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第88話 【虚空】の中で

 何もない虚無の空間。何の音も聞こえない真っ暗な世界で、私は今、ただただ座り込んでいる。あの憎い「黒南風」の最高幹部のスキルによって、亜空間に閉じ込められた。究極魔法を何十発、何百発、何千発も撃った。けれど、何もない空間にただ消えていくだけで、何も起きない。


 「・・・・・・もういやだ。」


 ユリウスのおかげで一気に強くなることができた。「黒南風」の最高幹部とも対等に戦えると思っていた。けれど、現実はそこまで甘くなかった。上位魔法を何回も使えるようになり、魔術までも習得した。しかし、私のスキルは何も変わっていない。


 「・・・・・・レティシアが羨ましい。」


 ユリウスとレティシアから、【天眼】の話を聞いたときはすごく驚いた。スキルが進化するなんて、ありえない。だからこそ、ユリウスやレティシアは【天眼】の使用に懸念を抱いていたのだろう。私も何かの代償があるのではないかと不安に思った。ただ、それと同時に、レティシアがとても羨ましかった。追放されたとはいえ、元貴族なので、言動や所作が美しく、きちんとした礼儀作法を身につけている。私が好きなユリウスにも気に入られている。そして、ゴッドスキルまで手に入れた。


 「私はもう、どうしたら・・・。」


 心の中で渦巻いていた感情が一気にあふれ出し、堰を切ったように大粒の涙が流れ出した。ユリウスも、レティシアも何も悪くない。私の心の弱さがすべての原因だ。


 「・・・・・・師匠。・・・・・・ソフィア。」


 なんだかんだ言いながら、家事や炊事も含めて、一人で生きていくために必要な知識や能力を育ててくれた師匠、時には母のように、時には姉のように接してくれて、私に生きる道を示してくれたソフィア。


 「・・・・・・レティシア。」


 心強い旅の仲間でもあり、私の妹のような存在でもあり、ユリウスを取り合うライバルでもあり・・・そして、私にとってかけがえのない、大好きな友人のレティシア。


 「・・・・・・ユリウス。」


 私の人生を変えてくれた大恩人で、生まれて初めてずっとそばにいたいと思えた人。鈍感なところもあるけど、まっすぐで私たちのことを大事に思ってくれる本当に優しい人。


 「・・・こんなことなら、早く思いを伝えておけば良かった。」


 もう遅い後悔を胸に、私はそっと目を閉じて、このまま最期を迎えることに決め・・・・・・・・・・・・・・・ていただろう、ユリウスに出会う前の私なら。


 「私がここで諦めたら、ユリウスとレティシアに何て言われるか!」


 剣術なんて全然できないユリウスはそれでも、奇妙なお面を被って剣王と必死で戦っている。レティシアも恐怖を押し殺して、「黒南風」の最高幹部から放たれる強烈な殺意と対峙している。


 「弱虫の私はもういない!ないものねだりをしてもしょうがない!私は・・・まだまだやれる!!」


 両目の涙を一気に拭い、立ち上がった私は、もう一度この空間を破ることに専念する決意を固めた。まさか、こんな前向きな気持ちになるなんて不思議だ。ユリウスやレティシアと出会って、精神的に強くなった実感はある。だが、今まるで何かに背中を押されたような、とても優しくて気品溢れる美しい女性が私を奮い立たせてくれたような、そんな感じがした。一体、何だったのだろうか・・・。


 ・・・ううん、今はそれよりも、ここから出る方法を考えないと!


 「でも、最上位魔法である究極魔法でさえ、ビクともしないとなれば、もう・・・・・・。ん、最上位魔法・・・?そういえば、ユリウスが前に・・・・・・」


 私は、ユリウスから800万もの魔力量が付与されたブレスレッドをもらったときの会話を思い出した。確か、魔術の訓練として「ジャイアント・マンティス」を討伐したときの帰り道だったはずだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 「そういえば、二人とも『創始魔法』って聞いたことある?」

 「ソウシ魔法?初めて聞いたけど。」

 「私も聞いたことがない魔法ですね・・・。」

 「それがどうかしたの?」

 「いや、実は転生したときに女神から貰った説明書に、創始魔法っていうのが書いてあったんだよ。究極魔法の上に存在する、本当の最上位魔法みたいなんだけど。」

 「えっ、究極魔法が最上位魔法じゃないの?」

 「でも、もしそれが本当だとしたら、究極魔法を上回る威力ということですよね?・・・この世界が崩壊してしまうのでは・・・。」

 「確かに・・・。」

 「そうか、二人とも知らないのか。変なこと聞いて悪かったな。・・・でも、一応二人とも800万の魔力が使えるんだから、創始魔法も使えると思うぞ?説明書にはたくさん書いてあったけど、とりあえず全属性1つずつ、創始魔法を教えるから、またどこかのタイミングで使ってみて!」

 「ユリウス、そんな無邪気な笑顔で、この世界を破壊するかもしれない魔法を教えようとしないでくれる・・・。」

 「世界を破壊するしかないタイミングなんて、来ないと思いますよ・・・。」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 「世界を破壊するかもしれない魔法か・・・。レティシア、私にはそのタイミングが来たみたい。」


 これから先の人生で使うことなんて絶対にないと思っていたけど、まさか今とは。あのとき、ユリウスが教えてくれて本当によかった。


 「やっぱり、ユリウスは私のヒーローだ。これからもずっと傍にいさせてね。」


 私は恋い慕うあの男を思いながら、彼が嬉々として教えてくれた創始魔法、その中でも得意な水属性のものを唱えることにした。究極魔法を何千発と撃ったが、それでも魔力量はまだまだ余裕がある。ユリウスが練り上げた高品質の魔力量800万は、魔法効率が桁違いなのだ。


 「この亜空間をどうか打ち破って!創始魔法、『水龍白魔』!」


 〔フィオナ、解呪に成功しました。スキルの原状回復が行われます。〕

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