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梅雨が溶ける
今でも薄っすら憶えてる。
いつも遊んだあの街並みを
あの時好きだったヒーローものも
大声で憚ることなく笑った日々を
1番頭に残ってるのは
長い長い坂道の上の駄菓子屋
何気なく聞いた店頭にぶら下がる風鈴が
夏の真中を知らせてた。
坂道の下にいると
彼女が手招きをしてる。
今じゃあやっとの思いで登った坂を
彼女に会いたくて朝も厭わず駆け寄っていた。
ねぇねと呼んだ夏の日差しで反射して
眩いばかりの純白のワンピース
昔の麦わら帽子を被った彼女。
あんなにあの人を追っていたのに
名前すらも朧げだ。
今年も夏が始まる。
あの人がいないなら
待ち望んだ夏なんて意味はないのに