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スキルが1つで、何が悪い?  作者: あっつん
第1章 第3部
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第67話 入国審査と分散

 首都キングヴァネスのギルドヘッドが準備した馬車ということもあり、とても快適な乗り心地であった。もちろん、国王ドロテオが用意した護送用馬車よりかは狭いが、それでも馬車内は充分広いように感じた。馬車の中では、ディランやフィオナ、レティシアと他愛ない話をした。特に、フィオナとレティシアはこれまで、ギルドヘッドと長い時間喋る機会がなかったので、色々と気になることを質問していた。


 休憩と取りながら進むこと約6時間、午後2時ぐらいに、俺たちはレオンパルド剣王国とプロメシア連邦国の国境に到着した。プロメシア連邦国の西側かつ、セルスヴォルタ大陸最西端の国とあって、予想以上に遠かった。国境に設けられた入国審査所は非常に厳重体制で、チェックを受けるレーンがいくつもあったが、どの場所にも刀剣を装備した、何十人もの警察的な人が鋭く目を光らせていた。


 「さすが、入国審査所ですね・・・。」

 「ほんと、国内の検問所とは大違いね・・・。」


 もちろん俺は初見だが、レティシアとフィオナも初めて見るのだろう。その厳重な入国審査に若干圧倒されている。


 「次の馬車、こちらへ。」

 「はいよ。」


 俺たち3人が入国審査所の雰囲気に気を取られている間、ディランは何ら動揺することなく、手続きを済ませていた。俺が注意をディランの方に向けると、ギルドヘッドしか持たない特別な身分証明カードを入国審査員に見せるところだった。


 「これはディラン様。遠路はるばるお越しいただき、ありがとうございます。今回はどのようなご予定で?」

 「キョウスケ・タチバナとの会合だ。これがその証拠の手紙だ。」

 「拝見させていただきます。・・・・・・はい、間違いなくキョウスケ様のサインです。」


 ・・・キョウスケ・タチバナ!?めちゃくちゃ日本人っぽい名前だな。都市名といい、ここは日本に酷似しているのかもな。


 「最後に、そちらの3人は、ディラン様とどのようなご関係でしょうか?」

 「俺の友人で、実力のある冒険者だ。観光目的で、会合とは直接関係ないが、俺の護衛役も兼ねている。」


 ・・・おい、護衛とか聞いてないぞ。というか、ギルドヘッドに護衛役なんて要らないだろ。


 「なるほど、ディラン様がそうおっしゃるのであれば、問題ありません。では、剣王国への入国を認めます。どうぞ、お通りください。」


 ・・・さすが、首都のギルドヘッド。言葉に対する信頼性が半端ない。


 こうして、俺たちは難なくレオンパルド剣王国への入国を果たした。入国直後、俺たち3人とディランはすぐに分かれた。


 「ユリウス、絶対に騒動を起こすなよ。国際問題に発展するからな。」

 「起こしませんよ!」


 何という偏見。この俺が問題など、起こすはずがない。

 

 「あと、今日俺が泊まる宿に3人も追加で予約しておくから、安心しろ。宿代も出してやる。」

 「「「えっ!?」」」


 驚きのあまり、俺たち3人の声が重なった。ディランの粋な計らいで、俺たち3人もディランが予約してある高級宿に泊まれることになった。しかも、宿代はディラン持ち。


 「ユリウスには、難易度が高めのAランククエストをこなしてもらっていたし、フィオナとレティシアも毎日色んなクエストを頑張っていたからな。ギルドヘッドとしてのお礼だ。」

 「「「あ、ありがとうございます!!」」」


 ・・・ディランさん、あんた仏だよ。


 俺たちは、ディランの恩情に深々と頭を下げた。そして、ディランは宿名とその場所を簡潔に伝えると、そのまま首都西京県の冒険者ギルドに直行した。


 「さてと・・・じゃあ早速『玄武』を助けに行こうか。」

 「ちょっと待って、ユリウス。」

 「どうした?」

 「実は、西京県に『白南風』の拠点の一つがあって・・・。聖獣のことも気になるんだけど・・・、『黒南風』の情報収集のために、私はそっちに行きたいの。本当にごめん。」


 フィオナはとても申し訳なさそうにしているが、俺からすれば全然問題ない。むしろ、俺としても「黒南風」の情報が知りたいので、そっちの方がありがたい。キングヴァネスの宿屋に泊まっている時に、探知魔法で「漆黒の仮面」を検索したのだが、一切ヒットしなかった。つまり、キングヴァネスに「黒南風」は潜伏していないということだ。ただ、油断はできないので、常に警戒はしていたが・・・。


 「全然気にしなくていいぞ。むしろ、俺としても『黒南風』の情報が欲しいから、そっちの方がありがたい。」

 「ありがとう、ユリウス。また、ギルドヘッドが予約してくれてある宿屋で合流しましょ。」

 「おう。」

 「フィオナ、気をつけてくださいね。」

 「・・・・・・レティシア、抜け駆けは許さないからね。」

 「わ、分かっていますよ!」


 フィオナとレティシアが小声で何やら話しているが、よく分からないので、無視しておこう。「抜け駆け」という言葉が聞こえたので、おそらく、「白南風」のところに行っている間に、レティシアが先に観光するのをフィオナが気にしているのだろう。レティシアがそんなことをするはずないと思うが・・・。


 「おい、もういいか。」

 「あっ、ごめんごめん。じゃあ、またあとで。」

 「おう、気をつけてな。」

 「また、宿屋で合流しましょう。」


 こうして、俺とレティシアは聖獣「玄武」の救出へ、フィオナは「白南風」との情報交換へ行くことになった。

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