第50話 手紙の内容
ギルドの奥に進んでいくと、小さな闘技場のような場所に着いた。様々な武器や防具が置かれており、その近くには、大きな石板や木製の的などが点在している。冒険者の訓練場だろうか。
「ここで、お前には冒険者になるための試験を受けてもらう。」
「「「えっ!?」」」
フィオナからは、受付で冒険者登録をしたら、そのままEランク冒険者として活動できると聞いていたため、突然の「試験」という言葉に驚いた。フィオナとレティシアも、寝耳に水だったようだ。
「あの~、冒険者登録をするのに、試験のようなものはないと聞いてたんですけど・・・。」
「あぁ、本来であれば、試験などは存在しない。」
「えっ、どういうことですか?」
「ナターシャ様からの手紙に、ユリウスという奴に冒険者登録の試験を課せと書いてあったんだ。」
・・・うわ、マジかよ。絶対、めんどくさいやつじゃん、これ。
「・・・ということは、私は関係ないんですか?」
「はい、レティシアさんはこの特別試験が終わり次第、冒険者登録を行いますのでご安心ください。」
「良かった・・・!」
いや、何も良くないんですけど。俺だけ、強制的に試験とか、不公平じゃありませんか。
「師匠、相当ユリウスのこと、気に入っているみたいね・・・たぶん・・・。」
「え、気に入られているの?これ、パワハラとか、イジメとか、虐待とか、そういうものじゃないの?というか、たぶんって・・・。」
フィオナは、気の毒そうに俺を見てくる。まぁ、フィオナもナターシャから、色んな目に遭わされてきたんだろう。その遠くを見つめるような瞳が、すべてを物語っている。
「ちなみに、ナターシャ様からの課された試験内容は、何ですか?」
「ギルドヘッドである俺との一騎討ちだそうだ。」
・・・はい、おわた。むりむりむりむり。この人、オーラ半端ないもん。間違いなく超人ですよ。
「え、これで、自分が負けるとどうなりますか?」
「ナターシャ様の手紙には、ギルドマスターの権限をもって、お前の冒険者登録を1年間無効とすると書いてあった。」
・・・おっと、勝負に負けると、死刑確定案件ですね。もうやだ、俺の人生ハードモードすぎるぞ♡。
ナターシャ様から提示された執行猶予の条件は、1年以内にSSランク冒険者になることだ。つまり、1年間冒険者登録ができなくなれば、その条件を達成することは、不可能となってしまう。
「お前は、ナターシャ様の後継者候補に選ばれたようだな。」
「そ、そうみたいですね・・・。」
「最近は、骨のある冒険者が全然いなくて、退屈してたんだ。楽しませてくれよ、秘蔵っ子。」
「お、お手柔らかにお願いします・・・。」
ディランは、気怠そうな素振りを見せながらも、その表情はどこか恍惚としていて、めちゃくちゃ気味が悪い。「強者」との闘いを追い求める野獣のような、そういう雰囲気がある。
「ギルドヘッドは、相当な豪傑だと思うのですが、ユリウスさん、大丈夫ですかね・・・。」
「キングヴァネスで最も大きいギルドのトップに君臨している人だから、ギルドマスターに次ぐ実力の持ち主だと思う・・・。今回ばかりは、さすがのユリウスでも厳しいかも・・・。」
「ディラン様は、英雄級のウィザードで、元Sランク冒険者です。そして、引退後からずっとギルドヘッドを務めております。そのディラン様が負けたことのある相手は、魔獣の天魔種を除けば、ギルドマスターであるナターシャ様だけだと聞いています・・・。」
・・・おっと、セリナさん、今そんな話をされると、余計にビビってしまうんですが。
まぁ、勝てるかどうかは五分五分といったところだろう。俺はただ、全力でぶつかっていくだけだ。
「勝敗は、どうやって決めますか?」
「『降参』する、もしくは戦闘不能になった方の負けというのが、シンプルで分かりやすいだろう。」
「そうですね、それでいきましょう。」
俺とディランは、軽く準備運動を済ませると、闘技場の真ん中まで移動し、対峙した。
「それでは、ただいまより、ユリウスさんの冒険者登録に係る特別試験を開始します。」
セリナの溌剌とした声が響き、俺の冒険者登録試験の火蓋が切られた。
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