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スキルが1つで、何が悪い?  作者: あっつん
第1章 第3部
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第49話 ギルド到着

 「そういえば、レティシアのブレスレットの件なんだけど・・・。」

 「はい!」

 「例の件で褒賞金全部失ったから、俺の金で買えそうにないです・・・。本当にすみません・・・。」

 「・・・・・・。」

 

 レティシアが軽蔑した目で俺を見てくる。美少女のその辛辣な視線は、辛すぎる・・・。


 「なので、大変申し訳ないのですが、ブレスレット代を立て替えてくれませんか・・・?」

 「・・・仕方ないですね。それで構いませんよ。まぁ、自分のブレスレットなので、最初は、私が払うつもりだったんですけど・・・。」

 「えっ、じゃあ・・・」

 「フィオナのブレスレットは、ユリウスさんがプレゼントしたそうですね?じゃあ、私にもプレゼントしてもらわないと、不公平ですよねぇ?」

 「は、はい。」


 レティシアの凄まじい圧に、俺はただ返事をすることしかできなかった・・・。


 ・・・レティシアさん、目が全然笑ってないですよ。


 「フィオナのブレスレットは今晩、俺が預かって、レティシアの分と一緒に魔力を付与するから。」

 「ありがとう、でも、付与しすぎて壊さないでね?絶対に、分かった?」

 「分かってるよ・・・。」


 相変わらず、フィオナは俺にブレスレットを預けるのが心配なようだ。ただ、今回はブレスレットが耐えうる付与の限界にまで挑戦しようと考えている。本当に壊さないよう、以前よりも慎重に付与をしなければいけないのは確かだ。


 ギルドまでの道中に、良さそうなアクセサリーショップがあったので、レティシアのブレスレットはその店で買うことにした。


 「ユリウスさんがフィオナにプレゼントした値段と同じか、それ以上でないと嫌です・・・!」

 「あ、はい・・・。」


 レティシアの凄い剣幕に圧倒された俺は、ただ頷くことしかできなかった。レティシア自身で選ぶと思っていたが、俺に選んでほしいとのことだったので、めちゃくちゃ悩んだ。そして、15分ぐらい苦悩した結果、美しいレティシアの碧眼と似たような、瑠璃色のブレスレットを購入することにした。価格は金貨6枚と、フィオナのよりも少し高かったが、まぁ仕方ない。何とか冒険者として稼いで、レティシアに返さないと。


 「これで、本当に良かったのかか?」

 「はい、もちろんです!ずっと大事にします!」

 「・・・・・・。」


 レティシアの可憐な笑顔の近くで、フィオナが俺を殺意の眼差しで睨んでいた・・・。


 ・・・えっ、フィオナさん、人殺しの目をしてるんですけど・・・。俺、何かしましたか・・・?


 童貞の俺には、女心は本当によく分からない。

 俺はフィオナの凄まじい眼光に怯えながら、目的のギルドまで歩いた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 キングヴァネスで最も大きいとされるギルドは、大理石のような光沢ある白い石で築かれており、威風堂々とした佇まいだ。宮殿『エルダグラード』よりも二回りぐらい小さいが、それでも周囲の建造物と比較すると、明らかに大きい。中に入ると、酒場や受付、螺旋階段など、アニメや漫画などでよく見る「ギルド内部」そのままだ。冒険者の恰好をした老若男女の喧騒や怒号が、四方八方から聞こえてくる。


 ギルドの正式名称は「冒険者ギルド」であり、各ギルドにはギルドヘッドが常駐している。ここは、プロメシア連邦国の首都キングヴァネスで、最も大きいギルドだ。ギルドヘッドの実力は、折り紙付きだろう。


 「めちゃくちゃ大きいな・・・。それに、冒険者の数も多すぎる・・・。」

 「本当にすごいとしか言いようがないですね・・・。」

 「そりゃ、キングヴァネスで、一番大きいギルドだから。受付はこっちだから、ついてきて。」


 俺とレティシアが色々と圧倒される中、フィオナは澄ました顔でスタスタと歩いていった。さすが、Bランク冒険者、ギルドの独特な雰囲気には相当慣れているのだろう。


 受付エリアに行くと、窓口が10人ほど分かれており、俺たちは一番手前のところに向かった。


 「こんにちは、冒険者ギルドへようこそ!今日は、どのようなご用件でしょうか?」


 笑顔が素敵な受付のお姉さんは、溌剌とした声で挨拶をした。非常に若々しく、年齢は俺に近いと思われる。ちなみに、胸のネームプレートには、「セリナ」と書かれていた。


 「この2人の冒険者登録をお願いします。」

 「分かりました、新規の冒険者登録ですね。少々お待ちください。」


 フィオナの言葉を聞くや否や、セリナはテキパキと書類を取り出して、俺たちの冒険者登録の準備を進めていた。しかし、ここで俺はめちゃくちゃ重大なことを思い出した。


 「あの~、すみません・・・。」

 「あっ、もう少しで準備が終わりますので・・・。」

 「いや、実はこれを預かっていて、受付の人に渡すように言われたんですが・・・。」


 俺は、ナターシャの仰々しいサインと封蝋印が押された「手紙」をセリナに手渡した。


 「えっ・・・・・・あの・・・・・・これって・・・・・・。」


 「手紙」を見るや否や、セリナが口をパクパクさせて、途切れ途切れに言葉を発し始めた。


 「あ、ナターシャ様から預かったもので・・・・・・」

 「す、すみません!!!ギルドヘッドに相談させてください!!!」


 セリナは血相を変えて、螺旋状の階段を猛スピードで上がっていった・・・。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 フィオナとレティシアと雑談しながら、そのままギルド内で時間を潰していると、急に周囲がザワザワし始めた。ざわついている方に視線を向けると、先程の受付嬢セリナと、無精髭を生やしたガタイの良いおっさんが螺旋階段から下りるところだった。


 「お、おい、マジかよ、ギルドヘッドが1階に降りてくるなんて、滅多にないことだぞ!」

 「私、生まれて初めて、ギルドヘッドの姿を見たわ・・・。」

 「俺もだよ・・・。」

 「何か大事件があったのか・・・?」

 「そりゃ、そうだろう・・・。」


 その他の冒険者たちの発言から、あのおっさんがギルドヘッドで間違いないのだろう。俺の勘というか、センサーも、明らかに「歴戦の猛者」「相当な強者」だと訴えている。ただ、見た目は、全然強そうに見えない。ボサボサの黒髪に無精髭、あくびをしながら、階段をだるそうに降りている。


 「そりゃ、師匠からの『手紙』となれば、ギルドヘッドが出てきて当然でしょ。」

 「ナターシャ様の影響力は凄まじいですからね・・・。」


 フィオナたちの会話から、改めてナターシャの偉大さと恐ろしさを痛感した。


 ・・・俺、マジでヤバイ人に気に入られてしまったんだな。嬉しいような、悲しいような。


 螺旋階段を降りたセリナが、俺たちを見つけると、隣のギルドヘッドに「あの方々です」と伝えるのが見えた。そして、セリナとギルドヘッドが俺たちの方に近づいてきた。案の定、注目の的ですわ・・・。


 「へぇ~、なるほどなぁ・・・。」

 「えっ、何ですか。おっさんに、あまりジロジロ見られたくないんですけど・・・。」


 おっさんのギルドヘッドが俺を品定めするように見てきたので、少し嫌悪感を抱いた。おっさんに、凝視されても、全然嬉しくないんですけど・・・。


 「おい、あいつ、ギルドヘッドのこと、『おっさん』って呼んだぞ!」

 「人生終わったな・・・。」

 「ご愁傷様です。」


 周囲の冒険者が俺に憐れみの視線を送ってくる。まぁ、確かに「おっさん」と言ってしまったのは悪いが、でも初対面でいきなり、全身をジロジロ見てくる人は嫌でしょ。

 

 「俺のことを『おっさん』と呼ぶとは、さすがナターシャ様の秘蔵っ子だな。すまんな、どうも強い奴を見ると、そいつの肉体構造が気になる性分で。」


 ギルドヘッドはボサボサの頭をかきながら、少しだけ楽しそうに笑った。


 「俺は、この冒険者ギルドのギルドヘッド、ディラン・ウォーカーだ。」

 「自分は、ユリウスと言います。」

 「この2人は、ユリウスの知り合いか?」

 「はい、一緒に旅をしている仲間です。」

 「フィオナと申します。」

 「レティシアと申します。以後お見知りおきを。」


 ディランと俺たちは簡単な自己紹介を済ませた。ギルドヘッドという肩書だが、風貌や言動があまりそれっぽくないので、フィオナとレティシアも、あまり緊張していないようだ。


 「とりあえず、俺についてきてくれ。」


 俺たちは、気怠そうなディランとガチガチに緊張しているセリナの後をついていった。

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