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スキルが1つで、何が悪い?  作者: あっつん
第1章 第3部
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第59話 新ダンジョン

 冒険者登録をしてから1週間ほどが経ち、俺は様々なAランクのクエストをこなしていった。ギルドヘッド直々のクエストということもあり、クリア報酬が想像以上に良いので、非常に助かっている。フィオナとレティシアに借りていたお金も、無事に返済することができた。あと、ギルド内には、魔獣や魔物に関する様々な書物が置いてあるので、毎日少しずつ読み、もしもに備えての知識を蓄えていた。毎回、フィオナの呆れ顔を見るのも嫌だし・・・。


 フィオナとレティシアも、「魔術」を習得したことで、特製ブレスレットの凄まじい魔力量を上手く扱えるようになり、Eランクのクエストを次々に達成している。しかも、あと少しで、レティシアがDランクに上がるそうだ。2人とも、懐がかなり潤ってきており、新しい装備を買い揃える予定らしい。


 もちろん、プロメシア連邦国に白金貨100枚も借金している俺に、そんな余裕などあるはずがない。まぁ、そもそも、俺は装備を一切身につけてない状態でここまで来ているので、今更と言ったところだ。

 

 いつも通り、ギルドの2階の部屋に入ると、深刻な表情でディランが座っていた。正直、嫌な予感しかない。


 「あの、何かありましたか?」

 「う~ん、まぁ厄介なことになってな・・・。」

 「珍しいですね、ディランさんがそこまで重々しい表情をするなんて・・・。」


 普段のディランは、どこか気怠そうなおっさんという感じだが、今日は「ザ・ギルドヘッド」という雰囲気が醸し出され、なおかつ真剣な面持ちで座っている。余程のことがあったのだろう。


 「実は、1か月ほど前に、プロメシア連邦国の北にある『大砂漠デゼルトドゥーナ』で、新しい『ダンジョン』が発見されてな。プロメシア連邦国の各ギルドが協力して、調査依頼をAランク冒険者たちに出していたんだが・・・。」

 「何かあったんですか?」

 「『ダンジョン』に行った冒険者たちが全員帰ってきてないんだ・・・。」

 「えっ!?」


 「ダンジョン」は、Aランク冒険者がパーティーを組んで調査することが通例となっている。一部のパーティーが強力な閻魔種にやられてしまい、帰ってこないのなら分かるが、調査に入ったAランク冒険者のパーティー全てが帰還していないのは奇妙だ。考えられるとすれば・・・。


 「閻魔種以上の魔獣がいるということですか?」

 「あぁ、恐らく天魔種だろう・・・。」


 俺の予想通りだ。「最凶」「最悪」と謳われる閻魔種を凌駕する天魔種は、神出鬼没で「天災(カタストロフィ)」の異名をもつ。魔族が使役していた魔獣の中で最恐の存在であり、Sランク冒険者以上、もしくは英雄級ウィザードが複数人集まって、協力することでようやく討伐できると言われている。


 「ユリウスを信じて伝えるが、今から話す内容は、他言無用で頼むぞ。」

 「もちろんです。誰にも言いません。約束します。」

 「『ダンジョン』の調査には、プロメシア連邦国の『ウィザード』も2名同行したようだが、行方不明のままだそうだ。国家の最高戦力を2名も失ったのは、非常に大きく、国王陛下も頭を悩ませていると聞いた。」

 「なるほど・・・。『ウィザード』でさえも相手にならないとなれば、天魔種の可能性が非常に高いですね。」


 ナターシャやエゼル、ディランとの出会いで随分と感覚が麻痺していたが、そもそも魔力量が5万を超えると、国家の最高戦力である「ウィザード」に、その中でも圧倒的な魔力量や実力を有する者は、人類の最高戦力である「英雄級ウィザード」(別名:アリスト・ウィザード)に認定されるのだ。ウィザードの喪失は、国力の大幅な低下を意味する。最悪、他国から侵略されることもあり得るのだ。だからこそ、ウィザードを失った事実は国家の機密事項になる。それを知っているディランは、このプロメシア連邦国にとって、必要不可欠な人物ということだろう。首都のギルドヘッドは伊達じゃないな。


 「えっ、ちょっと待ってください。どうして、そんな重要な内容を俺に話したんですか?」

 「国王陛下がユリウスに、話してくれと言っていたからな。」


 ・・・え、マジでどういうこと?


 「そして、宰相マリアーノからも伝言を頼まれた。」


 ・・・あっ、なるほど。そういうことですか。嫌な予感が的中しましたわ。


 「『行方不明となったAランク冒険者やウィザードの捜索及び『ダンジョン』に住み着く天魔種と思しき魔獣を討伐してくれれば、白金貨100枚の借金を半分の白金貨50枚に減額します。』だそうだ。」


 ・・・ですよね~!分かってましたよ~!


 俺は心の中で、めちゃくちゃ叫んだ。国王も宰相も、俺がクエストを断れないように仕向けてきやがったな。


 「ユリウス、お前、国に借金してるのか・・・。」

 「はい・・・。色々ありまして・・・。」


 ディランは若干引いていたが、こればっかりは仕方ない。


 「まぁ、借金はさておき、『ダンジョン』の調査を依頼したいのだが、いいか?」

 「国王と宰相からの脅しみたいなもんですからね・・・。もちろん、受けますよ。」

 「そうか、なら頼んだぞ。ただ・・・。」

 「どうかしましたか?」

 「俺は昔、一度だけSランク冒険者の連中と天魔種の討伐に行ったことがあるんだが・・・、全然、歯が立たなかってな。重傷を負って、もうここで死ぬのかと覚悟を決めたときに、ナターシャ様に助けられたんだよ。結局、その天魔種は、ナターシャ様が涼しげな表情でボコボコにして倒したんだがな・・・。」


 俺もエゼルとの戦いで、ナターシャ様に救われたので、何となく想像がつく。あの人は、どんな強敵でも、平然とした顔で倒すことができてしまうのだろう。正直、アルカナスキルがなければ、俺なんかでは絶対に勝てないと思う。


 「まぁ、つまりだ。天魔種は、閻魔種よりも遥かに強く、知能もかなり高い。絶対に油断するなよ。そして、必ず生きて帰って来いよ。」


 ディランは、真剣な眼差しで俺を見て、右手を差し出した。ここまで情に厚い人とは思わなかったが、とても嬉しく、そしてありがたい気分だ。


 「もちろんです。気を緩めず、俺の全力で天魔種を討伐してきます。」


 俺も右手を出し、熱い握手を交わした。本来であれば、Sランク冒険者や「アリスト・ウィザード」が同行するはずだが、国家としても、ギルドとしてもこれ以上、戦力を失くしたくないとの判断で、俺1人で「ダンジョン」に向かうこととなった。ディランはそれについて何度も謝り、国王や宰相も謝罪文が書かれた極秘の手紙を、ディラン経由で送ってくれた。


 まぁ、ディランによると、最終的にはギルドマスターのナターシャが「小僧なら、1人で天魔種を倒せるから全然大丈夫!」と言い、俺の派遣が決定したらしい。信頼されているのか、都合の良いように使われているのか、よく分からないが、まぁやるしかない。


 こうして俺は、ディランから貰った地図を見ながら、浮遊魔法で大砂漠デゼルトドゥーナにある「ダンジョン」に向かった。

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