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それからアレンの移動魔法の話になり、エストレア国の王族は誰でも使える事、国と国の移動は魔法陣を使うこと、けれど回数や人数に制約がある事などを教えてもらった。
そもそもエストレア国はエルフの集落が集まって出来た国なんだそうだ。自然が豊富で、グランディア王国と同じ大陸にあるが端っこで海に面しており、四季がはっきりしている。
今の王族はそれぞれの集落の長だったハイエルフの血を濃く受け継いでいるため、移動魔法が使える。けれど寿命は普通なんだそうな。
「名残惜しいけど、そろそろカリナを返さなくちゃ。」
と寂しそうなアレンにキュンとしながら魔法陣でグランディア王国に戻る。今度は床に魔法陣が光ったのを見た。読み取れなかったけど。
クライスラー男爵の離宮に一瞬で戻り、エストレア国からのお土産をいっぱい持ったシャナとクリードさんに触れながらアレンが本邸まで転移魔法してくれる。
え?それならはじめに歩かなくて良かったんじゃない??
お父様とのお約束通り夕方には侯爵邸に沢山のお土産と共に送り届けてもらい、アレンはまた明日と戻っていった。
お母様とお兄様はお土産の量にビックリしつつもエストレア産の美味しいお野菜や果物を厨房に運ばせ、今日の晩餐を楽しみに浮かれている。
慌てて帰って来たお父様はお土産のお返しに頭を抱えているが、執事から陛下からのお手紙を渡されて慌てている。ワインの箱にくっついていたそうな。
家族ととても美味しい晩餐をいただきながら、私が体験した今日のことを話す。
エストレア国の両陛下に拝謁したのは両親もビックリだったが、アレンが王子であることは伝えてあったので、納得していた。また、王子であるため、転移魔法が使える事も知っていた。ある程度外交に当たりそうな高位貴族には周知されてるようだった。
お父様はさすがにクライスラー男爵家を知っていて、逸話を教えてくださった。
「昔、お祖父様に教わったのだが、今の王国の半分くらいの広さのエルフの別荘があった。その横にグランディア王国を建国したそうだ。お隣さん同士仲良くしていたけれど、王国の領土、人口が増えるにつれ、越境する人、勝手に領土にしようとする人が出てきた。
困ったエルフの血族は、王家と相談のうえ、土地を譲渡する代わりに庇護を求めた。その際に男爵位を賜ったのが、クライスラー家の始まりと言われている。」
お母様が、
「その広さで男爵位ですか?」とワインをうっとりと傾けながらお父様に尋ねる。
お兄様も
「せめて伯爵位でも良かったのでは?」とワインのお代わりをいただきながら。
お父様は2本目を開ける指示を出しながら、
「私も同じことをお祖父様に聞いたよ。なんでも、王国としては侯爵位を用意していたそうだが、当時のクライスラー家が爵位そのものを固辞されたそうだ。落とし所で男爵位になったそうだよ。ちなみに、今でもずっと陞爵を固辞されてるよ。」
お兄様がまたワインのお代わりをいただきながら、
「エストレア国の血縁だったからですね。それにしても、美味しいワインだ。カリナのおかげだな、ありがとう、カリナーデル。」
お母様はデザートの果物をいただきながら、
「本当にエストレア産のフルーツは美味しいわぁ。カリナ、ありがとう。」と目尻が下がっている。
お父様は
「確かに全てが美味しいが…ワインも極上だが…カリナと引き換えには…」と何やらブツブツ呟いていたが、3本目を執事に止められると、お兄様を誘ってサロンでお茶をするようだ。
私とお母様は残りのフルーツの確認をし、傷みやすいものは執事に皆へ分けるように指示を出した。皆が喜んでくれると良いけれど。




