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スキルが1つで、何が悪い?  作者: あっつん
第1章 第3部
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第61話 弱体化(?)

 『どぅりゃ~!!!』

 「えっ~!!!!!!!!!!」


 俺が本気を出そうとしたその瞬間、突然「デセスペラシオン」の脇腹の傷口が大きく破裂し、大量の鉄黒の血液が飛び散った。そして、その破裂した箇所から全身が血に染まった、小さい「生き物」が俺の眼前に勢いよく飛び出してきたのだ。


 『いや~、もう少しで完全に消滅するところやったわ~!』


 「ブルブル」と体を振り、全身に付着した血を落としている眼前の「生き物」は、超小型犬のサイズで、鹿によく似た形態をしている。しかし、顔貌はドラゴンに酷似している一方、牛のような尻尾と馬蹄をもつ。頭には、立派な一本の角が生えており、身体は頑丈そうな黄金に輝く鱗で覆われている。そして、体毛は鬱金色で彩られており、非常に美しい見た目だ。


 つまり、一言で表現するならば、生前の世界における伝説上の動物「麒麟」である。


 『勇者様、久しぶ・・・お前、誰や?』

 「はぁ?それは、こっちの台詞だけど?」


 「麒麟」はめちゃくちゃ笑顔で、俺の方を見たが、急に真顔になり、挙句ギロっと睨みつけてきた。まず、喋れること自体に驚いたが、それよりもムカつく気持ちが勝ってしまった。


 『なんやねん、懐かしい魔力やと思ったのに・・・。あれ、でも、おかしいな。ワイたちは、勇者様以外の魔力を取り込むことは、できんはずなんやけど・・・。お前、マジで誰?』

 「いやいや、まずは自分から名乗るのが礼儀だろ。」

 『何を言ってるんや!ワイは、勇者様によって生み出された「聖獣」の1体なんやぞ?何でワイが、お前みたいな貧相な男よりも先に名乗らなあかんねん!』


 ・・・うん、コイツを今からボコボコにしよう。今日の晩御飯にしてもいいぐらいだ。


 「よし、一発殴らせろ。」

 『上等や!』

 「『痛っ!!!!!!!』」

 俺の右ストレートと、「麒麟」から繰り出された強烈な前蹴りがぶつかった際、今まで経験したことのないような、よく分からない痛みを覚えた。怪我をしたわけではないが、身体の奥底にある「魂」のような何かにダメージを受けたような感じだ。


 『ちょ、ちょっと待てくれ・・・!!こ、この痛みは、魂の繋がりに対するものや・・・!!何で、ワイとお前に・・・。もしかして、お前、勇者様の生まれ変わりか?』

 「魂の繋がり?はっ、お前と繋がった覚えはないし、繋がりたくもないけどな!!それに、勇者の生まれ変わりでも、何でもないわ!」


 「麒麟」の言っていることが事実なのであれば、コイツは勇者が創り出した「聖獣」ということになるのだろう。「聖獣」については、全然知らないため、またフィオナとかに教えてもらわないといけない。ただ、どうも、コイツの態度は癪に障る。「麒麟」だが、「天狗」になっているようで、その鼻をへし折ってやりたい。


 『ワイも死んでも繋がりたくないわ!!でも、今の痛みは間違いなく、魂の繋がりなんや!!お前・・・勇者様と何か関係が・・・』

 「ちょっと待て、俺もお前に聞きたいことはあるが、今はこの魔獣を先に倒した方がいいだろ。」


 「麒麟」が傷口から飛び出したことで、「デセスペラシオン」にも大きなダメージがあり、しばらくダウンしていた。しかし、俺たちが口論(?)している間に、少し回復したのだろう、ゆっくりと立ち上がり、俺たちの方に近づいているのが見えた。


 『はぁ?コイツは天魔種やで?弱っているとはいえ、お前みたいな貧相な冒険者が勝てるわけないやん。ワイの目の前で、人が殺される姿はあまり見たくないから、あっちでも向いておくわ。ほな、あの世で元気にするんやで。』

 

 「麒麟」は、俺が即死するだろうと思い、すぐに後ろを向いた。


 「そうか、それは残念。じゃあ、俺が殺されたら、死体はちゃんと埋葬してくれよ。」

 『誰がするかいな。勝手に野垂れ死んで、腐っていったらええわ。』


 俺はつい先程の気持ちを思い出し、本気で「デセスペラシオン」を瞬殺しようと考えた。どうやら、俺の魔力の吸収は止まっているみたいだが、いつまた奪われるか分からない。それが再開する前に、トドメをさす。


 『・・・ん?あの魔獣の傷口は、誰がつくったんや?ワイを取り込んで、聖獣クラスの防御力を持った皮膚に傷をつけられる存在なんて・・・・・・。』

 「えっ・・・。」

 『おい、お前、もしかして・・・、えっ・・・??』


 「麒麟」が何やらブツブツ言っていたが、興味がなかったので全然聞いていなかった。だが、それよりも、俺は眼前で息絶えた天魔種「デセスペラシオン」を見て、驚き呆れている。


 「弱体化しすぎじゃね・・・。」


 俺の本気の「魔装」を纏った両方の拳を、猛烈な速度で何十発もぶち込んだ。先程の頑丈さであれば、これぐらいしてやっと倒せると思ったのだが、俺の予想は大きく外れた。1発目から身体の深部までめり込み、何十発と殴った後には、「デセスペラシオン」は肉片となって、地面に散らばっていた・・・。


 『お前・・・何者やねん・・・。』


 眼前の惨状を見た「麒麟」は、めちゃくちゃ引いている。


 ・・・うん、まぁ、俺も自分でやっておいて、引いているから。あれ?こんなに弱かったっけ?

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