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スキルが1つで、何が悪い?  作者: あっつん
第1章 第1部
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第5話 初めての異世界人との交流

 俺と美少女は、息絶えた『インペリアル・エイプ』を見下ろしていた。冒険者パーティー(?)の3人は、怪我の手当てに集中している。


 「あ、あなた、一体何をしたの・・・?」


 美少女は、顔を引き攣らせながら俺に聞いてきた。


 「何って・・・ただ、ファイアーボールをぶつけただけですが・・・。」

 「いやいや、そんな冗談はいいから。」


 いや、全然ジョークじゃないんだけど。むしろ、何が起こったのか、俺が聞きたいぐらいですわ。なにこれ、どゆこと?もうオーマイガーを通り越して、What’s happenedだよ。


 俺たちが話していると、後ろから怪我の手当てを終えた男女3人が近づいてきた。 


 「あ、あんた一体、何者だ?」


 ガタイの良い小柄な中年男性が険しい表情で俺の顔を覗き込んだ。


 「何者と言われましても・・・。」


 「ついさっき転生してきた者です!よろしくお願いします!」なんて言ったら、余計怪しまれるだろう。まぁ、そもそも信じてくれないと思うが・・・。ここは、適当に身分を偽るしかないな。


 「た、ただの旅人ですよ・・・。」

 「ふーん、ただの旅人ね・・・。」

 「あはは・・・。」


 苦笑いで誤魔化そうとしたが、猫目の若年女性は俺の答えに納得いっていない感じだ。まぁ、そりゃそうか。自分でもいまだに信じられないけど、俺が一撃でこの化け物の腹を貫通させて、倒したんだからな。


 「あの閻魔種を一撃で倒せるほどの実力者ですから、きっと何か言えない理由でもあるんですね。これ以上の詮索はやめておきましょう。」

 「ま、まぁ、そんな感じです・・・」


 痩身の眼鏡の男性が何かを察したように、俺の目を見て「無理して言わなくていい」と訴える。うん、絶対に勘違いしてるけど、面倒くさいし、このままにしておこう。


 「おっと、自己紹介が遅れたな。俺はDランク冒険者のブラント。アックス(斧)使いで、冒険者パーティー『如月』のリーダーをしている。ヤバイところを助けてくれて、ありがとうな。」


 体格の良い中年男性―ブラント―は、ゴツイ両腕を少女と俺に差し出した。


 「私は、アーチ(弓)使いのティルザ。同じくDランクよ。本当にありがとう。助かったわ。」


 猫目でモデル体型の女性―ティルザ―は、少女と俺の目をまっすぐ見て感謝を伝えた。


 「僕はロングソード(長剣)使いのルシオです。まだEランクの未熟者です。命を救っていただき、感謝いたします。」


 痩身で気弱そうな眼鏡男性―ルシオ―は、深々と頭を下げた。


 予想通り、この男女3人は冒険者パーティーのようだ。この世界のランクが何段階あり、どのような基準で決まるのかは分からないが、DランクやEランクということは、そこまで強くないのかもしれないな。『インペリアル・エイプ』にビビッていた感じからも、そう思える。おっと、俺も自己紹介しないとな。


 「俺は・・・」


 ここで俺は、自分の生前の名前をそのまま言うべきか迷った。ブラント、ティルザ、ルシオという3人の名前から推測するに、この世界の名前は、生前の欧米の名前に類似している。それに、名字とか家名があるのかが分からない。名乗るときには名字や家名を省略するのか、それとも、そもそも名字や家名の概念がないのか。う~ん・・・。


 数秒悩んだ末、俺は転生したこともあるので、新たな名前を自分につけることに決めた。せっかくの生まれ変わったのだ。新しい人生を歩む第一歩として、「佐藤優紀」という名前を封印するのも悪くない。


 「俺は、ユリウスといいます。諸事情で、今は旅を続けています。ただ、その諸事情については、あまり詮索しないでいただけると助かります。皆さんにもご迷惑をおかけすると思うので・・・。」


 転生後の名前は、共和政ローマ期の有名な政治家・軍人の人物から拝借した。何となく、名前の響きも良いし。


 「私の名前はフィオナ。私も『とある目的』があって、ずっと旅をしているの。3人が無事で良かった。」 


 小柄で細身な美少女―フィオナが淡々と自己紹介をした。フィオナは山吹色の刺繍が少し入ったローブを着ており、いかにも旅人という感じだ。まぁ、それ以上にめちゃくちゃ端正な顔立ちなんだけど・・・。


 「さてと、これからどうするかだが・・・。」


 全員の自己紹介が終わったあと、ブラントが今後の行動について言及した。 


 「俺たちは、ギルドから受けた薬草と鉄鉱石の採集依頼の途中だったんだけどよ・・・。」

 「採集した物を運ぶ荷車がこれじゃあね・・・。」


 ブラントとティルザは、大破した荷車をため息まじりに見つめた。確かに、あの状態では依頼達成どころではないな・・・。


 「というわけで、俺たちは一度ギルドに戻って、事の顛末を報告してくる。」 

 「ユリウスさんが倒した『インペリアル・エイプ』の死体も、ギルドに回収してもらわないといけませんし。」


 ルシオの言葉で俺はハッとした。これはヤバいぞ・・・。


 「あの・・・すみません・・・。こんなことを言うのも何なんですが、『インペリアル・エイプ』を倒したのは、僕以外の誰かということにしてくれませんか?」


 彼らの反応から察するに、閻魔種の『インペリアル・エイプ』を討伐することは、非常に難しいのだろう。つまり、俺が一撃で討ち取ったということが広まれば、一気に悪目立ちしてしまう。ただでさえ、アホ女神によってよく分からないスキルを付与されたのだ。変に目立つことは、何としても避けたい。


 「えっ、あんた正気か?『インペリアル・エイプ』をたった1人で倒したとなれば、叙勲ものだぞ?安定した将来が確定するのにいいのか?」

 「褒賞金もかなり支払われるわよ?勿体ない。」

 「もしかして、また諸事情というやつでしょうか?」


 ブラント、ティルザ、ルシオの冒険者パーティーは、「うわ、こいつマジかよ。」という視線を送ってくる。だが、その厳しい視線に屈するような俺ではない。こんなことで悪目立ちすれば、何をされるのか分かったもんじゃないからな。


 「ま、まぁ、そんなところです。それに、フィオナさんの凄まじい攻撃で弱っていたところに、俺がトドメの一撃をくらわせた感じなので・・・。だから、倒したのは、実質フィオナさんですよ。叙勲とか褒賞金とか、そういうのはフィオナさんが受け取るべきかと。」


 俺より先に到着し、3人を助けようとあの「化け物」にただ一人で対峙していたフィオナこそが、正式に称えられるべきだろう。俺なんかより、フィオナの方が本当にすごいと思う。


 ・・・あれ?フィオナがすごく険しい顔で俺の方を見てるけど、どういうこと?めちゃくちゃ怖いんですが・・・。


 「そうか、ユリウスがそう言うなら、ギルドにはフィオナが『インペリアル・エイプ』を討伐したと報告しておこう。」

 「すみません、ありがとうございます。」


 ブラントが、話が分かるおっちゃんで良かった。これで、悪目立ちせずに済むだろう。


 「フィオナもそれでいいか?」

 「申し訳ないけど、私もユリウスと同じで、名前を出すのは避けてほしい。」


 俺はフィオナの言葉に衝撃を受けた。おいおいおい、マジかよ、あんた!!悪目立ちを何とか回避したと思ったのに、こんなところに思わぬ伏兵がいたとは!!クソがっ!!


 「おいおい、あんたもかよ・・・。」 


 ・・・よし、ブラント!もっと押していけ!フィオナが倒したことにしろ!さぁ!ほら!!

 

 俺は心の中で、ブラントを必死で応援した。いや、応援しまくった。


 「適当に、通りすがりの凄腕冒険者が倒したということにするのは?怪我の手当てをしている間に、その冒険者がすぐに去ってしまったって言えば、大丈夫でしょ。」

 「うーん、ギルドが信用するかどうか分からないが・・・。まぁいいか。そう報告しよう。」

 「ありがとう、助かる。」


 ・・・おい、おっさん!なに妥協しているんだよ!もっと粘っていけよ!フィオナの口車に乗るんじゃないよ!そんなんじゃ、いつかJKのおやじ狩りに遭うぞ!!


 俺の熱烈な応援はついぞ届かなかったが、結果的に目立つことはなくなったので、まぁ良しとしよう。


 「それじゃ、俺たちはギルドに報告してくる。おそらく、『インペリアル・エイプ』の素材の一部が報酬として貰えるはずだから、ここら辺で待っててくれ。」


 そう言い残すと、ブラントたち冒険者パーティーはギルドに帰還するため、森の奥へと足早に消えていった。

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