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スキルが1つで、何が悪い?  作者: あっつん
第1章 第3部
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第54話 社畜モードですね

 数十分にわたる説教が終わり、俺たちは宿探しを始めた。とりあえず、2週間ぐらい泊まることのできる宿を見つけたい。


 首都のギルド周辺ということもあり、宿泊施設は多数あるが、やはりピンキリだ。激安のめちゃくちゃ汚い小屋みたいな宿もあれば、超高級ホテルのようなものもある。


 俺たちは所持金を確認し合い、ギルドから徒歩5分ぐらいの比較的小綺麗な宿に泊まることにした。値段は、俺の1人部屋が1泊銀貨2枚、フィオナとレティシアの2人部屋が1泊銀貨4枚だった。2週間分を先払いしなければならないため、俺は腰が折れるぐらい、何度も頭を下げ、フィオナとレティシアからそれぞれ借金をした・・・。うん、マジで稼がないとな!


 日が暮れるまで時間があったので、俺たちは30分ほど休憩した後、再度ギルドに戻り、何かしらの依頼をこなすことにした。特に、俺はフィオナとレティシアに色々とお金を借りているので、自分の生活費も含めて、何としてでも金を手に入れなければならない。


 「そういえば、フィオナこの前、閻魔種の『レジーナ・レオン』を一撃で倒してただろ?」

 「パメラと戦ったときでしょ。それがどうかしたの?」

 「いや、閻魔種を倒せるってことは、フィオナもAランクに上がれるんじゃないのか?」


 閻魔種は、基本的に「ダンジョン」に棲息しており、Aランク以上の冒険者かウィザードしか「ダンジョン」に入ることはできない。俺の魔力が付与されたブレスレットを着けていたとはいえ、フィオナが閻魔種を倒したことに変わりはない。であれば、Aランクに昇級してもいい気がするが・・・。


 「師匠の許可を得て『レジーナ・レオン』の素材を一部剥ぎ取っているから、それをギルドに提示すれば、Aランクになれる可能性はあると思うけど・・・やめておく。」

 「なんで?」

 「別にランクを上げたいわけじゃないから。私の目標は、『黒南風』の壊滅。そのための実力をつけるために、冒険者登録したし。」

 「なるほどな。」


 フィオナは、冒険者ランクというステータスよりも、「黒南風」という大きな敵を倒すことに命を懸けているのだ。そう考えると、俺の質問は、無粋だったな。


 「私もフィオナと同意見ですが、ユリウスさんやフィオナと比べると、冒険者ランクが一番下なので、最低でもCランクまでは上げたいですね。」

 「そうだな、『黒南風』を確実に追い詰めるためにも、3人ともが冒険者ランクを上げて、強くなろう。それに、旅費も稼ぎたいし。」


 フィオナとレティシアは、しっかりと頷いてくれた。

 

 ・・・国への借金もあるし、SSランクまで成り上がらないといけなし、マジで頑張ろ。


 ギルドに戻ると、案の定というべきか、ギルドヘッドのディランに2階の部屋まで、強制連行された。


 「ったく、禁忌魔法なんか使いやがって・・・。あの後始末、大変だっただぞ・・・。」


 ディランが頭を掻きむしりながら、俺を恨めしそうに睨んでくる。


 「すみません、ちょっとカッとなって・・・。」

 「まさかと思うが、これまでにも禁忌魔法、使ってないよな?」

 「・・・・・・・・・・。」

 「おい、目をそらすな!」


 俺は視線を隣に座っているフィオナとレティシアに向け、助けを求めた。すると、フィオナが「任せて!」と目配せしたので、不安だったが、一応任せることにした。


 「この前も、拷問魔法を使ってました!」

 「おいっ!!!!!」


 フィオナがあっさりと俺を裏切った。レティシアはクスクスと楽しそうに笑ってやがる。あれ、良い仲間だったはずじゃ・・・。泣きそう・・・。


 「はぁ・・・。まぁ、そんな気はしてたけどな。禁忌魔法は、あまりにも膨大な魔力量を消費するため、英雄級のウィザードでも使えないと言われている。俺が知っている限り、禁忌魔法を扱える人物は、現ギルドマスターの3名と、ルキフェール神聖国の国家首席魔法師ロイ・アダムズ卿だけだったんだが・・・。」

 「何か、すみません・・・。」


 ディランは、脳のキャパシティーを超えたと言わんばかりに、大きく天を仰いだ。


 「仲間の2人も、ユリウスが禁忌魔法を使ったことに、驚かなかったのか?」

 「まぁ、それよりも驚くことがたくさんあったので、もう慣れましたね。ユリウスなら、むしろ禁忌魔法ぐらい当たり前に使えると思ってます。」

 「私もフィオナと同じですね。『ユリウスさんですから。』という言葉で、片付いてしまいます。」

 「おいおい、この2人も狂ってるのか・・・。」


 フィオナとレティシアが真顔で答えたので、ディランは余計に困惑しているようだった。


 「そもそも使うことができないのが一般常識だが、禁忌魔法の使用は重罪だ。魔警団に逮捕されないように、気をつけろよ。というか、もう使うなよ。」

 「はい・・・。」


 ディランは俺のために、忠告してくれたのだろう。次からは、ムカついても、なるべく麻痺魔法でぶちのめすことにしよう。ちなみに、魔警団は、警察隊と違い、重大な魔法犯罪のみを取り締まる特別な政府機関らしい。フィオナに後から教えてもらった。もちろん、「コイツマジかよ・・・。」って顔はされたが・・・。そして、この前のウェグザムの同時多発火災事件では、警察隊と協力して捜査にあたったらしいが、魔警団も一枚岩ではないらしく、あまり捜査が進まなかったようだ。


 「で、ここからが本題なんだが・・・。」

 「えっ、まだ本題じゃなかったんですね。」

 「ユリウスが精神を破壊した、あのAランク冒険者なんだが・・・。素行や人間性に大きな難はあったが、Aランク冒険者としての実力は、折り紙つきでな・・・。」

 「なるほど・・・。」

 「しかし、ユリウスのせいで、そいつは冒険者に戻ることは、ほぼ不可能になってしまったんだ・・・。」

 「な、なるほど・・・。」


 ・・・これは、嫌な予感がしますねぇ~。


 「というわけで、その責任を取ってもらいたんだ。もちろん、拒否権はないぞ。」

 「ですよね~。」


 つまり、あのクソ野郎の代わりに、Aランク冒険者としての様々な依頼を、強制的に引き受けないといけないってことだ。社畜モード、突入ですな。


 「本来であれば、1階の掲示板から自由に依頼を受けられるんだが、ユリウスはこの俺に勝った奴だからな。ギルドヘッドである俺が直接、ユリウスが受けるべき依頼を選んでやる。」

 「ま、マジですか・・・。」


 ・・・はい、絶対、難易度高いやつじゃん。社畜モード(鬼ハードモード)じゃん。


 「じゃあ、依頼を精選しておくから、また明日ここに来てくれ。」

 「は、はい・・・。」


 その後、俺はギルドヘッドの依頼しかできなくなったので、半泣きで宿に帰った。その間、フィオナとレティシアだけで、簡単な採取依頼をクリアしたそうだ・・・。

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