第81話 2人の救出
キョウスケ・タチバナは、紺色の短髪が良く似合う超絶イケメンで、細マッチョというべきガタイしていた。年齢は30代前半くらいだろうか。ギルドヘッドというには若すぎる気がしたが、ディラン曰く史上最年少でギルドヘッドに登りつめた天才らしい。剣舞城に進む道中に、フィオナやレティシアも含めキョウスケと色々と話をしたが、誰に対しても分け隔てなく友好的に接する人物でディランと馬が合うのも分かる気がした。
・・・イケメンで性格も良くて、そのうえギルドヘッドとか、理想的すぎる!
俺はフィオナとレティシアがキョウスケに一目惚れするんじゃないかと思っていたが、案外2人の対応はあっさりしていた。現在俺がキョウスケに聞こえない声で、フィオナとレティシアに「キョウスケさん、女性ならすぐに飛びつく優良物件すぎるけど、どうしてそんなに反応が薄いんだ?」と尋ねたら、2人同時に「魔装」で思いっきり腹を殴られた。うん、なんでぇ~?乙女心というものはよく分からない・・・。
『ホンマにユリウスはアホやで。』
『えぇ、こういうところは初代勇者様にそっくりです。』
ナツメとリツは、主人であるユリウスに聞こえない声で、ため息交じりに呟いた。
剣舞城前に到着後、俺は城内へ乗り込み、ディラン・キョウスケ・フィオナ・レティシアの4人が城周辺の警戒にあたることにした。
「俺の探知魔法によると、約7㎞先からこの剣舞城に黒南風の連中が向かってきています。かなりの手練れのような感じです。」
「そうか、分かった。そいつらは、俺たちが相手をしよう。ユリウスは捕らえられている次男と長女の救出と剣王の拘束を頼む。」
「分かりました。」
「ユリウス殿、西京県のギルドヘッドとして改めて感謝申し上げる。ともにこの国を救いましょう。」
「キョウスケさん、頭をあげてください。『黒南風』は俺たちの敵でもあります。こちらこそ、ご協力感謝します。」
俺は、ディランとキョウスケと今後の動きについて最終確認を行った。
「ユリウス、無事に帰ってきてね。」
「ユリウスさん、どうかご無事で。」
「あぁ、もう油断しないし、いざとなったら切り札を使う。すぐに戻って来るよ。」
フィオナとレティシアは俺の身を案じているのだろう。何とも嬉しいものだ。
こうして俺は不可視魔法をかけ、城内へ潜入することに成功した。
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「さてと、まずは次男と長女の救出に向かいますか。」
俺は急いで、地下牢へと向かった。キョウスケから地下牢の位置を教えられていたので、迷うことなく到着することができた。もちろん、不可視魔法をかけているため、すれ違った何十人もの衛兵たちは俺に一切気づいていない。
「グッ。」
「ハッ。」
「ウ゛ッ。」
「グハッ。」
俺は地下牢の中と外を守っていた衛兵4人の腹に、死なない程度に強烈なパンチをお見舞いし、気絶させた。麻痺魔法でも無力化できるのだが、口だけは動いてしまうため、他の衛兵を呼ばれてしまうリスクがある。
「な、何!?何が起きたの?」
「誰かそこにいるのか!?」
地下牢の奥の方から、男性と女性の声が1人ずつ聞こえてきた。
「助けにきました。私は正義のヒーロー『ビートル』。以後お見知りおきを。」
俺は不可視魔法を解除し、2人の前に登場した。決して俺の正体がバレてはいけないので、丹精込めて作った仮面ラ〇ダー風の衣裳を着ている。フィオナやレティシアからは、「キモイ」という激辛評価だったかが、ディランとキョウスケだけは「カッコイイ」と言ってくれた。さすが、ロマンが分かるぜ。
「えっ、キモっ・・・。」
「カッコイイ!」
案の定、女性は引いており、男性は目をキラキラと輝かせている。
「すみません、事情があり、素性を明かすわけにはいかないのですが、お二人を助けにきました。城外では西京県のギルドヘッドも待っています。」
「なるほど、キョウスケの仲間か。」
「え、兄さん?この気持ち悪い人を信じるの?正気?絶対頭おかしい人よ?」
おっと、お嬢さん。助けられる身なんですから、言葉は選んだ方がいいですよ~?
「いやいや、カッコイイだろ?ビートルさん、俺たちをここから出してください!俺はデイモン・レオンパルド、現剣王の弟です。」
「はぁ・・・。兄さんがそういうなら、この人を信じるよ。ビートルさん、先程はすみません。私はロビン・レオンパルドで、現剣王の妹です。どうか、私たちを助けてください。」
次男のデイモンは、キョウスケに近い細マッチョの体型で、よく鍛えられているのが分かる。年齢は20代後半くらいで、言動も含めザ・好青年という感じだ。一方、長女のロビンは可憐な見た目でありながら、冒険者に近い血気盛んな雰囲気を感じる。年齢はフィオナと同じくらいだろうか。
「もちろんですよ。そのために私が来たんですから。」
「ただ、ビートルさん。この檻は・・・」
「よいしょ。あれ?何か言いましたか?」
「「・・・・・・・・・。」」
俺は「魔装」を纏い、堅牢な檻をすぐに破壊した。思ったよりも頑丈ではなかったので、拍子抜けした気分だったが、デイモンとロビンは目を丸くして驚いている。なぜだろうか。
「え、兄さん。この檻って確か、閻魔種の攻撃も防ぐはずじゃ・・・。」
「やめろ、言うな。その事実から今、目を背けているんだから・・・。」
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