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第74話 「白南風」の最高幹部

 ユリウスたちがリツの救出を行っているとき、フィオナは西京県にある「白南風」の拠点に向かっていた。「白南風」の拠点は世界各地に存在しているが、西京県の拠点は「白南風」の最高幹部「ファルベ」の1人が管轄している。


 「正直、あの人嫌いなのよね・・・。」


 私は西京県の街中を歩きながら、これから会う「ファルベ」のネルヴァのことを思い出した。以前にプロメシア連邦国内で接触する機会があったが、そのときから印象は良くない、というか最悪だ。「白南風」の最高幹部で、「ルージュ」の名を冠するネルヴァは、非常に強い人物なのだが・・・。


 ・・・さっさと情報交換して、ユリウスたちと早めに合流しないと。


 私は西京県の中心地から少し離れたところにある、ネルヴァの拠点に着いた。路地裏の壁面の一部が特殊な魔法で覆われており、「白南風」の構成員がもつ「純白の仮面」にのみ反応するようになっている。昔、ネルヴァに会った時には、「白南風」のトップである「総裁」がこの魔法を創造したと言っていたが、真偽は定かではない。


 私は、「白南風」に所属していないが、幼少期から色々と世話を焼いてくれたソフィアから、「純白の仮面」をもらっており、スムーズに拠点に入ることができた。ちなみに、ソフィアも「ファルベ」の1人であり、「ヴェール」の名を冠する。なお、「幸福亭」が襲撃されるという情報は、ソフィアの部下たちから聞いたものだ。


 「あれ、誰かと思えば、フィオナじゃないか!この僕に会いに来たのかい?」


 拠点に入るや否や、ネルヴァが私に近寄ってきた。ネルヴァの拠点内部は、巨大な書斎のようで、拠点規模としては「ファルベ」の中でも大きい方だ。ネルヴァの部下たち数十名も私に気づき、軽く会釈をしてくれた。情報を整理する者もいれば、魔法やスキルの研究をする者、アイテムや道具を調達・改良する者だと、拠点に来ると、「白南風」の分業体制がよく分かる。


 「ネルヴァさんに会いに来たのは確かですが、目的は情報共有です。勘違いしないでくださいね。」

 「相変わらず、フィオナは冷たいね~。まぁそういうところも、好きなんだけどね~!」


 ネルヴァは、20代後半と若くして、「白南風」の最高幹部にのぼりつめた実力者だ。顔も世間一般的にはカッコ良く、ユリウスには申し訳ないが、ネルヴァの方がいわゆるイケメンと呼ばれる男性だろう。


 ・・・まぁ、私はユリウスの顔も好きだけど。


 しかし、私はネルヴァのナルシスト感がどうも苦手である。むしろ、気持ち悪いとさえ思う。


 「好きとか、そんな冗談は良いですから、早く情報を交換しましょう。」

 「えぇ~、冗談じゃないのにな~。まぁ、情報は僕も欲しいところだから、早く済ませようか。」


 こうして、私とネルヴァで色々と「黒南風」に関する情報共有を行った。私はこの前、大森林アルゲンティムやキングヴァネスで起こった、閻魔種の大量発生事件や「黒南風」の諜報部統括エゼルの逮捕などを伝えた。師匠の助言もあり、レティシアのことは何も話さなかったが、ユリウスの名前を出すかどうか、とても迷った。ただ、「白南風」の情報網は非常に優秀なので、ユリウスの存在は確実に認知されているはずだ。ここで名前を伏せる方が怪しまれると思い、私はユリウスの名前を出すことにした。もちろん、転生や魔力量、スキルなどについては一切喋っていない。ネルヴァからも、ユリウスについて多くの質問があったが、うまく濁した。


 ・・・そこまで、ユリウスのことが気になる?


 ネルヴァは、ユリウスの情報をかなり引き出そうとしているように思えたので、私が「師匠のナターシャ様からかなり気に入られて、後継者にも指名されている」と伝えたら、めちゃくちゃ顔を引き攣らせ、それ以上質問されることはなかった。さすが、師匠。ありがとうございます。


 ・・・私は、これからもユリウスと一緒にいたいんだから、あなたなんかに言うわけないでしょ。


 他方で、ネルヴァからも、色々と「黒南風」に関する情報を聞くことができた。また今日、ユリウスやレティシアにも共有しなければならない。


 1時間程度で、情報共有が終わり、私はすぐに立ち去ろうとした。


 ・・・早く合流できれば、ユリウスと街中を観光できるかもしれないし!まぁ、レティシアもいるけど。


 「それじゃあ、これで私は失礼します。ネルヴァさん、貴重な情報をありがとうございました。」


 心の中で、ユリウスたちとの観光を楽しみにしながら、私はネルヴァに一礼した。そして、テーブルに出されていたお茶を一気に飲み干し、足早に拠点から出ていこうとしたが、パシッと右腕を掴まれた。


 「せっかく来たんだ、もうちょっと、ゆっくりしていったら?」

 「いえ、仲間たちを待たせているので。あと、腕離してください。」


 ネルヴァに腕を掴まれた際、私は嫌悪感でいっぱいになった。私に触れていい男性は、あの人と決まっている。私はすぐにネルヴァの腕を振りほどいた。


 「あぁ、ごめんね。・・・・・・あれ?」

 「・・・何ですか?」


 軽蔑の目を向けている私を見ながら、ネルヴァは首を傾げた。意味が分からない。


 「いや・・・その・・・」


 ネルヴァは急に歯切れが悪くなった。


 「もういいですか?では、失礼します。」

 「まぁまぁ。」

 「ちょっと!!」


 退出しようとする私の右腕を、ネルヴァはもう一度掴んだ。私の嫌悪感はピークになり、思いっきり振りほどこうとしたが、今度はびくともしない。


 「僕は君が大好きなんだよ、だからもう少し話そうじゃないか!」

 「私は、あなたのことが嫌いです!やめてください!」

 「またまた~!それに、俺のスキルは知ってるだろ?フィオナでは、振りほどくことはできないよ!」

 「はぁ~・・・・・・後悔しても、遅いですからね。」

 「?」


 ネルヴァがスキルを使用した状態で、徐々に私に近づいてくる。このままだと、抱き着かれる可能性もある。


 ・・・まさか、ここまでするとは・・・。本当に気色悪い。


 この前は、ソフィアと一緒のときに遭遇したので何もなかったが、今日は私1人なので、好き放題するつもりだったのだろう。ただ、ネルヴァは一つ大きな誤解をしている。前に出会った私と、今の私が同一人物であると。


 ・・・ユリウス、本当にありがとう。


 ユリウスに会う前の私であれば、ネルヴァに抵抗できずに、ただ泣き寝入りするしかなかっただろう。しかし、ユリウスのおかけで、今の私は、ネルヴァに余裕で抵抗できてしまう。ユリウスには感謝しかない。


 「『魔装』!」

 「なっ!!ぐはっーーー!!!」


 私は「魔装」を両腕に展開し、素早くネルヴァの腕を振りほどいた。そして、振り向きざまに、渾身の左ストレートをネルヴァのお腹に食らわせた。もちろん、本気でやれば腹を貫通してしまうので、手加減はしたが、それでもネルヴァはもの凄いスピードで後方まで吹っ飛び、思いっきり壁に激突した。


 「えぇ、これでもかなり手加減した方なのに・・・。」


 やはり、魔力量が800万というのは、化け物すぎる。もう少しコントロールできるようにならなければ。


 「な、なぜ、だ・・・。そ、それは、ま、『魔術』、だろ・・・?つ、使える、はずがない・・・。」


 壁にめり込んだネルヴァが恨めしそうに、私を睨みつける。何とも惨めな姿だ。


 「私を含めて、常識で測れない人物が、この世にはいるってことです。・・・でも、私1人でここに来て良かったです。もしユリウスがいたら、ネルヴァさん、良くて人格崩壊、最悪即死でしたからね。」


 私は、かつてレティシアと私にナンパしてきたAランク冒険者たちの末路を思い出した。今、ここにユリウスがいたら、ネルヴァはどうなっていたのか。想像するだけで恐ろしい。


 「それでは、これで本当に失礼します。あなたとは、二度とお会いしませんので。・・・あっ、この件はソフィアの部下を通じて、ソフィア本人に伝わるようにしておきますから。」


 少し溜飲が下がった私は、ビビっているネルヴァの部下たちを横目に、堂々と拠点をあとにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 「ね、ネルヴァ様、大丈夫ですか!?」

 「すぐに、回復魔法をおかけします!」


 フィオナが退出した後、ネルヴァの部下たちは急いで、ネルヴァの傷の回復や壁の修繕などを行った。


 「クソが!!あの女、舐めやがって!!」


 ネルヴァは、完全に格下と思っていた相手に手も足も出ず、かなり激昂した。突然のフィオナの来訪に驚きはしたが、前々から自分の愛人の1人に加えようと考えていたため、ネルヴァは即座に行動に移した。


 「おい、お前!!」

 「はいっ!!」

 「飲み物にちゃんと薬を入れたのか!?」

 「も、もちろんでございます!!『白南風』特製の、業魔種でさえも一瞬にして痺れてしまう麻痺薬を溶かしていました!!」

 「じゃあ、なぜあの女には何も症状が出なかったのだ!!!!!!」

 「わ、分かりません!!」


 ネルヴァは部下の一人の胸倉を掴み、そのまま床に強く放り投げた。そして、イライラがピークに達し、親指の爪を執拗に噛み始めた。


 「クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソ・・・・・・」


 ・・・ソフィアは、「ファルベ」の中でも特に総裁に好かれている。今回のことが、もし総裁の耳に入れば、除籍は免れない!!


 ネルヴァは目を血走らせながら、今日の一件をどう処理するか、頭をフル回転させた。


 「・・・そういえば、あの女は、例の『ユリウス』って男と繋がっているようだったな。」


 ネルヴァはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、部下たちをすぐに召集した。


 「お前ら、いいか。さっきのあの女と繋がっている『ユリウス』とかいう奴を見つけ出せ。そして、見つけ次第、どこにいるか俺に報告しろ。すぐに殺しに行く。」

 「えっ、で、ですが、ユリウスは・・・」

 「黙れ。」

 「ガハッ・・・。」


 ネルヴァは、スキルで部下の一人の頭蓋骨を握り潰した。


 「ソフィアにこの件が伝わる前に、何としてでも『ユリウス』を殺害する。いいな!」

 「「「「「「「「「「ハッ!!!!!!!!」」」」」」」」」」


 ・・・「ユリウス」という男さえ潰せば、あの女は俺のものになる!!閻魔種を倒しただの、あのクソババアの後継者だの、どうにも胡散臭いしな。どうせ、英雄級ウィザードの力でも借りたんだろ。あの女が「魔術」を使えたことには驚いたが、あれも何かの特殊なアイテムに違いない。結局は、詐欺師コンビというわけだ。「白南風」の最高幹部に喧嘩を売ったこと、後悔させてやるからな!!

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