「あっぶね~。体の周りに泡の結界張らなきゃ危なかったな。
助けてやったのに、何してくれるんだよあいつら。
酷い目にあったぜ……ん~……どれだけ落ちたんだろ?ここ何層なんだ?」
〝パンパン!〟と、付いた土を払いながら呟く颯斗。
「ここは最下層、27層だ。よくぞ辿り着いた人間の少年よ」
「辿り着いたわけじゃね~よ。落とされたの……って誰?
真っ暗で、なんか知らんが、炎の赤い模様しか見えやしない」
〝ブワァァァ~~〟
突然、火魔法が飛んでくる。間一髪避ける颯斗。
「あっぶね~!いきなり何すんだよ?」
颯斗をかすめた炎は、辺り一面を一周する。
するとたくさんの壁のランプに火が伝わり、辺り一面明るくなった。
「ウ、ウワァァ!でかっ!」
目の前に、漆黒の龍が現れた。高熱を発していそうな赤い模様に覆われた顔から胸元。
その模様は燃えている。翼を広げると幅20mはありそうだ。
「〝見えん〟と言うから明るくしてやったのだ。
我はこの迷宮のラスボス。ジェットブラックドラゴン。
……おい、こら待て!話を聞け!どこへ行く。」
ドラゴンの話も聞かず、スタスタと後ろを向き歩き出す颯斗。
「ん?上に戻るよ?」
「馬鹿者。我は迷宮のラスボスだと言っただろ。
我を倒さない限り、
迷宮の入り口に転移するドアが開くことはない……ん?何だ?」
上を指差す颯斗。そこには一層までの大きな穴が空いている。
「……穴?……お前、そこから落ちて来たのか?
先程までは、ただ岩肌の天井だったのだが……
そんな縦穴が天井の上にあったのだな?
全く気が付かなかった……」
「1層から落ちたんだぞ?変な魔道具と魔法陣使ってたから、
穴が空いていたんじゃなく、魔法かなんかで開けたのかもな?
そもそもこんな縦穴があったら、迷宮の階層の意味ないだろ?
3層まで潜ったギルマスも、こんな縦穴があるなんて話、してなかったしな?
ま、良いや。じゃあな」
「待たんか!お前の目的は何だ?
この迷宮を制覇する事なのでは無いのか?
なぜ我と戦わない?」
「あんためちゃくちゃ大きいし、強そうだからな……
今、戦っても勝てるかどうか……
俺の目的は2つ。上位の魔物が多いと言われているここで、
レベルアップをする事。
そして、最後にあんたを倒し、報酬を手に入れる事。
だから一層に戻ってやり直してくるよ」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




