第84話 VS ニコラス①
「に、ニコラス様・・・!も、申し訳ございません!」
「精鋭を集めたつもりだったが、ギルドヘッドはともかく、女1人も殺せないとは。はぁ・・・。こんな失態、他のカルティアたちに何て言われるか・・・。」
「い、今すぐ始末しますので・・・」
「お、お待ちいただければ・・・・」
「もういい、お前ら。ゴッドスキル【夜凪】。」
ニコラスがゴッドスキルを唱えた瞬間、その場ニュメロ全員が苦しそうな顔をし、バタバタと倒れていった。
「おいおい、可愛い部下だろ?殺していいのか?」
「碌に仕事もできない部下など、虫けら同然だ。生きている価値がない。」
ディランの言葉に、ニコラスは冷淡な表情で答えた。ニコラス自身、腹が立つというよりも呆れているのだ。ここまで、自分の部下が無能だったとは。
「こいつらがレティシアを暗殺している間に、俺はユリウスとかいう男と遊ぶつもりだったんだが・・・。ユリウスはどこだ、西京県のギルドヘッド、キョウスケ・タチバナ?」
「貴様に教えるわけがないだろ。・・・貴様、何者だ?」
「俺は『黒南風』の最高幹部カルティアが一人、「ヴァレス」の名を冠するニコラス・ファウルズだ。まぁ、どうせここにいる全員が死ぬんだ。覚えたところで意味はないと思うぞ。」
「コイツが、ユリウスが言っていた、あのニコラス・・・。」
ニコラスは、死体となった部下たちを踏みつけながら、徐々にディランたちに近づいていった。
「それ以上近づいたら、容赦なくお前をぶち殺すが、構わないか?」
ディランは臨戦態勢に入りながら、ニコラスを挑発した。ただ、ニコラスは涼しげな顔のまま、そのまま歩を進めた。その瞬間、ディランが放った火属性の究極魔法「インフェルノケルカ」と、キョウスケのゴッドスキル【残響】による無数の衝撃波がニコラスを襲った。
「はぁ・・・。こんなんで、コイツが死ぬわけないか。」
「やれやれ、本当に厄介な奴が出てきたな・・・。」
ディランとキョウスケの強烈な攻撃をくらったニコラスだが、何事もなかったかのように一歩一歩前へ進んでいる。ニコラスにとっては、ギルドヘッドなど、そもそも眼中にないのだ。
「お前らごときでは、相手にならない。早くユリウスの居場所を・・・」
「プリズンヘレネーヴェ!」
「インフィニートシュタール!」
対象を激流の監獄に閉じ込める、水属性の究極魔法「プリズンヘレネーヴェ」と、無数の玉鋼塊が対象に高速でぶつかっていく土属性の究極魔法「インフィニートシュタール」がニコラスに直撃した。
「「・・・・・・・・・。」」
ディランとキョウスケは、可憐な美少女2人が放ったとは到底思えない、国家1つを消滅させられるような威力の魔法攻撃にただ口を大きく開けるしかなかった。
「どうで、これでも倒れなんでしょ。」
「おそらく。」
フィオナとレティシアは、苦々しい顔をしながら、ニコラスの方を見た。すると、無傷ではあるが、ニコラスを歩みがついに止まっていた。
「アハハハハハハッ!!いいね、いいね~!ギルドヘッドよりもクソザコだと思っていた女2人がここまでできるとは!ユリウスを殺す前の準備運動にはちょうどいいね~!」
「気持ちわる。鳥肌が立ったんだけど・・・。」
「私も拒否で嘔吐しそうです・・・。」
恍惚とした表情でフィオナとレティシアを見つめるニコラスに対し、2人は非常に冷たい視線を浴びせた。フィオナとレティシアにとって、見つめられて嬉しい視線などこの世でたった一人しかいないのだから。
「女ども、これぐらいでは死ぬなよ?」
ニコラスはそう言うと、火属性・水属性・雷属性・土属性・闇属性の究極魔法を連続で、フィオナとレティシアに向かってぶつけた。
「なっ、5属性使いだと!?」
「しかも、究極魔法を使うなんて・・・。」
ディランとキョウスケは、ニコラスの怒濤の魔法攻撃に驚きを隠せなかった。2~3つの属性適性を持つことそこまで珍しいことはないが、4つになると話は変わってくる。4属性使いは、世界の全人口の十数%しかいないのだ。そのうえ、5属性になると、わずか数%になる。
「たった5属性の究極魔法がどうしたの?」
「適性属性数も威力も、ユリウスさんの足元にも及びませんね。」
「「なっ・・・・・・・・。」」
ニコラスの攻撃を全て無傷で受けたフィオナとレティシアは、服についた砂埃をはたいていた。その姿を見たギルドヘッド2人は驚きのあまり、固まってしまった。
「なるほど、なるほど。究極魔法すら通らない防御魔法か結界魔法を構築しているようだな。なら、次はどうかな?」
「「っ!?」」
ニコラスの「魔装」による強烈な蹴りがフィオナとレティシアを襲い、2人は数百m後ろに吹き飛ばされた。練習して身につけた渾身の「魔装」でガードしたが、それでも身体の芯まで響く威力だった。そして、何より驚いたのがその速度であった。
「何、今のスピード・・・。」
「『魔眼』でも、全然見えなかったです。」
2人とも「魔眼」を発動したが、それでも一切ニコラスの動きを視認することはできなかった。一瞬のうちに、眼前までニコラスが移動し、凄まじい威力で蹴り飛ばしたのだ。
「これも防ぐのか!いいねぇ、そうこなくちゃ!もっと粘ってくれよ!!」
ニコラスは先程よりもさらにスピードを上げ、フィオナとレティシアに襲いかかるのだった。
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