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スキルが1つで、何が悪い?  作者: あっつん
第2章 第1部 
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第80話 革命の開始

 翌日、俺たちはそれぞれの準備に向けた動き始めた。ディランはキョウスケ・タチバナとの会合に、フィオナは、「ソフィア」という「白南風」の最高幹部宛ての手紙を出しに、レティシアはリツと特訓に出掛けていった。ただ、ノアは特別警邏隊に見つかってしまう危険があるため、俺たちと宿屋のスタッフ以外には見えない条件の不可視魔法をかけた上で、自分の部屋に籠ってもらった。また、ノアを危険な目に遭わせるわけにはいかないので、今回の騒動には当然不参加となっている。ノアは少しごねていたが、フィオナやレティシアの説得もあり、部屋で待機することを了承した。


 ディランは、現剣王及び「黒南風」と事を構えることを伝えるとともに、キョウスケとの共闘を打診するつもりらしい。ディラン曰く、十中八九、キョウスケも今回の騒動に関与してくれるとのことだった。2か国の首都のギルドヘッドが参戦するのだ、非常に心強い。


 フィオナは、ソフィアの部下が西京県にもいるそうなので、その人のもとに手紙を手交しに行った。ついでに、ネルヴァの話は少し胡散臭いとのことで、「黒南風」の直近の行動について情報収集するそうだ。俺はまだ、ネルヴァに会ったことはないが、「白南風」と協力関係にあるフィオナがそこまで忌み嫌う人物なのだ。ぜひ一度、この目で確かめてみたい。


 レティシアは、ゴッドスキル【天眼】を使用する機会をできる限り少なくするため、リツと2人で近くの荒原に魔法や魔術の特訓に向かった。リツの救出を経験したことで、レティシアの中にある何かが変わったのだろうか。今回のように、強くなるために積極的に動くレティシアは、初めて見た。


 一方、俺は自分の部屋で、正体を隠すための「仮面」と「衣装」づくりに勤しんでいる。


 『ユリウス、それが完成した仮面か?』


 一生懸命俺が仮面と衣装を製作しているその横で、寛ぎながら宿屋のお菓子を頬張ってるナツメが尋ねてきた。


 ・・・おい、俺のベッドの上にこぼすなよ。


 「あぁ。元いた世界で、俺が一番好きだった仮面のヒーローのデザインを参考にさせてもらった。なかなかカッコイイだろ?」

 『ワイには、変な仮面にしか見えへんで。』

 「お前、少しはオブラートに包めよ。」


 俺が「仮面」をつけるとなって、真っ先に思い浮かんだのが、毎週日曜日の朝を彩っている「仮面ラ〇ダー」である。幼少期の頃、俺が一番ハマっていたのが「仮面ラ〇ダー カ〇ト」だったので、今回はそれをオマージュした仮面を製作した。


 ・・・我ながら、見事な角だ!


 俺は、土属性の究極魔法「メルヴェイユフュージョン(物質融合魔法)」と、上級魔法「ファブリケーション(工作魔法)」を上手く活用しながら、手持ちの素材(余った「天鋼」やAランクのクエストで手に入れた魔獣の素材など)で仮面と衣装を丁寧に作っていった。「魔術」を習得したおかけで、魔力操作は朝飯前である。細部にもこだわったものができた。もちろん、工作魔法を使えば、フィオナとレティシアのブレスレットも俺が一から作ることはできるのだが、俺個人には装飾品のセンスがあまりないので、既製品の方が断然良いと思った次第だ。ただ今回は、俺が自分で着用する仮面と衣装なので、自分のセンスで製作してみたかった。ナツメには不評だが・・・。


 「これで完成と。・・・よし、サイズはピッタリだな。」

 『なんや、怪しい雰囲気満載やな。』

 「そうか?俺はめちゃくちゃカッコイイと思うぞ。」

 『ユリウスのセンスがおかしいだけちゃうか?』


 ・・・お前、他の聖獣から絶対嫌われてただろ。


 ナツメの言葉の暴力に傷つけられつつ、俺は完成した仮面と衣装を脱ぎ、収納魔法の中に入れた。ちなみに、俺のブレスレットのおかけで、フィオナやレティシアも収納魔法が扱えるため、2人はよく色んな物を収納している。


 ・・・そういえば、ブレスレットをあげた際、収納魔法が使えるようになったことに一番喜んでいたな。


 「さて、次は俺の武器をつくらないと思ったんだが・・・・・・。」

 『ユリウスって、そこまで馬鹿やったか?』


 ナツメは、部屋のテーブルに転がっている「天鋼」の破片を見ながら呆れたように呟いた。今回ばかりは、ナツメの言っていることが正しい。俺は、本当に馬鹿野郎だ。


 『さっきのヘンテコな仮面と服に『天鋼』を使い過ぎや。こんなちょびっとの素材じゃあ、武器なんて作れへんで。』


 俺は「仮面ラ〇ダー カ〇ト」の仮面&衣装づくりに夢中になりすぎてしまい、武器用に残しておくべきだった「天鋼」まで使ってしまったのだ。眼前にある少しの破片で、立派な武器など作れるはずがない。


 「『魔装』の手刀で倒せると思うか?」

 『相手は、当代随一の剣技の使い手の剣王なんやろ?刀か剣か分からへんけど、その武器も恐らく相当な代物やで。よくて両腕切断ちゃうか?』

 「で、ですよね・・・。」


 魔法・魔術・スキルは使用できるとはいえ、俺は現剣王に丸腰で挑むことになる。現剣王の剣技がどれほどの速さなのか想像もつかないが、「魔眼」で視認しつつ、早々に【神奪】を使うのが得策だろう。


 ・・・今回ばかりはアルカナスキル【神奪】に頼るしかないか。


 『剣舞城には、見張りや護衛がようけおるやろ。痺れさせたあと、そいつらのをどれか奪ったらええんちゃうか?』

 「ナツメ・・・グッドアイデア!!」


 俺はナツメの提案に、親指をグッと立てた。発言内容については、「聖獣」と呼ばれる存在のものとは思えないが、ある程度の強さの武器を俺が簡単に手に入れられる方法としては最適だろう。所持金も素材もカツカツの俺には、もうこれしかない。それに、武器を強奪するといっても、現剣王を倒したあとはしっかりお返しするつもりだ。つまり、形式的には「奪取」かもしれないが、実質的には「拝借」なのだ。全く問題ないはずだ。たぶん、知らんけど。


 その後、俺は街中で現剣王の情報収集を行った。そして、フィオナやレティシア、ノア、ディランと夕食を食べ、ディランの部屋で明夜決行の件についてじっくりと話し合った。今回の作戦の内容は、非常にシンプルである。全員で剣舞城周辺まで向かうが、単独で俺が剣舞城に乗り込み、現剣王を倒す。その後、現剣王から「黒南風」が潜伏している場所を吐かせ、手分けしてそのアジトを襲撃するというものだ。ただ、剣舞城やその周辺に「黒南風」がいる可能性も十分考えられるため、常に警戒しておかなければならない。


 翌朝以降も、各人で必要と思われる行動をとった。俺は、昨晩から明朝までフィオナとレティシアのブレスレットに、魔力をMAXまで充填していたため、ゆっくりと休むことにした。現剣王に挑むのだ、万全を期すに越したことはない。



 そして、夜の帳が下りた。俺たちは、全身を黒装束に身を包み、剣舞城へと歩を進めた。ついに、俺、フィオナ、レティシア、ディラン、キョウスケの5名によるレオンパルド剣王国に巣食う闇を祓う作戦が開始されたのだ。



 のちに、レオンパルド剣王国で起きた、勇者・剣王・ギルドヘッド・黒南風・白南風が入り乱れたこの大騒乱は、「レオンパルド一夜革命」と呼ばれ、後世に語り継がれることとなる。


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