第87話 VS剣王②
「ナツメ、この城ごと木っ端微塵に吹き飛ばすことしか思いつかないんだけど、どう思う?」
『そりゃ、剣王を倒すことはできると思うで。ただ、城の内外におるほとんど全員が死ぬやろうな。』
「ですよね~。」
ナツメとの言う通り、剣王以外の多くの人間を巻き添えにしてしまうため、剣舞城木っ端微塵案はボツだろう。しかし、それ以外のアイディアが全然思い浮かばないのだ。
『ユリウス、ワイに考えがある。やけど、かなりハイリスクな賭けになるで。どうする?』
「それしか打開策がないんだろ?いいよ、俺はお前を信用しているからな。教えてくれ、その策。」
ナツメは少し嬉しそうな表情を見せたあと、俺に作戦を簡潔に伝えた。単純すぎるバカバカしい作戦に思わず笑ってしまったが、俺はその賭けに乗ることにした。
「どうした、ブツブツと独り言を言って?ふっ、まさか自分の死を悟って狂ったのか?やれやれ、どうしようもない奴だ。・・・・・・さっさと死ね。」
冷徹な声とともに、剣王は再び不可視の双剣を俺の心臓と喉元に突き刺した。大量の血を流しながら、俺はそのまま倒れた・・・。
「骨のある奴だと思っていたのだが、所詮はこの程度か。」
剣王はゴッドスキル【雲隠】を解き、ピクリとも動かない俺を見下していた。そして、双剣に付着した俺の血液を振り落とし、背を向けてスタスタと玉座へ歩いて行った
「さて、城外はどうなって・・・ん、どういうことだ?私の【窺知】から侵入者の位置情報が消えていないだと・・・・・・。まさか、そんなはずは・・・!?」
「もう遅い。【神奪】」
「なっ!?」
剣王は驚愕の表情を浮かべながら、俺の【神奪】をくらった。驚くのも無理もない、絶命したばずの俺がこうして生きて眼前に立っているのだから。
「私は間違いなく、生身の人間に突き刺した!貴様、一体どんな手を使った!!」
「魔法でもスキルでもない、ただの・・・祝福だよ。」
「祝福だと!?神に愛されているとでも言うのか!」
・・・神の愛か~。嫌がらせしか受けたことがないからな。もし、あれが神の愛だと言うのなら、あのアホ女神には俺からの愛として、キツいお仕置きを送ってやるぜ!
『ユリウス、どうや?即死から戻ってきた気分は?』
「最悪だよ!めちゃくちゃ激痛だし、一瞬意識が飛んだし、貧血でふらふらするし。」
少しニヤけているナツメが腹立つが、コイツのおかけで剣王を倒す道筋ができたのも事実だ。そう、ナツメが考えた打開策とは、ナツメの加護【不変】を前提にした、あえて即死攻撃を受けて、死んだふりからの【神奪】を使うというものだったのだ。
「まぁいい!何度でも刺し殺してくれるわ!【雲隠】・・・何使えないだと!?」
「スキルもいいけど、その刺し殺すための道具もよく見た方がいいぞ。」
「何を今更、私の魔剣は確実に手元に・・・、何!?」
剣王の双剣は禍々しい輝きを失い、ただの鉄でできた双剣に戻っていた。なるほど、魔剣とはいえ、魔力が吸収できなくなると、ただの刀剣になるのか。
「まさか、貴様、私の魔力を全て奪ったというのか!?」
「ご明察。というわけで、拘束させてもらうぞ、『エタンセルパラリシス』。」
「なっ!?」
俺は麻痺魔法を使って、剣王を拘束した。ここで殺すこともできるのだが、それは俺の仕事ではない。剣王を生かして牢獄に入れるのか、それとも処刑するのか、それは剣王国の国民や剣王の弟・妹たちが決めることだ。ただ・・・
「ノアが苦しんだのはお前のせいだから。ノアに代わって、俺がぶん殴るわ。」
「えっ、グハッ!!!」
「魔装」を纏った握りこぶしを、剣王の左頬にお見舞いしてやった。もちろん、本気で殴ると殺してしまうので、手加減はしたが、それでも歯が何本か折れ、頬骨も複雑骨折しただろう。
「さて、こっちは終わったけど、城外はどうなったかな。」
俺は完全に伸びきった剣王を肩に担いで、剣王の間の大きな窓から、城の庭に飛び降りた。




