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スキルが1つで、何が悪い?  作者: あっつん
第1章 第3部
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第60話 天魔種との対峙

 大砂漠デゼルトドゥーナは、ほとんど草木もない砂漠地帯で、非常に暑いところらしい。ディランから特別に借りた、自動で体温調節をしてくれる装備 ―大きな数珠でできたネックレスのようなもの― をつけているので、何も感じないが、気候も含めた状態変化・異常を無効にしてくれる魔法があれば良いのにと思ってしまう。究極魔法「リヒトセラフィア」で、毒・麻痺・睡眠・混乱などの状態異常は回復できるが、暑さと寒さには全く効果がないのだ。


 「とりあえず、この借りている装備を買うしかないか。めちゃくちゃ高いと思うけど・・・。」


 しかし、この装備は見た目よりも結構重たい。肩や首がすぐに凝りそうなので、是非とも小さくて軽いものに改良してほしい。


 「さてと、地図だとこの辺にあるはずなんだが・・・。」


 俺は地図に描かれた「ダンジョン」の位置に到着し、その近くに降り立った。しかし、360度見渡しても、「ダンジョン」と思しき建物やその入口が見当たらない。


 「『魔眼』で見てみるか。・・・・・・なるほど、つい最近まで発見されなかったわけだ。」


 「魔眼」で再び周囲を見渡すと、明らかに1点だけ魔力が溢れ出ている部分があった。「魔眼」を解除してその部分を見ると、砂嵐や砂埃に隠れて、入口が全く見えない。砂漠の地下に「ダンジョン」が、丸ごと埋まっているような感じだ。


 「とりあえず、油断せずに、攻略しに行くか。」


 正直、「ダンジョン」ごと破壊した方が早い気はするのだが、もうこれ以上、大罪を犯すことはできない。慎重に進んでいこう。俺は常に警戒しつつ、「ダンジョン」を入口まで歩き、地下へと続く階段をゆっくりと降りていった。徐々に光が届かなくなるため、光属性の初級魔法「シャイニングライト」を常時発動させることにした。


 想像よりも地下深くまで階段が続き、5分ぐらいかけて、ようやく開けた空間に出た。天井が非常に高く、まるで地下ドームのような感じだ。「シャイニングライト」を、天井全てを覆うように展開すると、ドームの真ん中で、こちらを鋭い眼光で睨みつける大きな怪物が見えた。


 「おいおい・・・。天魔種って、こんな化け物なのかよ・・・。」


 トラのような顔面に、ライオンと思しき胴体と鬣、ドラゴンを彷彿させるイカツイ翼、サソリに近い尻尾。生前の世界で言うところの「マンティコア」にそっくりな魔獣である。体長は3m程と、予想よりも大きくはないが、溢れ出る魔力量は閻魔種の比ではない。恐らく、最低でも30万は超えているだろう。

 

 「コイツは、『デセスペラシオン』か。めちゃくちゃ厄介な相手だな・・・。」


 俺は、ギルドで読んだ『魔獣図鑑』の天魔種のページを想起した。目の前の魔獣の特徴に合致しているのは、「デセスペラシオン」しかない。この天魔種は、人魔戦争時代以降、5体しか観測されておらず、直近の討伐記録では約50年前となっていた。もちろん、50年前の討伐者はナターシャらしいが。


 「デセスペラシオン」は、全魔法耐性が天魔種の中でトップクラスとされており、ほとんどの魔法が、例え究極魔法であれ、ほぼ効果がないと言われている。なお、天魔種は閻魔種以下の魔獣・魔物と違い、繁殖能力が高いわけではないので、個体数がそこまで増えているわけではない。ただ、1個体の強さが尋常ではないため、できる限り絶滅させなければならないと言われている。ここでコイツを討伐しなければ、確実に被害が増えるだろう。


 「Aランク冒険者たちは・・・・・・。これは、ディランに報告したら、めちゃくちゃ落ち込むだろうな・・・。」


 「デセスペラシオン」の足元をよく見ると、様々な装備品を身につけた、何十体もの骸骨が乱雑に転がっていた。間違いなく、ここに調査しに来た人々の亡骸だろう。後でしっかりと供養しておくか。

 

 『魔獣図鑑』の説明によると、「デセスペラシオン」に噛まれる、もしくは尻尾で刺されると、骨以外の部分が一瞬で溶解し、即死するらしい。回復魔法をかける暇もなく、全身が溶けてしまうため、絶対に避けなければならない攻撃だ。


 「さてと・・・。いきなりアルカナスキルを使ってもいいんだけど・・・。魔法が効かない相手だからこそ、『魔術』が効果的なんだよな。ここは、『魔術』の良い練習と思って、しばらくはスキルを使わないでおこう。」


 もちろん、ヤバイと思ったらすぐに【神奪】を使用するつもりだ。しかし、この先、様々な強敵と戦うことを想定すると、「魔術」の腕をあげておくのに越したことはない。


 「よし!かかってこいや~!!」


 俺は勢いよく、「デセスペラシオン」の眼前に飛び出し、「魔装」を纏った右拳で思いっきり、胴体部分を殴った。しかし、「ドゴッ」と鈍い大きな音がしただけで、殴打箇所には傷一つついていない。


 「ガァルル!!」

 

 「デセスペラシオン」は、俺の攻撃が気に障ったのか、非常に鋭い牙を剥きだしにし、俺を噛み殺そうとしてきた。俺はそれを間一髪で避け、大きく距離を取った。


 「いやいやいや、硬すぎるだろ!!俺の『魔装』を受けて無傷とか、あり得ないって!!」


 天魔種が強大な魔獣で、そう簡単に倒せないことは分かっている。しかし、本気ではないにしろ、俺の魔力で練り上げた「魔装」を防ぐほどの皮膚なんて、チートすぎる。「天鋼」の比にならないぐらい、世界最強の硬度だ。


 しかし、『魔獣図鑑』にそのような記載は一切なかった。ここまでの硬い表皮を持つのであれば、絶対に記述しているはずだ。ということは、原因不明の何かが「デセスペラシオン」の防御力を底上げしていると推測できる。


 「まぁ、強くないと『魔術』の練習にならないからな。むしろ、ありがたい。」


 眼前の「デセスペラシオン」の圧倒的な硬さの原因を考えたところで、正直よく分からない。であれば、原因を究明するよりも、全力でコイツを倒した方が早い。俺は、全身をめぐる魔力に深く集中し、「魔術」のギアを上げた。


 「これならどうだ!!!」


 俺は、先程よりも丁寧に練り上げた魔力で「魔装」を展開し、そのまま強烈な右拳を、全力で胴体部分に叩き込んだ。


 「ゴァッー!!」


 すると、俺の右拳がグッと脇腹にめりこみ、勢いよく「デセスペラシオン」を壁までぶっ飛ばすことができた。先程よりも確実に破壊力が上がっており、殴った脇腹のところから鉄黒の血が溢れ出ている。今回は、大きなダメージを与えられたようだ。


 「よし、これでボコボコに・・・って、何ごと!?」


 俺が怒濤の連撃でノックアウトしてやろうと思った瞬間、俺の魔力が「デセスペラシオン」にどんどん吸い取られていく感覚に陥った。正確には、脇腹にできた大きな傷口から「デセスペラシオン」の体内に魔力が吸収されていと言うべきか。


 「ちょっ、これはマジでヤバイ!!アルカナスキル【神奪】!」


 俺の魔力が絶えず、相手に奪われているため、俺は大ピンチと判断した。このまま吸われ続ければ、魔力がゼロになり、間違いなく俺は殺されるだろう。そのため、俺はやむを得ず、切り札のアルカナスキル【神奪】を使用することにした。


 「えっ!?魔力が奪えない!!??ちょ、いや、どう、え、な、何で!?」


 【神奪】を詠唱したが、「デセスペラシオン」から魔力を一切奪うことができない。奪うことができないというよりも、アルカナスキル自体が発動していない感じだ。このような感覚は、この世界に来てから初めてであり、俺は切り札が使用できないことに、大きく動揺した。


 「いや、一旦落ち着け・・・。よし、ここは魔力が全部奪われる前に、コイツを殺すしかない。」


 俺は深呼吸し、一度、冷静に現在の状況を分析することにした。そして、魔力が吸収されている原因と、アルカナスキル【神奪】が使えない原因の双方が分からない以上、原因を探ることよりも、「デセスペラシオン」を葬り去ることが第一優先であると結論づけた。そして、魔獣相手には初めての本気を出し、「デセスペラシオン」の息の根をできる限り、最速で止めることに決めた。


 しかし、俺の眼前で、思いもよらない出来事が起きたのだった・・・。

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