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スキルが1つで、何が悪い?  作者: あっつん
第1章 第3部
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第66話 レオンパルド剣王国へ

 「・・・というわけで、俺が信頼している2人にも、ナツメの加護がついたらしい。」

 「状態変化と状態異常を完全に無効化するなんて・・・。」

 「ユリウスさんの言う通り、ゴッドスキルと同等の能力ですね・・・。」


 メンテナンスが終わったブレスレットを装着しながら、フィオナとレティシアは顔を引き攣らせていた。


 「これで安心して、魔獣の毒とか麻痺を食らえるな!」

 「いや、誰が好き好んで、毒を吐く魔獣とか魔物に突っ込んでいくのよ・・・。」

 「無効はとても嬉しいですが、それでも食らいたくはないですよ・・・。」


 フィオナたちは、俺を奇異の目で見てくる。そんなにおかしいことだろうか。状態異常にならないという安心感があれば、たとえ猛毒だろうが、嬉々として突撃できるのに・・・。


 「まぁ、それはそれとして、俺はこれからSランクのクエストをこなしながら、残りの聖獣たちの救出をしようと思う。」

 「確かに、早く助けてあげないとね。」

 「おう、とりあえず、ここから一番遠いところにいる聖獣から助けに行くつもりだ。」

 「居場所は分かっているんですか?」

 「ナツメの探知によると、レオンパルド剣王国のどこかにいるようなんだよ。だから、また明日ディランに数日だけレオンパルド剣王国に行っていいか、聞こうと思ってる。」

 「「レオンパルド剣王国!?」」


 フィオナとレティシアの声が見事にハモり、再びグッと俺の方に顔を近づけてきた。


 「ユリウス、私も連れて行って!」

 「フィオナ、ズルいですよ!ユリウスさん、私もご一緒したいです!」


 ・・・ちょ、だから、近いって!


 「な、何でそこまでして行きたいんだ?」

 「そりゃ、レオンパルド剣王国と言えば・・・」

 「「食べ物!!」」


 また、2人の声がハモった。何だか最近、息ぴったりだな。少し羨ましい・・・。


 「そんなに美味しいのか?」

 「セルスヴォルタ大陸随一と言われていますよ!プロメシア連邦国では手に入らない、様々な食材を使った料理、一度食べてみたかったんです!」

 「剣王国は、剣士と呼ばれる一流の刀剣使いが多いことで有名なんだけど、それよりも最近は料理が美味しいって評判なの!」


 フィオナとレティシアは、恍惚とした表情を浮かべ、まだ見ぬ剣王国の料理に思いを馳せていた。


 「そうか。そこまで言うなら、俺も食べてみたいな。」

 「というわけで、ユリウス、私たちも連れて!」

 「お願いします、ユリウスさん!」


 ・・・いや、美少女2人にそんな顔をされちゃあ、世の男は全員ノックアウトしますよ。


 「しょうがないな・・・。」

 「「やった~!!」」


 俺の言葉を聞くや否や、フィオナとレティシアは喜びを爆発させて、熱い抱擁を交わした。俺一人で行く予定だったが、急に賑やかになったもんだ。


 『ちょろい男やな。』


 呆れた声のナツメの念話をガン無視し、俺も剣王国で評判の料理に思いを馳せることにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 翌日、早速俺はディランにレオンパルド剣王国に行きたい意思を伝えることにした。ちなみに、昨晩、フィオナとレティシアに剣王国への行き方を尋ねてみたが、馬車で何時間もかかると言っていた。正直、そんなにかかるなら、浮遊魔法で一気に飛んでいきたいのだが・・・。


 ・・・さすがにそんなことしたら、不法入国で即刻逮捕だろうな。


 「剣王国に行きたいだと?」

 「はい、ちょっと野暮用がありまして・・・。帰ってきたら、その分のSランクのクエストはきちんとこなしますので、何とかお許しをいただきたいんですが・・・。」


 眼前の机上には、ディランが用意していたSランクの依頼書がある。ただ、聖獣のことを考えると、一刻も早く剣王国に出発しなければならない。ここは、激怒されようが、ボコボコにされようが、俺の意見を押し通す。


 「野暮用か・・・。」

 「あははは・・・。」

 「・・・・・・まぁ、いいだろう。」

 「そこをなんとか・・・って、うぇっ、い、良いんですか!?」


 ディランの予想外の発言に、俺は驚きのあまり立ち上がってしまった。


 「そんなに驚くことか?」

 「そりゃあ、まぁ・・・。」

 「Aランクのクエストを毎日こなしてくれてたし、昨日は天魔種を討伐したんだ。数日ぐらい良いだろう。」


 ・・・おぉ!何て良心的な!


 ディランの計らいが非常にありがたく思えたが・・・冷静に考えたら、当たり前のことだよな。社畜モードが長かった分、その辺の感覚がおかしくなっていたのかもしれいない。


 ・・・これがいわゆる「アメ」と「ムチ」ってやつか!恐ろしいぜ!


 「それに、ちょうど良かったな。」

 「?」

 「実は今日、剣王国の首都の西京県に行く予定でな。そこのギルドヘッドと大事な会合があるんだよ。」

 「えっ、本当ですか!?」


 何という偶然!


 ・・・というか、「西京県」ってめちゃくちゃ日本っぽい地名だな。もしかして、剣王国自体も日本に酷似しているのかもな・・・。


 「ユリウスもついてくるか?」

 「も、もちろんです!ぜひ、お供させてください!・・・あの・・・。」

 「どうした?」

 「フィオナとレティシアも剣王国に同行したいと言ってるのですが・・・。」

 「いいぞ、ユリウスを入れても、ギリギリ馬車に乗れる人数だからな。」

 「ありがとうございます!!」


 ディランのご厚意により、俺たちは今日、レオンパルド剣王国に行けることとなった。そして、俺はすぐに宿屋に戻り、大急ぎでフィオナとレティシアの部屋に入った。2人は、今日すぐに出発する可能性も少なからずあったため、今日一日はクエストに行かず、宿でゆっくりしている。


 「どうしたんですか、そんなに慌てて?」

 「何か問題でも起きたの?」


 レティシアとフィオナは、心配そうに俺を見る。


 「Hey girls!今から剣王国に行くぜ!30秒で支度しな!」

 「「えっ!?」」


 まぁ、俺も支度しないといけないんですけどね・・・。


 こうして、俺たちはディランとともに、レオンパルド剣王国の首都西京県へと向かった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 プロメシア連邦国某所にて・・・


 「色々とすまなかったな、レティシア・・・。どうか、アイツらから、うまく逃げ延びてくれ・・・・・・。約束は、果たしたぞ・・・・・・クララ・・・・・・。」


 屈強な老人は重傷を負いながらも、うまく追手から逃げられた。しかし、魔力も体力も底をつき、その場にバタッと倒れてしまった。老人は自分の最期を悟り、そのまま静かに目を閉じた・・・。が、その直前、誰かがそこにいたような気がした・・・。


 「何じゃ、こいつは?・・・ふぅ、やれやれ、面倒じゃが、助けてやるかのぅ。」


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